仕事の概要
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「アドリアン・フルティガー」の記事における「仕事の概要」の解説
入社後、活字原字製作部に配属されると、まず古典的な活字をもとに機械式活字父型彫刻機のための新たなパターン原図を起こす仕事についた。その後、ペイニョ社長が資金を投入していたリヨンの関連会社・ルミタイプ社の写真植字機に向けて、既存の書体を翻刻する仕事も任された。 1952年頃、ドベルニ・エ・ペイニョ社において、金属活字と写真植字用活字の両方で使用できる古典的なローマン体を新たに開発する計画が起こる。この書体のデザインを任されたフルティガーは、15世紀にニコラ・ジェンソンがデザインした活字を基に、直線を用いず、ゆるやかな曲線によって構成された自然で有機的な書体を完成させた。この書体はMeridien(メリディエン)と名付けられ、まず同社から金属活字として1954年に発売され、続いて1955年に写真植字書体として発売された。フルティガーのデザインした書体で、最初に商業的に発表された書体は、1954年のPresident(プレジデント)である。これはセリフの小さい大文字だけの見出し書体だった。同年にインフォーマルなスクリプト書体、Ondine(ウンディーヌ)も発表された。1956年に、フルティガーは自身初のスラブセリフ書体となるEgyptienne F(エジプシャンF)を発表した。エジプシャンはClarendon(クラレンドン)をもとにしたスラブセリフ書体であり、初めて写真植字用に発注された新しい書体だった。 シャルル・ペイニョは、活字と写植の両方で使用できるような統一感のある大きなファミリーフォントを追い求めていた。バウアー社によるFutura(フーツラ)書体の成功を受け、ペイニョは新しい幾何学的なサンセリフの完成に力を入れた。フルティガーはFuturaの組織が気に入らず、新しいサンセリフはリアリスト(ネオ・グロテスク)に基づくべきだとペイニョを説得し、1896年の書体Akzidenz Grotesk(アクチデンツ・グロテスク)が基本モデルとして選ばれた。21のバリエーションに統一感を持たせるために、母型を作る前に、すべてのウェイトと横幅をローマン体とイタリック体で満足のいくまで手書きで直した。このUniversでフルティガーは2桁のナンバリングシステムを導入した。最初の数字(3から8)はウェイトを示しており、3が最も細く、8が最も太い。2番目の数字は横幅とローマン体か斜体かを示している。Universに対する世間の反応は素早く、そして前向きだった。フルティガーはUniversが彼がその後作った全ての書体の基礎になったと語っている。UniversはSerifa(セリファ、1967年)とGlypha(グリファ、1977年)の基になっている。 1970年代初頭、パリ郊外のロワシーにパリ=シャルル・ド・ゴール空港を建設するにあたり、主任建築家のポール・アンドリューから、ド・ゴール空港独自の新しい書体を含む空港内のサインシステムの設計を依頼された。概要には、遠方からおよび正面ではない角度からでも高い視認性を求めるとの内容があった。フルティガーはUniversが最適だと思ったが、その考え方は1960年代を引きずる時代遅れかも知れないと思い直した。最終的に書体は、エリック・ギルのGill Sansやエドワード・ジョンストンによるロンドン地下鉄の書体、Roger ExcoffonのAntique Oliveなどのヒューマニスト・サンセリフによる影響を受け、有機的に調節されたUniversの変化型となった。Roissy(ロワシー)と名付けられていたその書体は、1976年にマーゲンターラー・ライノタイプ社から一般向けにリリースされる際に、Frutigerと改名される。 フルティガーによる1984年の書体Versailles(ヴェルサイユ)は、彼が初期に手掛けたPresidentに似たキャピタルを持つオールドスタイルのセリフ体である。Versaillesではセリフは小さく象形文字的である。1988年、フルティガーはAvenir(アヴェニール)を完成させた。Avenirとはフランス語で未来を意味し、Futuraの印象を持ちつつ、ネオ・グロテスクに似た構造も併せ持っている。Avenirには一通りのウェイトが全てそろっている。1990年にフルティガーは、モーリス・フラー・ベントンのFranklin Gothic(フランクリン・ゴシック)とNews Gothic(ニュース・ゴシック)に影響を受けたVectora(ベクトラ)の開発を終える。完成した書体はエックスハイトが高く、小さなポイントでも読みやすいものとなった。 1990年代後半に、フルティガーはこれまでに開発したUnivers、Frutiger、Avenirといった書体を、現代の技術を使って洗練・発展させる作業に取り掛かった。Universは63バリエーションとして再発表された。FrutigerはFrutiger Nextとして、イタリック体と数ウェイトを付け加えて再発表された。ライノタイプ社の小林章との共同作業により、フルティガーはAvenirにlightとheavyのウェイトを付け加え、更にコンデンスドを加えてファミリーの幅を広げた。この書体はAvenir Nextとしてリリースされた。 フルティガーのキャリアは、金属活字、写植、そしてデジタル・タイプセッティングというタイプの発達の時代をまたいでいた。フルティガーは晩年、スイスのベルン近郊に住み、主として木版作りをしていた。
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