羽生結弦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 15:43 UTC 版)
スケート技術と特徴
ジャンプ、スピン、ステップの全方位に秀でたオールラウンダーである[524][525]。
ジャンプは、準備動作が少なくてもただちに跳ぶことができるのが特徴で[526]、踏み切りから着氷後の流れまで美しく跳び幅があり、GOE(出来栄え点)加点を得るための8つの評価要素をすべて満たしている質の高さが特長[527]。このためクリーンに跳ぶとGOE満点となる3点(現在は5点)、または満点に近い高い加点を獲得する[528]。試合では4種類の4回転ジャンプ(トウループ、サルコウ、ループ、ルッツ)を跳ぶが、最大の武器は確実に加点のつくトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)である[529]。 質の高さに加え、踏み切り直前に「カウンター」と呼ばれる難しいターンを行ったり、両足のつま先を外側に向けたスプレッドイーグルから踏み切り、着氷後にすぐイーグルに戻ったりなど、ジャンプへの入り方や出方の難度の高さなどからもほぼ常に3から4(現在の価値尺度においてはトリプルアクセルの基礎点8.0点に対して3割から4割である2.4点から3.2点)のGOEがつき、トリプルアクセルだけでほぼ確実に10点以上の価値があると認められその点数が与えられる[注 8]。特に基礎点が1.1倍となる演技後半に組み込んだトリプルアクセルからの連続ジャンプ(例えば2014年中国杯で史上初成功した3A+1Eu+3Sは現在の価値尺度だと基礎点12.8点を1.1倍した14.08点)は、めったにミスをしないことからも4回転ジャンプ(例えば4回転ルッツは現在の価値尺度だと基礎点11.5点)以上の強力な得点源となっている。
このように、基礎点の高い高難度のジャンプ構成を成立させたうえで、各要素を確実に高い質で決めることから[530]、高いGOE評価を獲得する。この完成度の高さが羽生の強さである[531][532]。例として、世界記録を塗り替えた2015年グランプリファイナルでは合計20.18点の加点(当時の4回転トウループの基礎点は10.3点。つまり加点だけで4回転トウループ2本分の基礎点にほぼ匹敵する)を獲得している[533]。
スピンの技術も高く、完璧にレベルを満たせばこちらも高い加点を獲得する[531][534]。もともとのスピンの速さとポジションの美しさに加え、回転しながら指先や腕などを動かすことでオリジナリティーを出し、プログラムの構成難易度を上げる工夫を行っている[535]。特に、柔軟性の高さを生かしたビールマンスピン[536]やドーナツスピンなどを積極的に演技に取り入れている[537]。ハイドロブレーディング[538][539]、イナバウアー[540]も得意で、多くのプログラムに入れている[541]。
5種類の4回転ジャンプ
ISUによる略称: ジャンプ | |
---|---|
T | トウループ |
S | サルコウ |
Lo | ループ |
F | フリップ |
Lz | ルッツ |
A | アクセル |
試合では、5種類の4回転ジャンプ(トウループ、サルコウ、ループ、ルッツ、アクセル)をプログラムに組み込んでいる。
アイスショーやエキシビションのフィナーレなど(4Lo+3A+SEQ:4回転ループ-3回転アクセルを着氷している[542][543])で跳んでいたが、2016 - 2017シーズンより競技に取り入れている。2016年9月30日にモントリオールで開催されたオータムクラシックのショートプログラムにおいて、国際スケート連盟(ISU)公式の国際大会史上初めてクリーンに成功させた(2016年10月2日、ローザンヌにて公式に認定)[544][545]。
公式練習でも着氷していたが[546]、2017年ロステレコム杯のフリーよりプログラムに組み込み、公式戦初挑戦で成功させた。公式練習では4回転フリップ(インタビュー記事によると4F+3A+SEQ)にも挑戦している[547]が、こちらは試合に組み込む意向を示したことはない。また、プロ転向後の単独公演(アイスショー)では「4回転フリップは確実にインサイドエッジで『これがフリップだ』というクオリティで決められるようになるまでプライドにかけて披露できない」と話している。
4回転アクセルについては、幼いころに従事していた都築章一郎コーチからも「アクセルは王様のジャンプ」と教わった経験や、自身がアクセルジャンプを得意としていることからも思い入れが深く「将来的には必ず4回転アクセルを跳びたい」と常に語っている[548]。平昌五輪後の挑戦を示唆していたが[549]、2018 - 2019シーズンより実戦への投入を目標に練習中である[550]。
