報道などをめぐる問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 05:33 UTC 版)
「秋田児童連続殺害事件」の記事における「報道などをめぐる問題」の解説
この事件では、被疑者が身を寄せていた実家にメディアが殺到し(メディアスクラム)、一部メディアは容疑者が外出する際に追走したりし、周辺住民の間からもメディアの取材に対する苦情やトラブルが相次いで起こった。こうした事態を重く見たBPO(放送倫理・番組向上機構)は、5月25日、放送各社に「節度をもって取材にあたる」よう要望する事態にまで発展した。また、このメディアスクラムを受け、報道側は「玄関前の張り込みをやめる」「隣接地での待機人員を制限する」などの取り決めが同日に定められた。「人数制限は現実的でない」とし「節度ある取材」をお願いするに留まり、順守させることのできなかった日本雑誌協会所属メディアの多くも各々独自に張り込みを取りやめるなどした。 一方で、このメディアスクラムは、1994年(平成6年)に起こった松本サリン事件や1998年(平成10年)に和歌山毒物カレー事件でも問題になったが、今回の事件ではこれらの教訓がまったく生かされなかったとの指摘も出ている。 また、被疑者が逮捕される前から被疑者に関するプライバシーが週刊誌を中心にセンセーショナルに報道された。これについてある週刊誌の記者は、東京新聞の取材に対し「この事件に対する世間の関心は非常に高い。いろいろな噂がある中で何が真実かを確認するには、本人に取材せざるを得ない。やむを得ないのではないか」(2006年6月8日付東京新聞)と報道の意義を強調している。しかし、被疑者が特定・逮捕されていない段階でこうした報道がなされたことに対しては「逮捕されていない人が、逮捕されたかのような扱いで、推定無罪という考え方がどこかへ飛んでいってしまっている」(松本サリン事件で報道被害を受けた河野義行による談話、2006年6月8日付東京新聞)といった批判も出ている。結果的に翌年の香川・坂出3人殺害事件にて、この危惧は現実のものとなった。 一方、産経新聞が6月6日付の社説でこうした過熱取材を自己批判する社説を掲載したり、東京新聞が6月8日付の紙面でメディアスクラムを検証するなど、報道する側からもこうした過熱取材に対する疑問が提起された。 また、被疑者の高校生時代の卒業アルバムがメディアで取り上げられた。アルバム中には被疑者が高校時代にいじめに遭っていたとも取れる寄せ書きが記載されており、容疑者の母校や同級生に対して非難が殺到した。その卒業アルバムには、「いままでいじめられた分強くなったべ。俺達にかんしゃなさい」「会ったら殺す」「戦争に早く行け」「温泉に入ってふやけんなよ」「やっと離れられる。3年間はちょっと…」などと書かれていたほか、被疑者の将来として「自殺・詐欺・強盗・全国指名手配・変人大賞・女優・殺人・野生化」などともあった。なお、裁判では、被疑者が「学校内での盗みにより高校で停学処分」を受けていたことが明らかになっている。
※この「報道などをめぐる問題」の解説は、「秋田児童連続殺害事件」の解説の一部です。
「報道などをめぐる問題」を含む「秋田児童連続殺害事件」の記事については、「秋田児童連続殺害事件」の概要を参照ください。
- 報道などをめぐる問題のページへのリンク