毒殺未遂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 10:13 UTC 版)
「アレクセイ・ナワリヌイ」の記事における「毒殺未遂」の解説
2020年8月20日、ナワリヌイは旅客機内で毒物によるものと見られる体調不良に陥り、同年9月7日に回復するまで意識不明の重体となっていた。 2020年8月20日、ナワリヌイが西シベリアのトムスクから旅客機でモスクワに向かう途中で体調不良に陥ったため、旅客機はオムスクに緊急着陸し、ナワリヌイはオムスク市第1臨床救急病院(ロシア語: Городская клиническая больница скорой медицинской помощи №1)に収容された。旅客機内で彼の健康状態は突然急激に悪化しており、ビデオの映像には、客室乗務員が彼に走り寄る様子や、同時に彼が痛みに苦しんで叫び声を上げる様子が捉えられている。 後にナワリヌイの報道担当者は、ナワリヌイが意識不明であり、病院で人工呼吸器を装着していると語ったほか、ナワリヌイは朝から紅茶しか飲んでおらず、彼の飲み物に不審物が入れられた疑いがあると主張した。病院側は容態は安定しているが深刻な状態であると語った。病院は最初はナワリヌイが毒を盛られたであろうと認めたが、その後病院の副医長は毒物は「考えられる多くのシナリオの1つである」と発言を後退させた。 ナワリヌイはドイツのベルリンにあるシャリテー – ベルリン医科大学に飛行機で輸送された。オムスクで治療にあたった医師は当初、病状が悪すぎて輸送はできないと主張したが、後にナワリヌイを解放した。 8月24日、ドイツで治療している医師らは、ナワリヌイがコリンエステラーゼ阻害剤による毒を盛られたという証拠を発見したと発表し、9日後の9月2日にはドイツ政府も同様の見解として、血液サンプルの検査からコリンエステラーゼ阻害剤の一種であるノビチョクの使用を裏付ける疑いのない証拠が得られたと発表した。また、ドイツ政府はフランスとスウェーデンに検査結果の検証を依頼していたが、両国の研究所も検証の結果として神経剤の使用を確認している。 ロシア政府は8月25日、ナワリヌイへの毒物混入にプーチンが関わっていると非難する意見を否定した。 ナワリヌイのSNSでの発表によると、9月15日に自力での呼吸が可能なまで症状が回復し、同月19日には脚の震えが残るものの自力で歩行して階段を降りられるまでになっている。 事件当初、ナワリヌイ側の広報担当者の話では空港内で口にした紅茶に毒が盛られていた可能性が高いとされていたが、9月17日にナワリヌイの関係者は、ナワリヌイが滞在していたトムスクのホテルの部屋から回収された残留物をドイツの研究所に持ち込み解析を依頼した結果、飲料水のペットボトルからノビチョクが検出されたと発表した。 その後、容態が十分回復し、9月22日には急性期治療を終えてシャリテー病院を退院したが、広報担当者は治療が未完了であるとして、ナワリヌイがドイツ滞在を継続すると述べた。また、病院側は完全な回復が見込めるとしたものの、長期的な影響についての判断は時期尚早であるとした。 命をとりとめたナワリヌイに協力した調査報道機関ベリングキャットは12月14日、ロシアの独立系メディアであるザ・インサイダー、CNNなどとともにこの事件を取材し、容疑者としてロシア連邦保安庁(FSB)職員8人を公表した。これに対してプーチン大統領は同月17日の記者会見で、ナワリヌイが米国の情報機関から支援を受けていたとして、FSBによる監視は正当化しつつ、「毒を盛るなら、殺害していただろう」と述べてロシア政府が暗殺を試みたとの疑惑を否定した。この顛末はドキュメンタリー映画化された(後述)。
※この「毒殺未遂」の解説は、「アレクセイ・ナワリヌイ」の解説の一部です。
「毒殺未遂」を含む「アレクセイ・ナワリヌイ」の記事については、「アレクセイ・ナワリヌイ」の概要を参照ください。
- 毒殺未遂のページへのリンク