肉食動物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 06:52 UTC 版)
生物濃縮
これら動物は、他の動物を捕食することで、その捕食された動物が摂取した栄養素を二次的に利用する。この場合、骨や内臓も食べることになるため、それらに蓄積された栄養素も消化・吸収する。しかしその一方で、尿や汗によって体外に排泄されにくいために、これら被捕食動物の体に蓄積された脂溶性の汚染物質も吸収することになる。したがって、有害物質などが被捕食動物よりも高濃度で蓄積し、より大きな被害が出る場合もある(生物濃縮)。近年では一部地域で、これら食物連鎖による高濃度な公害による汚染によって、野生肉食動物の絶滅が危惧されている所もある。
捕食することでその餌動物から特殊能力を受け取る例もある。ウミウシの仲間には餌にする海綿動物などの動物の持つ毒物を体内に取り込んで、自分が魚などに食べられないための防御に用いるものが多いが、なかでもミノウミウシ類は刺胞動物を餌として、その時に餌のもつ刺胞を壊さずに取り込み、自分の背面などに保持して、自己防衛に使う。また嚢舌類と呼ばれるウミウシの仲間は緑藻類に属する海藻の細胞の中身を吸引して餌にしているが、そのとき葉緑体は消化せずに生きたまま背面にある細胞に取り込み、光合成をさせて活動に必要な栄養素を獲得している。餌に含まれる毒素の利用は昆虫でもよく知られており、マダラチョウ科のチョウの多くは幼虫時代に食草から取り込んだ毒物によって鳥に食べられにくくなっている。
人間の食料として
牧畜や狩猟があまり盛んでない地域の人間は、その食習慣において、内臓をあまり好んで食べないので、これらの濃縮された汚染にさらされずに済んではいるが、食文化により内臓を調理して食べる場合には、注意が必要とされている。哺乳類の内臓の食習慣が余り一般的ではない日本でも、魚の内臓、特に高次消費者であるマグロなどの利用は同様の意味で注意が喚起されている。また肉食動物の肝臓には、高濃度のビタミンAが含まれるが、雑食動物である人間が肉食動物の肝臓を食べると、少量でビタミンA過剰摂取の危険もあるため、一般的には肉食動物の肝臓は食用に適さないとされている。実例として、ホッキョクグマの肝臓を多く摂取すると、ビタミンAの過剰症を起こすことが知られている。
肉食動物は活発に活動する関係から、スジが多く肉が臭いと言われているが、きちんと調理することで臭みが抑えられる。また鳥類や爬虫類の肉食動物では、味が淡白とされる。しかし寄生虫をもっていることも多いため、よく加熱調理しなければならない。
深海での肉食化
海には濾過摂食を行う動物群が多く存在するが、それらの中で深海を生息域とするものに肉食性に変化したものが見られる。例えばホヤ類では入水孔が大きく広がってより大きな餌が取れるようになっているオオグチボヤなど、海綿動物では骨片が外に突出して小型動物を引っかけて食べるようになった肉食性カイメンと呼ばれるものがある。これらは深海では懸濁物が少ないことで餌の範囲を広げたものと考えられる。
関連項目
- ^ 『塩の秘密』112頁。
- ^ https://www1.hills.co.jp/vetssite/practice/hfs/hfs046.shtml[リンク切れ]
- ^ Making a scavenger—the meat-thieving traits that have stood the test of time(Trinity College Dublin:2017)
- ^ NHK放送『プラネットアース』
肉食動物と同じ種類の言葉
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