RSTS/E
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/11 03:58 UTC 版)
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開発者 |
ディジタル・イクイップメント・コーポレーション (現在は Mentec Inc. が所有) |
---|---|
プログラミング言語 |
MACRO-11アセンブリ言語 lBASIC-PLUS-2 DCL Forth |
開発状況 | 開発は終了しているが、入手は可能 |
ソースモデル | クローズドソース |
最新安定版 | RSTS V10.1 / 1992年9月 |
使用できる言語 | 英語 |
アップデート方式 | バイナリパッチ、あるいはバイナリそのもの |
使用できる プログラミング言語 |
ALGOL-60 APL BASIC-PLUS BASIC-PLUS-2 C COBOL Datatrieve DIBOL Forth FORTRAN MACRO-11 Pascal RPG II TECO |
パッケージ管理 | BACKUP |
プラットフォーム | PDP-11 |
カーネル種別 | タイムシェアリング オペレーティングシステム |
既定のUI | コマンドラインインタフェース: DCL(DIGITALコマンド言語) |
ライセンス | プロプライエタリ |
開発
1970年代
RSTSのカーネルはアセンブリ言語 MACRO-11 で書かれ、DOS-11というOS上で動作する CILUS (Core Image Library Update and Save) プログラムを使ってディスクにインストールされる。RSTSをブートすると、BASIC言語の拡張版である BASIC-PLUS の処理系が立ち上がる。リソースアカウンティング、ログイン、ログアウト、システム管理などのOS内のシステムソフトウェアは CUSPS (Commonly Used System Programs) と呼ばれ、全てBASIC-PLUSで書かれていた。1970年から1973年まで、RSTSは56キロバイトの磁気コアメモリのみで動作可能だった(メモリ空間は64キロバイトで、メモリマップドI/Oの空間も含む)。この構成で最大16の端末を接続でき、最大17個のジョブを同時実行できる。プログラムの最大サイズは16キロバイトである[3]。1973年末時点で、RSTSがライセンスされたシステムは150ほどあった[4]。
1973年、新機種 PDP-11/40 および /45 のためにメモリ管理がサポートされた RSTS/E がリリースされた(PDP-11/20 は RSTS-11 でのみサポート)。メモリ管理サポートによって扱えるメモリ容量が4倍になっただけでなく(18ビット・アドレッシングで、256キロバイトをサポート)、ユーザーモードのプロセスとカーネルの分離が可能となった。
1975年、22ビット・アドレッシングの PDP-11/70 のためにメモリ管理サポートが改良された。これにより、最大2メガバイトのメモリを扱え、最大63個のジョブを同時実行可能となった。RTS (Run Time System) と CCL (Concise Command Language) のコンセプトが導入されたが、それらは "SYSGEN" の際にコンパイルする必要があった。マルチ端末サービスも導入され、1つのジョブが複数の端末を制御できるようになった(トータルで128端末)。メッセージ送受信のプロセス間通信がさらに洗練され効率化されている。同年8月にはライセンスされたシステム数が1,200となった[4]。
1977年、RSTSのインストールにDOS-11を使わなくて済むようになった。RSTSカーネルはRT-11の RTS にてコンパイルでき、RT-11の SILUS (Creates Save-Image Libraries) を使って SIL (Saved Image Library) ファイルとしてフォーマットされ、ターゲットシステムがタイムシェアリングで動作中にシステムディスクあるいは他のディスクにコピーできる。BASIC-PLUSのRTS(さらにはRT-11、RSX-11、TECOやサードパーティのRTS)は、RSTSカーネルから独立したユーザーモードのプロセスとして動作する。システムアドミニストレータはブートの際にどのRTSをデフォルトのKBM (Keyboard Monitor) とするかを選択可能になった。このころには3,100システムがライセンスを受けている[4]。
1978年、22ビット・アドレッシングが可能な全機種をサポートする最後のメモリ管理の更新が行われた。PDP-11がハード的に搭載可能な最大メモリ容量(4メガバイト)をサポート可能となった。SUPERVISORYモードが追加され、DECのOSでは初めてそのモードをサポートした。DECnetもサポートされ、コロラドスプリングスにあるDECのRDC (Remote Diagnostics Center) から遠隔診断が行えるようになった(有償サービス)。1970年代末にはライセンスを受けたシステムは5,000を越えている[4]。
1980年代
1981年、Unibusマシン(PDP-11/44, /45, /55, /70)向けにユーザー空間の命令とデータの分離をサポートし、一種のメモリ保護を可能とした。これを使い、命令に64キロバイト、データに64キロバイト(さらにはバッファ用に64キロバイト)の別々の空間を使うプログラムが作成可能となった。DCL (Digital Command Language) RTS も含まれており、DECnet III の新バージョンもサポートされている。
1983年の RSTS/E V8.0-06 ではDECが販売した最小構成の18ビットPDP-11 (MicroPDP-11) をサポートしている。MicroPDP-11でのインストールを容易にするため、事前に生成済みのSILとCUSPSが含まれている。MicroPDP-11用の事前生成済みのバージョンを MicroRSTS として低価格で販売したが、カーネルの再作成が必要ならフルバージョンを購入しなければならなかった。ファイルシステムが更新されており、識別のため RSTS Directory Structure 1 (RDS1) と呼ばれた[5]。それに応じて従来のRSTSのファイルシステムは RDS0 と呼ばれるようになった[6]。新しいファイルシステムは1700以上のユーザーアカウントをサポートできるよう設計されている[7]。このころライセンスを受けたユーザーは1万以上で、ほぼ同数のユーザーがライセンスを受けずに(不正コピーして)使っていたと見られている[4]。
