日本の看護師 日本における歴史

日本の看護師

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 17:16 UTC 版)

日本における歴史

武内桂舟画「看護婦」1904年

日本でもフローレンス・ナイチンゲールの影響を受け継いで、1887年ごろに桜井女学校、東京帝国大学病院、慈恵会医科大学病院、日本赤十字社に看護婦養成所が設立されたが[22]、実際に看護に携わる者の多くはこうした教育機関で教育・訓練されるのではなく、看護の実務の場で徒弟的に育てられるにとどまっていた[22]。日本で看護基礎教育が抜本的に改革されたのは、第二次世界大戦後のことで、これは米国の看護界影響を大きく受けつつ行われたものであり、主体的に看護活動を担うことのできる看護婦を養成することを目指すようになった[22]

雇用機会均等化

1948年(昭和23年)公布の「保健助産看護法」においては、女子について「看護」として規定するとともに、男子である看護人については看護婦に関する規定を準用するとされていた(大正4年施行の看護婦規則でも、この点に関しては同様)。昭和43年法律第84号による改正で男子である看護人について「看護」または「准看護」と称することが規定された。

1989年の「保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則」の改正までは、看護士(現在で言う男性の看護師)に対しては精神科での勤務を想定した教育カリキュラムが組まれていたが、改正後は男女とも同一の教育カリキュラムとなっている。

2002年3月からは、法律の題名が「保健助産看護法」と改正されるとともに、男女関わりなく「看護」または「准看護」として規定されるように改正された[注釈 4]

2002年3月の上記名称変更に伴い、医療施設にて「看護婦長(婦長と略称)」、「看護士長」などと称されていた職位は、「看護長(師長と略称)」[23] 、「看護係長」[24]、「看護長」[25][26] などと称されるようになった。また、これらの名称変更とほぼ同時期にナースキャップも姿を消した。

保健師助産師の看護師国家試験合格要件

保助看法第31条第2項により保健師および助産師は(たとえ看護師免許を有しない場合でも)看護師業務を行うことができるとされている。これにより、看護大学の卒業生や保健師または助産師統合カリキュラムを学んだ者が、看護師国家試験に不合格であったにもかかわらず、保健師国家試験助産師国家試験に合格し、看護師業務を実施可能なことは、医療安全上、患者に対する正しい情報提供の面でも問題視された。これを受けて2006年6月の第164回国会(通常国会)において保健師助産師看護師法が改正され、法律が施行される2007年4月以降に、新たに保健師・助産師の各国家試験の免許を取得する者については、看護師国家試験合格が免許付与の要件となった(保助看法第7条)。

被行政処分者の再教育

2006年の保健師助産師看護師法改正により、戒告、3年以上の業務停止、免許の取り消しの処分を受けた者、再免許を受けようとする者は、保健師等再教育研修受講が義務付けられた。


注釈

  1. ^ 略称「保助看法」
  2. ^ 2016年までは自衛隊中央病院と防衛医科大学校の高等看護学院で養成していた。
  3. ^ 2022年3月までは岐阜基地にあった自衛隊岐阜病院
  4. ^ これを「看護師ファシズム」と読んで批判している小谷野敦『頭の悪い日本語』(新潮新書)のような人もいる。

出典

  1. ^ 衆議院議員長妻昭君提出「国家資格」及び「民間技能審査事業認定制度による資格」に関する質問に対する答弁書”. 衆議院 (2003年4月15日). 2024年3月10日閲覧。
  2. ^ 衆議院議員長妻昭君提出「国家資格」及び「民間技能審査事業認定制度による資格」に関する質問に対する答弁書 別表第一 1”. 衆議院 (2003年4月15日). 2024年3月10日閲覧。
  3. ^ 小倉能理子, 阿部テル子, 齋藤久美子, 石岡薫, 一戸とも子, 工藤せい子, 西沢義子, 會津桂子, 安杖優子, 小林朱実「看護職者の患者指導に対する認識と実施状況」『日本看護研究学会雑誌』第32巻第2号、日本看護研究学会、2009年、2_75-2_83、CRID 1390001205743233664doi:10.15065/jjsnr.20081225007ISSN 02859262 
  4. ^ 時代変われば”. 日医on-line - 日本医師会. 2017年10月20日閲覧。
  5. ^ 看護系大学院受験ラボ 「診療看護師課程がある大学院教育機関一覧」
  6. ^ ジョブメドレー「診療看護師(NP)とは? なり方や特定看護師との違い、メリットを解説」
  7. ^ さくら総合病院 「診療看護師(Nurse Practitioner)の紹介」
  8. ^ ナースの転職知恵袋「診療看護師(ナースプラクティショナー)の資格取得のメリットは?」
  9. ^ 朝日新聞デジタル2019.04/25「診断や薬の処方できる米国の看護師 日本となぜ違う?」
  10. ^ 1977年の看護職員条約」、国際労働機関公式ウェブサイト。
  11. ^ 参議院社会労働委員会、第24号議事録、1978年6月14日
  12. ^ 厚生労働省医政局長通知(平成14年9月30日付け医政発第093002号)「看護師等による静脈注射の実施について」 (PDF)
  13. ^ 新たな看護のあり方に関する検討会中間まとめ
  14. ^ 医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について
  15. ^ [1]都道府県別 看護師3年課程 看護統計資料室(日本看護協会) (PDF)
  16. ^ 【第107回看護師国家試験合格状況】[2]
  17. ^ 准看護師”. 独立行政法人福祉医療機構. 2018年6月11日閲覧。
  18. ^ 准看護師制度について”. 日本看護協会. 2018年1月23日閲覧。
  19. ^ 厚生関係審議会議事録等 健康政策局 96/12/20 准看護婦問題調査検討会報告の概要
  20. ^ 日本医師会から 私たちの見解
  21. ^ 自衛隊入間病院 引越し編”. 防衛ホーム (2022年7月15日). 2023年1月25日閲覧。
  22. ^ a b c 平凡社『世界大百科事典』vol.6, 1998, p.353【看護婦】
  23. ^ 日本看護協会,看護に関わる主要な用語の解説p51.l11,2007年3月 (PDF)
  24. ^ 日本赤十字社秋田県支部年表、p14.l(L)10,2005年 (PDF)
  25. ^ 山口県医師会報、第1737号、p402.l(L)34-36,2005年 (PDF)
  26. ^ 衛生局支部、しんろ、「時間外労働」ってなんだろう?「サービス」残業ってなんだろう?p4-5,2005年4月 (PDF)
  27. ^ 令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
  28. ^ 2014年3月31日の中日新聞朝刊3面
  29. ^ OECD Health Statistics 2019
  30. ^ e-Stat 統計で見る日本
  31. ^ a b 2008年 時間外労働、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査 (Report). 日本看護協会. 2008.
  32. ^ 日・フィリピン経済連携協定に基づくフィリピン人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて
  33. ^ 経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の看護師国家試験の結果(過去10年間)
  34. ^ 「経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定」(日・インドネシア経済連携協定)の署名について
  35. ^ 日・インドネシア経済連携協定に基づくインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて
  36. ^ "超人手不足時代"に秘策アリ!?NHK総合テレビ『サキどり↑』2014年7月13日放送





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