トリポリ協定

石油/天然ガス用語辞典

トリポリ協定

読み方： とりぽりきょうてい
【英】: tripoli agreement

1970 年 9 月にリビアがその国内で操業する外国石油会社に対して原油の公示価格の引き上げその他の要求を認めさせたことは、その翌年にわたる一連の当時「石油戦争」と呼ばれた OPEC 攻勢のきっかけとなったが、これを受けて、ペルシア湾岸 OPEC 諸国がテヘラン協定（1971 年 2 月 14 日）によって公示価格の 35 セント / バーレル引き上げに成功するや、リビアはさらにこれに見合った引き上げを要求して国際石油会社グループと交渉を始めた。 この交渉は 1971 年 4 月 2 日にリビアのトリポリで妥結し、3 月 20 日に遡及｛そきゅう｝して発効したが、これを一般に調印地名をとってトリポリ協定と呼んでいる。 その内容の概略は次のとおりである。 (1) 公示価格の引き上げ： (i) 基本的引き上げ分（ API 比重 40 度の場合）：52 セント / バーレル（原油価格は 3.32 ドル／バーレルとなる） その内訳は、 テヘラン協定アップ分：35セント / バーレル 低硫黄メリット分：10 セント / バーレル 純追加分：7 セント / バーレル 基準公示価格は API 比重 40.0 度を 0.1 度超えるごとに 1 バーレルあたり 0.2 セント増加し、逆に 0.1 度下回るごとに 0.15 セント減少するものとする。 (ii) 一時的プレミアム分：25 セント / バーレル スエズ運河閉鎖に伴うもの：12 セント / バーレル 海上運賃レート高騰分：13 セント / バーレル (iii) 毎年のインフレ・エスカレーション分 1972 年は対前年比 2 セント / バーレル増、1973 年より 1975 年までの間は毎年 2.5 ％増およびこれに 5 セント / バーレル加えたもの (2) 所得税率： (i) 新所得税率は各社一様に 55 ％とする。 (ii) 1970 年 9 月の契約改訂により、各社それぞれ 54 ～ 58 ％の税率が適用されることとなった。これはいったん旧 50 ％にまで戻すことにし、これに 5 ％上乗せしたわけだが、その補償として各社は毎年平均 9 セント / バーレルを支払う。 (3) オキシデンタル社の税率は 60 ％とする。これは同社の利権契約にあった農業開発への投資義務相当の 5 ％があるためである。 (4) 常時掘削機 1 基ずつ稼働義務： 従来、政府が要求していた 5 セント / バーレルの国内投資義務については外国石油会社側が強硬に反対したものであったが、これは取り下げられ、代わりに 6 社（Exxon, Occidental, Oasis, Oil, Amoseas, BP/Bunker Hunt, Mobil, Gelsenberg）はそれぞれ常時掘削機を 1 基ずつ稼働させる。この協定は低硫黄メリットの導入、インフレ・エスカレーションの適用期の繰り上げなどの条項においてテヘラン協定の内容を上回るものであった。なお、トリポリ協定は 1975 年までのりビア原油の公示価格を固定させようというものであったが、その後 2 回にわたるドル切り下げおよびその後のリビア政府による大幅な一方的な値上げにより、この協定の存在は有名無実化したが、産油国政府が外国石油会社に対して一方的に原油価格を引き上げさせた意義は長く残るものとなった。