ハガチー事件および、樺美智子の死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 03:42 UTC 版)
「安保闘争」の記事における「ハガチー事件および、樺美智子の死」の解説
6月10日には東京国際空港(羽田空港)で、アイゼンハワー大統領訪日の日程を協議するため来日したジェイムズ・ハガティ大統領報道官(当時の報道表記は「ハガチー新聞係秘書」)が空港周辺に詰め掛けたデモ隊に迎えの車を包囲されて動けなくなり、アメリカ海兵隊のヘリコプターで救出されるという事件が発生(ハガチー事件)。 6月15日には、暴力団と右翼団体がデモ隊を襲撃して多くの負傷者を出し、機動隊が国会議事堂正門前で大規模に国会内に突入してきたデモ隊と衝突し、デモに参加していた東京大学学生の樺美智子が圧死した。在京局で唯一中継をしていたラジオ関東(現:アール・エフ・ラジオ日本)の島碩弥も警棒で殴られ負傷した。21時に開かれた国会敷地内での全学連抗議集会で訃報が報告されたことで、警察車両への放火等を行うなど一部の学生が暴徒化し、負傷学生約400人、逮捕者約200人、警察官負傷約300人に上った。国会前でのデモ活動に参加した人は主催者発表で計33万人、警視庁発表で約13万人という規模にまで膨れ上がった。 日付が変わって16日午前1時30分、岸内閣は緊急臨時閣議声明を発した。執筆者は当時読売新聞政治部記者だった渡辺恒雄。官房長官秘書・福本邦雄の依頼を受け、長官官舎でペンを執った。 このたびの全学連の暴挙は暴力革命によって民主的な議会政治を破壊し、現在の社会秩序を覆さんとする国際共産主義の企図に踊らされつつある計画的行動に他ならないのであって、もとより国民大多数の到底容認し得ざるところである。我々は自由と民主主義の基盤の上に初めて真の平和と繁栄が築かれることを確信しているがゆえに、これらを破壊せんとするいかなる暴力にも屈することなく完全にこれを排撃し、以て民生の安定を守り抜かんとするものである。計画的破壊活動に対して治安当局のとれる措置は当然のところである。国民諸君においても今回の不祥事件の背後に潜む本質を見極め一層の理解と協力あらんことを要望してやまない。 このように激しい抗議運動が続く中、岸首相は15日と18日に赤城宗徳防衛庁長官に対して陸上自衛隊の治安出動を要請した。東京近辺の各駐屯地では出動準備態勢が敷かれたが、石原幹市郎国家公安委員会委員長が反対し赤城防衛庁長官も出動要請を拒否したため、「自衛隊初の治安維持出動」は回避された。
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