特異値分解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 16:34 UTC 版)
特異値分解の応用
擬似逆行列
特異値分解を用いて、擬似逆行列を計算することができる。行列 M の擬似逆行列は、その特異値分解 を用いて
と表せる。ここに Σ+ は、Σ の零でない成分の逆数を成分とする行列の転置である。この擬似逆行列を用いて、線形最小二乗法を行うことができる。
値域、零空間、行列の階数
特異値分解を用いて、行列 の値域、零空間を表現することができる。 の特異値の中で零になるものに対応する右特異ベクトルが零空間の基底となる。 の特異値の中で零でないものに対応する左特異ベクトルが値域の基底となる。すなわち の行列の階数は、零でない特異値の数と一致する。さらに、 と と の階数は一致し、 と の固有値は一致する。
数値計算上では、特異値を用いて行列の実質的な階数を求めることができる[6]。数値計算上では丸め誤差の影響で、階数が退化した行列に対し、非常に小さいが零ではない特異値が得られてしまう場合に有効である。
行列の近似
行列 を、ある特定の階数 を持つ別の行列 で近似すると便利な場合がある。この場合の近似を という条件の下で と の差(フロベニウスノルム)が最小なものという意味であるとすると、行列 の特異値分解によって、 を求めることができる。すなわち、
ここに、 は、 から大きい方から数えて 個の特異値を残して、それ以外の特異値を零とおいたもの。
- ^ Autonne, L. (1915). Sur les matrices hypohermitiennes et sur les matrices unitaires (Vol. 38). Rey.
- ^ a b c d e 山本哲朗『数値解析入門』(増訂版)サイエンス社〈サイエンスライブラリ 現代数学への入門 14〉、2003年6月。ISBN 4-7819-1038-6。
- ^ a b c d Weisstein, Eric W. "Singular Value Decomposition." From MathWorld--A Wolfram Web Resource. http://mathworld.wolfram.com/SingularValueDecomposition.html
- ^ Golub & Van Loan 2013, Theorem 2.4.1 (Singular Value Decomposition).
- ^ Horn & Johnson 2013, Theorem 2.6.3 (Singular value decomposition).
- ^ 室田 & 杉原 2015, 第8章特異値と最小2乗法.
- 1 特異値分解とは
- 2 特異値分解の概要
- 3 幾何的な意味
- 4 特異値分解の応用
- 5 参考文献
- 6 関連項目
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