政治的思惟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 05:58 UTC 版)
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の記事における「政治的思惟」の解説
2013年1月に石垣市において日本野鳥の会の講演で、「尖閣諸島に国の天然記念物アホウドリやオオアジサシ、センカクモグラなどの貴重な動物が生息することを指摘し、世界自然遺産登録の評価基準となる生態系や生物多様性に当てはまる例で、奄美・琉球諸島を世界自然遺産にする動きの中に、尖閣諸島も含めて進めてほしい」と発表した。これはあくまで学術的見解によるものであったが、これに政治的な思惑が絡み石垣市が尖閣諸島を対象地域に含めるよう求めるようになった。こうした動きを牽制すべく、2016年の第40回世界遺産委員会において奄美・琉球を含む2018年の登録審査対象の確認作業が行われた際、中国が「尖閣諸島に領土・領海問題(釣魚臺列嶼主權問題)がある」として審査の反対を主張。日本は環境省が「奄美・琉球と尖閣諸島は成り立ちが全く異なり、同じ価値で登録することは考えにくい」としており、佐藤地ユネスコ代表部大使は「バッファーゾーン(緩衝地帯)も含め、範囲を外に拡張することはない」と反論する一幕があった。登録決定後に中国外務省は「先の約束を反故にしないように」と尖閣への拡張登録を行わないよう釘を刺す見解を述べた。 前述の辺野古大浦湾におけるジュゴン生息地保護は普天間基地移設の反対運動に利用されたことは否めないが、IUCNはジュゴン保護を求める勧告を3回発しており、アメリカで起こした「ジュゴン訴訟」ではサンフランシスコ連邦地裁が「ジュゴンはアメリカ国家歴史保存法(英語版)で保護されるべきで、辺野古への基地移設は違反である」との判決を下した。しかし当時の石原伸晃環境大臣は「ユネスコのルールにのっとり、守るべきものがない場所を政治的な問題として後から加えることは環境省としては考えていない」と政治的判断を表明した。 2018年5月に奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島に登録延期勧告が発せられたことを伝える韓国の聯合ニュースは、「奄美大島は日本による植民地時代に朝鮮半島出身者が強制徴用され過酷な労働を強いられた場所で、戦場に特攻隊を送る基地や大規模な労働部隊があった。沖縄にも数千人の朝鮮半島出身者が労働者や軍人として強制連行され、相当数の女性が慰安婦として動員された」と、自然環境とは無関係の歴史的経緯を引き合いに出している。 2022年5月15日、沖縄返還50周年を迎え挙行された記念式典において、岸田文雄首相は式辞の中で「焼失した首里城再建ややんばるなど世界遺産を活かした沖縄振興に尽力する」とし、玉城デニー沖縄県知事も「世界遺産に登録された世界に誇る多様な自然環境を発信する」としたが、上記「緩衝地帯」にもあるように世界遺産と米軍基地が背中合わせにある状態について、首相は一切触れず、知事は沖縄の基地負担に言及するなど政治的見解の違いが顕わになった。
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