馬術 伝統日本馬術

馬術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/05 02:50 UTC 版)

伝統日本馬術

日本での馬術は武芸十八般にも数えられているように、武芸の重要な科目であった。乗馬は苗字帯刀と同じく武士の特権であり、明治4(1871)年4月19日に平民に乗馬が解禁されるまで、騎乗する権利は身分により制限された。武芸であることから日本の馬術流派の多くは騎乗したまま弓を扱う騎射の技術もを含んでいる。

特色として、蹄鉄が伝えられていなかったので、わらじをはかせていたか、が硬いので何もはかせずに乗っていたことがあげられる。また、去勢の技術が伝えられていなかったこと、戦場には人を齧るくらい元気な牡馬が尊ばれていた。このような癖の強い「悪馬」の調教や乗馬法も考案され、「悪馬新当流」のように流派名とした例もある。

日本の古来の乗馬位置は西洋馬術と反対の右乗りである。平治物語絵巻や1887年のイギリス・イラストレーテッド・ロンドン・ニュースなど古くから明治初期まで日本人が馬には右から乗っていたことを示す絵画が存在する[10]

競技種目としては流鏑馬笠懸打毬などがある。

日本の馬術流派

  • 小笠原流
    • 大坪流
    • 八条流(高麗流)
      • 新八条流
      • 二宮流
      • 八条当流
      • 山形流
    • 人見流
    • 一全流
  • 調息流
  • 悪馬新当流(神当流)
    • 徒鞍流
    • 常心流
  • 鎌倉流
  • 賀茂悪馬流

障害者と馬術の関わり

身体障害を持つ者にとっても馬術の歴史が積み重ねられており、「紀元前5世紀に、戦争で傷ついた兵士を馬に乗せることで治療していた」とされる文献があるという[11]。障害者による競技は、「馬場馬術」が一般的になされ[12]、FEIも「障害者馬場馬術競技(Para-Equestrian Dressage)」を管轄している[13]。なお、限られた例ではあるが「障害飛越競技」に取り組んだ競技者も存在する[12]。馬術はパラリンピックの競技種目としても登録されている[14]。演目は規定演技を行う「チャンピオンシップテスト」と、各自で選んだ楽曲に合わせて演技を組み合わせていく「フリースタイルテスト」の2つがある[14]。競技者の障害程度により「I」「II」「III」「IV」「V」のグレードへ分類される[14]。そのことをクラシフィケーションという[15]

なお、FEIでは「障害者馬車競技(Para-Equestrian Driving)」も管轄しており世界選手権大会も開催している[16]

落馬事故で障害を背負った元競馬騎手が馬術競技に転向する例もあり、日本の馬術選手では選手石山繁、選手常石勝義、選手高嶋活士がこれに当たる。

日本での馬術用語

明治以降、日本での馬術は、伝統の馬術を廃して西洋馬術を主に、大日本帝国陸軍陸軍騎兵学校を参照)において導入し発達したという経緯がある。そのため、用語の多くは、軍隊用語の流れを汲むものとなっている。

  • 脚(きゃく)
    騎乗者のあし(下腿・脹脛)を意味する。馬のあしは肢(あし)と表現して区別する。脚の馬腹との接触は人馬のコミュニケーションにおいて重要で、馬を推進させる方向に働く。

注釈

  1. ^ 時代劇大河ドラマなどの乗馬シーンのほとんどは、ブリティッシュ馬術かウェスタン馬術を用いている。
  2. ^ 競技用のジャケットのこと。上らん、ショージャケット[6]

出典

  1. ^ "馬術". デジタル大辞泉. コトバンクより2023年8月24日閲覧
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n "馬術". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2023年8月24日閲覧
  3. ^ a b c d e "馬術". 百科事典マイペディア. コトバンクより2023年8月24日閲覧
  4. ^ a b c d e 馬術競技について”. 株式会社乗馬クラブクレイン. 2010年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月24日閲覧。
  5. ^ "西 竹一". 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊). コトバンクより2023年8月24日閲覧
  6. ^ 乗馬用語集”. 乗馬メディア EQUIA エクイア. 2023年8月24日閲覧。
  7. ^ a b c 競技紹介:馬術”. 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC). 2023年8月25日閲覧。
  8. ^ Event Schedule”. World Games 2010 Foundation, Inc. 2013年11月3日閲覧。
  9. ^ 「馬術」のことを一から知りたい。その歴史や乗り方の種類など基礎知識”. 【SPAIA】スパイア (2016年12月16日). 2020年11月19日閲覧。
  10. ^ 早坂 昇治『競馬異外史』、中央競馬ピーアール・センター、1987年、141-142頁。 
  11. ^ 障害者乗馬の歴史”. JARD(日本障害者乗馬協会). 2014年3月22日閲覧。 [リンク切れ]
  12. ^ a b 日本の障害馬術を支えてきたアスリートたち”. JARD(日本障害者乗馬協会). 2014年3月22日閲覧。 [リンク切れ]
  13. ^ About Para-Equestrian Dressage”. FEI. 2014年3月22日閲覧。 [リンク切れ]
  14. ^ a b c 夏季20種目紹介 - 馬術”. 日本障害者スポーツ協会. 2014年3月22日閲覧。 [リンク切れ]
  15. ^ クラシフィケーション”. JARD(日本障害者乗馬協会). 2018年8月18日閲覧。 [リンク切れ]
  16. ^ About Para-Equestrian Driving”. FEI. 2014年3月22日閲覧。 [リンク切れ]


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