オリンピック2連覇後の翌日会見にて挑戦を公言している[551]。2019年GPFのフリーの公式練習で初めて、4回転アクセルに挑戦した[407]。2021年国別対抗戦のエキシビションの練習でも果敢に挑戦[552]。そして、2021年全日本選手権のフリーで、予定構成表に表記され、冒頭で始めて挑んだ。両足着氷となり成功には至らなかったが、プログラムに組み込み実施できたことは大きな収穫と語った[553]。2022年北京オリンピックでも、公言通りフリーの冒頭に、4回転アクセルの片足着氷に果敢に挑んだ。転倒したが史上初めて、4回転アクセルのアンダーローテーションとして、「10点の基礎点」を獲得しプロトコルに「4A<」と表記され世界で初めて公認大会で「4A」が記録された[465]。
- 4回転の連続ジャンプ
4回転の連続ジャンプにも挑戦しており、[554][555]2017年国別対抗戦のフリーでは「4T+1Lo+3S:4回転トウループ-1回転ループ-3回転サルコウ」の3連続ジャンプを史上初めて成功させた[556]。2018年フィンランド杯のフリーでは、こちらも史上初となる「4T+3A+SEQ:4回転トウループ-トリプルアクセル」のコンビネーションを成功させている[557]。さらに2019年スケートカナダのフリープログラムで「4T+1Eu+3F:4回転トウループ-1回転オイラー-3回転フリップ」の3連続ジャンプも史上初めて成功させている。
その他アイスショーや練習では、4Lo+3A+SEQ、4Lz+3T、2S+1Eu+4S、3A+1Eu+4S、4S+1Eu+4S、4T+1Eu+4T+SEQ、4T+1Eu+3F+1Eu+3S、4T+3T+3Lo、4S+3T+3Lo、4T+3A+3T+3A+SEQ、4T+3A+3A+3A+SEQなど、試合では行わない奇抜で超人的な連続ジャンプも披露している。また、3A+3Loや3A+3T+3Loなどの高難度な連続ジャンプにも挑戦していた。
- ^ 国際大会での4回転アクセルは、アルトゥール・ドミトリエフが2018年ロステレコム杯でダウングレード判定(2分の1回転以上の回転不足)を受けた挑戦のみであった[1]。ダウングレードと判定された場合、元のジャンプより1回転少ないジャンプの基礎点が使用される[1]。アンダーローテーションと判定された場合、元の基礎点の80パーセントの点数が適用されるため、今大会の羽生の挑戦は4回転アクセルの基礎点が初めて計算に使われた挑戦となった[2]:2。
- ^ プルシェンコは、2012年に「彼を見ていると昔の自分を思い出す。まだ17歳だが、私が見る限り彼がナンバーワンだ。」と語り、2014年ソチ五輪時には「私は彼のヒーローだったかもしれないが、今は彼が私のヒーローになっている」と語り、羽生の金メダル獲得後はTwitter上で「私のアイドル。よく頑張った。彼は天才だ」と勝利を称えた。2014年にゼビオアリーナ仙台で開催された凱旋公演で共演した際には、プルシェンコが羽生に花束を渡し祝福する一幕などが見られた
- ^ 日本人選手の優勝は2005-2006シーズンの小塚崇彦以来2人目
- ^ 以前は本田武史が2002年世界選手権で銅メダルを獲得した当時で20歳11か月だった。なお、世界の最年少記録はアラン・ジレッティの14歳4か月である
- ^ 内村航平は、1989年(昭和64年)1月3日生まれなので、平成生まれではない
- ^ 後のインタビューで、「絶対に王者になるんだ」の言い間違いだが、「言ってしまったのは事実だから、自分の言葉に近づけるよう努力するしかない」と発言している。読売新聞. 2015年12月31日. 朝刊. 22面
- ^ ペアではアリオナ・サフチェンコ、マキシム・トランコフが違うペアで達成。アイスダンスではテッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア組が達成している
- ^ 例として2014年世界選手権SP後半のGOE加点2.86 (PDF) 、2014年中国杯SPのGOE加点3点満点(9人中8人のジャッジが満点を付けた) (PDF) など
- ^ インターネット上でフリーBGMなどの音源を販売しているサウンドクリエイター[587]。
- ^ 2015年オータムクラシックはチャレンジャーシリーズではない。
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