スウェット・ロッジの儀式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 01:03 UTC 版)
すべての重要な決めごとの前に行われる「スウェット・ロッジ(発汗小屋)」は、全米のインディアン部族に見られ、マヤやアステカでも行われた重要な儀式である。かつて平原の部族はほとんど毎日この儀式を行っていた。部族によって様々に違いはあるが、スー族ではこの「治癒と浄め」の儀式は「イニカガーピ・オケヤ」と呼ばれ、以下のような作法で行われる。 この儀式は、縦12×横4本の木の枝で組んだ高さ1m半ほどの円形のドームにバッファローの毛皮(現代では毛布)を掛けた、小型のウィグワムで行われる。建てる場所は必ずそばに水があり、治癒の力を持つという白柳が生えている場所を選ぶ。 小屋の床にはセージが敷き詰められ、中央には炉が切られる。その際出た土は入り口近くに盛られ、「ウンチ(祖母)」と呼ばれる。そのそばに4本の棒を東西南北に重ね、聖なる石と、眼窩にセージの葉を挿して聖なるチャヌンパを立て懸けたバッファローの頭蓋骨を置き、「ペタ・オイハンケシュニ(消えない火)」の祭壇を作る。小屋の外にはまた、泉や川から汲んだバケツの水、熱く焼いた石が用意され、この石は手順に則って、鹿の角か専用のフォークに乗せて中へ渡される。 儀式は長老格の呪い師が進行し、人々は太陽の動きに倣い、右回りに小屋を回って中へ入る。中は真っ暗で、男女が一緒に入るものであるが、近年では男女別々に行われることが多い。呪い師は東側に座っていて、真っ赤に熱した石が炉に置かれると、呪い師によってスイートグラスの葉で水が振りかけられ、室内に蒸気が充満する。香り高いこの蒸気を全身に擦り込みながら、人々は大精霊、祖父母の霊に祈りを捧げ、部族の平和を願う。熱さに我慢できなくなったものは「ミタクエ・オヤシン」(私に繋がるすべてのものよ)と唱えると、外の空気を入れてもらえる。 熟練した呪い師はかなりの高温のイニカガーピを毎日のように行う。現代スー族の呪い師レオナルド・クロウドッグは一度黒人活動家とこの儀式を行ったが、この活動家はあまりの熱さに数分で外へ飛び出したそうである。従来は男女混合で全裸で行う儀式であるが、近年はタオルを体に巻く場合が多い。
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