0の0乗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/27 01:29 UTC 版)
背景
実数 x の正整数 n 乗は、素朴には、n 個の x を掛け合わせたものである。厳密には、次のように再帰的に定められる。
x0 を定義する場合には、関係式 が n = 0 でも成立するように定義を拡張するのが自然である。
そこで、 に無理やり n = 0 を代入すれば、x0 + 1 = x0 × x すなわち x = x0 × x となり、x が 0 でなければ両辺を x で割って x0 = 1 を得る。すなわち、x ≠ 0 の場合は、x0 ≔ 1 と定めることで、関係式 が に対して成り立つように定義を拡張できる[注 2]。さらに負の整数 −n に対しても x−n ≔ 1/xn と定義すれば が満たされ、 x ≠ 0 の整数乗がうまく定義されて、指数法則 xn + m = xn xm や xnm = (xn)m が任意の整数 n, m に対して成立する。
次に、指数が実数の場合を考えよう。底が x ≠ 0 の場合は、上述のように整数乗が定まるのであった。詳細は省略するが、底を x > 0 の場合に制限すれば、指数法則が成り立ったまま指数を有理数、さらには実数へと拡張し、連続な二変数関数を得ることができる。また、x = 0 の場合に対する正の実数乗も、同様に連続性を理由として 0 と定義することができる。
すなわち実数の実数乗 xy は、底が x ≠ 0 で指数 y が整数であるか、底が x > 0 であるか、あるいは底が x = 0 で指数が y > 0 であればうまく定義でき、これら全ての点 (x, y) で二変数関数として連続となる。しかし、xy は底が x= 0 のとき、指数が負の実数であればうまく定義できず、どのように 00 を定義しても点 (0, 0) で二変数関数として連続にはならない。言い換えれば、00 を xy が連続となるように定めることはできないのである。
注釈
- ^ 0 と定義される場合もある。
- ^ x = 0 のときは 0 = 00 × 0 となってしまうため、00 は任意の値で等式が成り立ち、この方針で 00 を「自然」に定義することはできない。
- ^ この定義は半群における積の結合性より意味を持つ。
- ^ さらに a が逆元を持つならば、それを a−1 と表記し、負の整数 −n に対して a−n = (a−1)n と表記する。
- ^ 整数の全体や実数の全体など、あるいは一般に単位元を持つ結合環は、乗法について零元を持つモノイドをなす。
- ^ ここに、x → +0 は x が正の方向から 0 に近付くことを表す。なお、負の数 y に対して 0y は定義されない。
- ^ 具体的には、Visual Basic Editor (VBE) のイミディエイトウィンドウ上で
?0^0
と打ち、Enter を押すと1
と出てくる。
出典
- ^ Knuth 1992.
- ^ グレアム, パタシュニク & クヌース 1993.
- ^ Grillet 1995, p. 6.
- ^ N. Bourbaki (2004). Theory of Sets. Elements of Mathematics. Springer. p. 164. ISBN 978-3-540-22525-6
- ^ Daniel W. Cunningham (2016). Set Theory: A First Course. Cambridge University Press. pp. 59, 221. ISBN 978-1-107-12032-7
- ^ sci.math FAQ: What is 0^0?
- ^ Rotando & Korn 1977.
- ^ Lipkin 2003.
- ^ 神保 2003, pp. 44–45.
- ^ "Since ln 0 does not exist, 0z is undefined. For Re z > 0, we define it arbitrarily as 0."(ln 0 は存在しないから、0z は定義されていない。Re z > 0 に対しては、0 と定義する。)(Carrier, Krook & Pearson 2005, p. 15)
- ^ "For z = 0, w ≠ 0, we define 0w = 0, while 00 is not defined."(z = 0, w ≠ 0 に対しては、0w = 0 と定義するが、00 は定義しない。)(Gonzalez 1991, p. 56).
- ^ Google電卓機能による 0^0の計算結果
- 0の0乗のページへのリンク