『反時代的考察』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 19:10 UTC 版)
「フリードリヒ・ニーチェ」の記事における「『反時代的考察』」の解説
これは、ヨーロッパ、特にドイツの文化の現状に関して、1873年から1876年にかけて執筆された4編(当初は13編のものとして構想された)からなる評論集である。 「ダーヴィト・シュトラウス、告白者と著述家」(1873年):これは、当時のドイツ思想を代表していたダーフィト・シュトラウスの『古き信仰と新しき信仰: 告白』(1871年)への論駁である。ニーチェは、科学的に、すなわち歴史の進歩に基づく決然とした普遍的技法によって、シュトラウスの言う「新しい信仰」なるものが文化の頽廃にしか寄与しない低俗な概念に過ぎないことを喝破したばかりか、シュトラウス本人をも俗物と呼んで攻撃した。 「生に対する歴史の利害」(1874年):ここでは、単なる歴史に関する知識の蓄積をもってことが足りるとする従来の考え方を退け、「生」を主要な概念として、新たな歴史の読み方を提示し、さらにはそれが社会の健全さを高めもするであろうことを説明する。 「教育者としてのショーペンハウアー」(1874年):アルトゥル・ショーペンハウアーの天才的な哲学がドイツ文化の復興をもたらすであろうことが述べられる。ニーチェは、ショーペンハウアーの個人主義や誠実さ、不動の意志だけでなく、ペシミズムによって、この有名な哲学者の陽気さに注目している。 「バイロイトにおけるリヒャルト・ワーグナー」(1876年):この論文では、リヒャルト・ワーグナーの心理学を探求している。当時のニーチェの心の中では、ワーグナーへの心酔と疑念が入り混じっていたため、対象となっている人物との親密さのわりには、追従めいたところがない。そのため、ニーチェはしばらく出版をためらっていたが、結局はワーグナーに対して批判的な文言の控えめな状態の原稿を出版した。にもかかわらず、この評論はやがて訪れる二人の決裂の兆しを見せている。
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