結界 結界の概要

結界

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/14 09:35 UTC 版)

後世、界の概念と密教の神秘主義が合体することにより、原初のインド仏教にはなかった、「特殊なエネルギーを保持した神秘空間としての界」という観念が生じ[2]なる領域となる領域を分け、秩序を維持するために区域を限るという意味あい(けっかい、Siimaabandha)も生じた。さらに日本では、古神道や神道における神社などでも、同様の概念があることから、言葉として用いられている。大和言葉では端境はざかいやたんに境ともいう。

律に見える結界の規定 [3]

の規定では、サンガは、全世界のあらゆる比丘・比丘尼が理念上所属する「四方(しほう)サンガ」(cātuddisasaṃgha)と、各地に拠点を置き、4人以上の比丘・比丘尼をメンバーとする個別の「現前サンガ」(sammukhībhūta-saṃgha)に大別される。

比丘・比丘尼はそれぞれの「現前サンガ」の間を自由に移動して所属先を変更したり、新たなサンガを発足させることができる。

それぞれの「現前サンガ」は、所属する比丘の全員が参加する会議(羯摩(こんま), S:karma, P:Kamma)において、その現前サンガの領域(界)を設定し、変更する。

サンガは、様々な修行上の儀式やサンガとしての意思決定などで、所属メンバーの全員参加を必要としており、各「現前サンガ」の規模と領域は、「所属するメンバーの全員が定期的に集まることができる程度の範囲」で決定される。

  1. 4人以上の比丘・比丘尼が集まって界を設定(=結界)すれば、その界の内部がひとつの「現前サンガ」となる [4]
  2. 結界は、その時に設定される界によって成立する「現前サンガ」の構成員、すなわち今からそこにサンガを作ろうと考えている比丘・比丘尼たち全員が集合して合議のうえ所定の形式を経て成立する [4]。その後、この構成員がどのように変化しようとも、いったん作った界は存続する[4]
  3. サンガの合議によりひとたび「結界」したら、抹消のための儀式を執行しない限り、その界は永続する。たとえその界の中に居住する比丘・比丘尼が一人も存在しなくなった場合でも、界は消滅しない。その界の中に居住する比丘・比丘尼が丸ごと入れ替わったり、いったん無住になったのち、新たにやってきた比丘・比丘尼が生活するような場合でも、もう一度、結界しなおす必要なはない[4]
  4. 従来あった界の領域を変更する必要が生じた場合には、その時点でその「現前サンガ」に所属するすべての比丘・比丘尼が合議した上で、従前の界を消して、新たな界を設定する[5]
  5. ある「現前サンガ」が近くにある別の「現前サンガ」と合体して大きな「現前サンガ」を作る場合は、それぞれのサンガの界を消したのち、両サンガのメンバーが全員集合して、両者を包含する新たな界を設定する[6]
  6. 界の設定(結界)にあたっては、複数の「現前サンガ」の界の領域が重複することは厳しく禁止されている。二つのサンガの領域が一本の境界線で隣接する事も禁止されている(一人の人間が、その境界線をまたいで、複数のサンガに同時に所属することが可能となるため)。そのため、二つのサンガの境界には、人間がまたぐことができない程度の空白地帯を設定することが求められ、この制約に反して設けられた界は無効とされる[6]

密教

清浄な領域と普通(もしくは不浄)の領域との区切ることである。これにはいくつかの種類がある。

  • 摂僧界しょうそうかい - その内側で受戒布薩などを行う
  • 摂衣界しょういかい - その内側で三衣を離れて止宿しても罪にならない
  • 摂食界しょうじきかい - その内側で食を煮ても罪にならない

また、密教では、修行する場所や道場に魔の障碍が入らないようにするため、結界が行われる。これには以下の3種類がある。

  • 国土結界
  • 道場結界
  • 壇上結界

高野山や比叡山は国土結界、護摩修法は壇上結界の例として挙げられる。


注釈

  1. ^ 4人以上の比丘(びく)または比丘尼(びくに)により構成される出家者の集団
  2. ^ 理念の上で全世界のあらゆる比丘・比丘尼によって形成される「四方(しほう)サンガ」(cātuddisasaṃgha)に対し、特定の拠点において、四人以上の比丘(または比丘尼)をメンバーとして活動する個々のサンガを指す。

出典

  1. ^ a b 佐々木閑 1999, p. 39.
  2. ^ 佐々木閑 1999, p. 39-40.
  3. ^ 佐々木閑 1999, p. 39-46.
  4. ^ a b c d 佐々木閑 1999, p. 43.
  5. ^ 佐々木閑 1999, p. 43-44.
  6. ^ a b 佐々木閑 1999, p. 44.


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