1985年から1989年にかけて、version 9 でRSTSは円熟期を迎えた。DCLが主要RTSとされ、新たなユーザーアカウント機能をサポートすべくファイルシステムも RDS1.2 に更新された。従来のパスワードは RADIX-50 フォーマットで6文字までという制限があったが、暗号化(ハッシュ)されるようになった。従来、プロジェクト(グループ)番号ゼロのシステムアカウント(識別番号 [0,1])があり、プロジェクト番号1の全アカウントに特権が付与されていた(UNIXのrootアカウントとは異なる)。version 9 以降はプロジェクト番号ゼロにアカウントを追加できるようになり、複数の特権を個別に任意のアカウントに付与できるようになった。LAT (Local Area Transport) プロトコルがサポートされ、DECnet IV の最新版も動作可能となった。それらのネットワーク強化により、任意のユーザーが端末から端末サーバ DECserver 経由でRSTSマシンに接続できるようになり、VMSの動作するVAXと同等のアクセスが可能になった。DCLのコマンド構造がDECファミリ内で共通していたため、ルック・アンド・フィールも似通っていた。
これはよくある擬似コマンドファイルプロセッサではなく、VMSの機能に基づいている。DCLとモニターに大幅な改造を施すことで、DCLコマンドファイルプロセッサをRSTSに統合し完全サポートしている。DCLはジョブの一部としてコマンドファイルを実行し、(ATPKと同様)擬似キーボードや実キーボードへの強制が不要である。[8]
1990年代
1994年、DECはPDP-11のソフトウェア事業を Mentec という企業に売却し[9]、DEC自体はVAXに集中するためRSTSのリリースをやめた。
Mentecは後にPDP-11用OSを非営利の趣味的利用に限って無料ライセンスで提供した[要出典]。また、IBM PC 向けにPDP-11エミュレータがリリースされ、インターネット上でRSTSのイメージコピーが容易に入手可能となったため、パーソナルコンピュータ上のエミュレータでRSTS/Eを実機よりも高速に動作させることが可能となった。
機能と特徴
最後のリリースとなった RSTS/E version 10.1 の機能と特徴はDECの Software Product Description によれば次の通りである[10]。
- 対話型タイムシェアリング
- システムリソースの動的割り当て
- DCL (Digital Command Language)
- DCL コマンドファイル処理
- コマンド行編集と入力済みコマンドの再呼び出し
- CCL システムマネージャにより定義されたコマンドインタフェース
- デバイスやアカウントのユーザー論理名とシステム論理名
- システムセキュリティ機能
- 必要に応じてアカウント毎に特権とリソース割り当てを設定
- バッチサービス - DCLコマンドファイルの集中化バックグラウンド実行を提供
- プリントサービス - 端末プリンター、ラインプリンター、端末サーバのプリンターなどで集中化バックグラウンド印刷を提供
- オペレータ/メッセージ・サービス - ユーザーやプログラムから要求やオペレータメッセージのディスパッチとロギング
- 各種ファイル処理 - ファイル共有、保護機構、仮想(メモリ)ディスクサポート
- DCLを使用した統合システム・アカウント管理
- 磁気テープ処理
- 対話型環境向けに設計された端末ハンドラ
- 共通コードの共有
- 頻繁にアクセスするディスク上のデータをソフトウェアでキャッシュ化
- タスク間通信
- ディスク全体やファイルを磁気テープにバックアップ/リストアするユーティリティ
- SCSIアダプターとSCSIデバイスの一部機種でのサポート
- 異なる大きさや種類のディスク間でのボリュームコピー
- 信頼性と保守性のための機能
- DCL、RT-11、RSX、BASIC-PLUSのRTSをサポート
- プログラム開発ツール群
- ^ 「リステス」または「リスタス」と発音
- ^ 現在はヒューレット・パッカードの一部
- ^ Dick, P: "The History of RSTS: An Addendum", page 25. "The VAX/RSTS Professional Magazine" February 1, 1984, Vol 6, No 1, ISSN 0746-1909
- ^ a b c d e Dick, P: "The History of RSTS", pages 24-26. "The RSTS Professional Magazine" June 1, 1983, Vol 5, No 3, ISSN 0745-2888
- ^ Mayfield, M: "RSTS/E Monitor Internals", page 1-9.
- ^ Mayfield, M: "RSTS/E Monitor Internals", page 1-4.
- ^ Marbach, C: "RSTS and the Micro-11", page 50. "The VAX/RSTS Professional Magazine" August 1, 1983, Vol 5, No 4, ISSN 0745-2888
- ^ Romanello, G: "A Preview of RSTS/E Version 9.0", page 28. "The VAX/RSTS Professional Magazine" December 1, 1984, Vol 6, No 6, ISSN 0746-1909
- ^ http://replay.waybackmachine.org/20060813131029/http://www.mentec-inc.com/
- ^ Digital Software Product Description, SPD 13.01.37 "RSTS/E, Version 10.1", March 1995 AE-DE58L-TC.
- ^ Greenspon, M: "The RSTS Crystal Ball - Part 3", page 12. "The RSTS Professional Magazine" October 1, 1982, Vol 4, No 5
- ^ a b Dick, P: "RSTS 80th Birthday Celebration", pages 20-25. "DECUSCOPE" Q1 July, 1989
- 1 RSTS/Eとは
- 2 RSTS/Eの概要
- 3 運用
- 4 実行時環境 (RTS)
- 5 エミュレーション
- 6 脚注
- RSTS/Eのページへのリンク