日本ハムにおける2020年以降の「ノンテンダー」通告をめぐる問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 03:17 UTC 版)
「フリーエージェント (日本プロ野球)」の記事における「日本ハムにおける2020年以降の「ノンテンダー」通告をめぐる問題」の解説
MLBでは、メジャー40人枠に登録されていた選手に対して、所属球団との契約を延長する意思の有無を示す期限をシーズン終了後(例年はウインターミーティングが始まる12月初旬まで)に設定。通算の登録年数が6年に達した選手には、FA権を自動的に付与している。また、登録が3年未満の選手に対しては球団側が年俸決定権を有する一方で、3年以上6年未満の選手と球団側には年俸調停制度(1973年から導入)へ申請する権利(年俸調停権)を認めている。 もっとも実際には、年俸調停権を取得済みで所属球団との契約延長の意思を示していた選手に対して、球団側が故障、不振、チーム総年俸の抑制などを理由に翌シーズンの契約を提示しなかった結果、保留権の喪失によって当該選手が自由契約選手として扱われる事例が2008年頃から続出。このような事例は、(球団側が)契約を提示しないことを意味する英語(Non-tender)にちなんで、前述したFAと区別する意味で「ノンテンダー(または『ノンテンダーFA』)」と呼ばれている。ただし、ボストン・レッドソックス時代の岡島秀樹のように契約条件の再交渉を経て再契約(残留)に至ることもあるため、MLB球団における「ノンテンダー」の通告は必ずしも戦力外通告に当たらない。 「フリーエージェント (プロスポーツ)#ノンテンダーFA(Non-tender FA)」および「戦力外通告#メジャーリーグ」も参照 NPBでも2020年以降、岡島の古巣である日本ハムの主力選手やベテラン選手が、同球団との再契約の余地を残しながらも「ノンテンダー」と称して自由契約選手として公示される事例が相次いでいる。同年に日本ハム球団から「ノンテンダー」を通告された村田透は、保留選手名簿からいったん外された後に再契約へ漕ぎ着けたが、翌2021年の戦力外通告を機に退団。通告の時点で36歳とベテランの域に入っていたものの、他球団での現役続行を希望していることから、通告後に12球団合同トライアウトへ参加した。さらに2021年には、シーズン中に国内FA権を取得していた秋吉亮・大田泰示と、海外FA権を取得した後にパ・リーグ盗塁王のタイトルを獲得した西川遥輝が球団から一方的に「ノンテンダー」を通告。球団側が当初発表したところによれば、シーズン終了後にGMへ就任したばかりの稲葉篤紀が、「取得したばかりのFA権を尊重することによって、(再契約や海外のプロリーグへの移籍を含めて)翌年の所属先を選択できる余地を広げることが重要」と判断したうえで、「西川・大田・秋吉との間でプレーの環境について協議した末の宣告」とされていた。結局、大田はDeNA、西川は楽天へ2021年内に移籍。秋吉はNPB他球団への移籍に至らず、2022年1月に日本海オセアンリーグ(同年から活動を開始する独立リーグ)の福井ネクサスエレファンツへ入団した。 詳細は「村田透#日本ハム時代」および「西川遥輝#日本ハム時代」を参照 2021年まで日本ハム選手会の一員でもあった西川・大田・秋吉に対する球団からの「ノンテンダー」通告をめぐっては、ロッテの捕手時代に2008年北京夏季オリンピックの野球日本代表チームで(当時日本ハムの外野手だった)稲葉と共に戦っていた里崎智也が、「球団には最初から再契約の意思がなく、事実上の戦力外通告」という見解を示している。また、日本ハム選手会の上部団体である日本プロ野球選手会は、秋吉がNPB他球団への移籍に至らなかったことや、西川・大田が移籍に際して野球協約で定められた減額制限(2021年の年俸が1億円以上だった両選手の場合には最大で40%)を上回る減俸扱いでの契約を余儀なくされたことを問題視。「日本ハム球団から保有選手に対するノンテンダーの通告は、当該選手の価値を一方的に下げるだけに過ぎない。球団側には、このような態様で保有選手を取り扱うことや、『ノンテンダー』などと称して選手、ファン、社会一般に誤解を与えることを控えて欲しい」という趣旨の抗議文を、2022年3月7日付で球団側に提出した。 日本プロ野球選手会では、日本ハム球団が「ノンテンダー」通告を「西川・大田・秋吉との間でプレーの環境について協議した結果」と発表していたにもかかわらず、実際にはそのような協議もノンテンダー通告の予告もないまま選手契約を更新しない旨を一方的に伝えられていたことを、上記3選手へのヒアリングを通じて把握。そのうえで、「事実と異なる経緯を発表したことも、(西川・大田・秋吉)選手本人や日本ハム球団に(2022年)現在所属する選手との信頼関係を損ねるだけでなく、ファンや社会一般を裏切る行為である」として、抗議文の提出に踏み切った。この抗議文では、西川・大田・秋吉以外に日本ハム球団が保有していた選手の契約更改交渉についても、「選手の意向や他球団での選手の活躍状況を踏まえた契約交渉の余地を認めていない」「現在は(保有選手における契約更改交渉での)代理人の利用が少しずつ認められるようになってはいるが、過去には代理人を利用していた選手をトレードで他球団へ放出した」といった問題点を指摘している。 一方の日本ハム球団では、上記の抗議文を2022年3月7日に受領したうえで、球団社長兼オーナー代行の川村浩二がコメントを発表。抗議文が送られたことについて「過去に選手会との対話(のチャンネル)を閉ざしたことがないにもかかわらず、選手会から何の事前の話し合いの申し入れもなく、突如として当球団宛てに送られてきたことは誠に残念」、抗議文で指摘された問題点について「(日本プロ野球選手会側に)誤解や誤認が複数あるように思われる」との見解を示した。その一方で、「球団とはそもそも立場の相違がある」という選手会との間で3月第3週に話し合いの場を設けたうえで、話し合いの結果を同月18日付で公表。西川・大田・秋吉に対する「ノンテンダー」の通告において「選手の価値を一方的に下げる」といった意図が一切なかったことや、野球協約に基づくルールを遵守していることを日本プロ野球選手会に説明したうえで、今後は「ノンテンダー」という表現を使用しない旨を伝えたことを明かしている。なお、一連の騒動の後、この『ノンテンダー』を主導したと思わしき吉村浩統括本部長が運営会社役員の職を解かれた。
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