0の0乗 定義されない場合

0の0乗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/18 04:06 UTC 版)

定義されない場合

x ≠ 0 のとき x0 = 1 であるという理由で、0の0乗 "00" を 1 と定めることが自然(連続な拡張)だと考えるのであれば、y が正の実数のとき 0y = 0 であるという理由で、0の0乗 00" を 0 と定めることも自然(連続な拡張)だと考えて良いだろう。このように連続性を指針とする場合には、こちらを立てればあちらが立たず、という状況であり、全てに都合の良い定め方は存在しない。さらにもし複素関数を考えるのであれば、そもそも解析性を担保する定義は存在せず、値を別途定める他はない。

実解析における扱い

関数 z = xy をプロットしたもの。xy が様々な関係を保って原点に接近するとき(赤や緑の曲線)、z は任意の極限値をとり得る。緑の曲線は、そのうちで z の極限が 1 となるものである。

冪を自然数ではなく実数の範囲で考え、00 を二変数関数 xyx = y = 0 における値だと考えると、次のようになる。

二変数関数 xy は、定義域を D = { (x, y) | x > 0 } ∪ { (0, y) | y > 0 }とした場合には、D 全体で連続となる。しかし、原点 (0, 0) を付け加えて、D′= D ∪ {(0, 0)} を定義域とした場合には、原点における値 00 をどのように定義しても、原点において連続とはならない。それは、D' 内で(原点を通らず)原点に近づく経路によってその極限値が異なるからである。例えば、y 軸 (x = 0) に沿って原点に近づくときの極限値は

であるが、x 軸 (y = 0) に沿って原点に近づくときの極限値は

である[注 6]。画像はこの二変数関数 z(x, y) = xy のグラフであり、原点に近づくときの経路によって異なる極限値を持つことが見て取れる。関数の連続性を重視する観点からは、00 をどのような値にすることもできない。

また 00 という記号によって、関数 f(x)g(x) の(x がある有限値に向かう、あるいは ±∞ に向かうときの)極限が共に 0 であるときの、f(x)g(x) の極限を考えていることを表すことがある。このとき 00 はいわゆる不定形英語版、すなわちこの f(x)g(x) の極限は一定しないのであって、実際任意の非負の実数値や +∞ にもなりうるし、振動することもある。例えば、

(ここで a は任意の実数)となり、また

は振動する。ここで、x → 0+x正の方向から 0 に近づく極限を表す。

極限が 1 になるための十分条件はいくつか知られている。例えば f および g がともに x = 0 において実解析的であり、ある正数 b > 0 に対し開区間 (0, b)f > 0 であれば、(x → 0+ のとき f(x) → 0, g(x) → 0 であれば)f(x)g(x)x → 0+ のときの極限は必ず 1 である[6][7][8]

複素解析における扱い

複素領域において、0 でない z に対し、関数 zw を、log z分枝を選び、zwew log z と定義できる。これは 0w を定義していない、なぜならば z = 0 において定義された log z の分枝は存在せず、したがって当然 0 の近傍で定義された log z の分枝も存在しないからである[9]。したがってこの意味で 0w は定義されないのであるが、著者によっては別途、

  • Re w > 0 に対しては 0 と定義したり[10]
  • w ≠ 0 に対しては 0 と定義したり[11]

している。


注釈

  1. ^ 0 と定義される場合もある。
  2. ^ x = 0 のときは 0 = 00 × 0 となってしまうため、00 は任意の値で等式が成り立ち、この方針で 00 を「自然」に定義することはできない。
  3. ^ この定義は半群における積の結合性より意味を持つ。
  4. ^ さらに a が逆元を持つならば、それを a−1 と表記し、負の整数 n に対して an = (a−1)n と表記する。
  5. ^ 整数の全体や実数の全体など、あるいは一般に単位元を持つ結合環は、乗法について零元を持つモノイドをなす。
  6. ^ ここに、x → +0x が正の方向から 0 に近付くことを表す。なお、負の数 y に対して 0y は定義されない。
  7. ^ 具体的には、Visual Basic Editor (VBE) のイミディエイトウィンドウ上で ?0^0 と打ち、Enter を押すと 1 と出てくる。

出典

  1. ^ Knuth 1992.
  2. ^ グレアム, パタシュニク & クヌース 1993.
  3. ^ Grillet 1995, p. 6.
  4. ^ N. Bourbaki (2004). Theory of Sets. Elements of Mathematics. Springer. p. 164. ISBN 978-3-540-22525-6 
  5. ^ Daniel W. Cunningham (2016). Set Theory: A First Course. Cambridge University Press. pp. 59, 221. ISBN 978-1-107-12032-7 
  6. ^ sci.math FAQ: What is 0^0?
  7. ^ Rotando & Korn 1977.
  8. ^ Lipkin 2003.
  9. ^ 神保 2003, pp. 44–45.
  10. ^ "Since ln 0 does not exist, 0z is undefined. For Re z > 0, we define it arbitrarily as 0."(ln 0 は存在しないから、0z は定義されていない。Re z > 0 に対しては、0 と定義する。)(Carrier, Krook & Pearson 2005, p. 15)
  11. ^ "For z = 0, w ≠ 0, we define 0w = 0, while 00 is not defined."(z = 0, w ≠ 0 に対しては、0w = 0 と定義するが、00 は定義しない。)(Gonzalez 1991, p. 56).
  12. ^ Google電卓機能による 0^0の計算結果


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