片親引き離し症候群 片親引き離し症候群の概要

片親引き離し症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/24 21:27 UTC 版)

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片親引き離し症候群は、2010年に発表されたアメリカ精神科医師会による『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)の草案には記載されていない[1]が、ワーキング・グループによる「他の情報源が提案する疾患」には記載されている[2]。それによれば、片親引き離し症候群とは「同居親の行動によって非同居親と子供との関係が不当に破壊される状態」である。

概要

PASの影響として、子供の精神面や身体面に様々な悪弊が出たり、生育に悪影響があり、配偶者に対しての情緒的虐待でもあると捉えられている[3][4][5][6][7]。ガードナーは、PASは子供に様々な情緒的問題、対人関係上の問題などを生じさせ、長期間にわたって悪影響を及ぼすと主張、引き離しを企てている親の行為は子供に対する精神的虐待であると指摘している。 PASの法的証拠としての有効性は、専門家委員会のレビューや、イギリスのイングランド・ウェールズ控訴院によって否定されており、カナダ法務省はPASを用いないように推奨しているが、米国の家庭裁判所での論争においては用いられた例がある[8][9]。ガードナーは、PASは法曹界に受け入れられており、多くの判例もあるとしているが、実際の事件を法的に分析した結果、この主張は正しくないことが示されている[10]

PASを医学的に「症候群」や「疾患」であると認定している専門職団体はない。アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)の草案には記載されていない。 連れ去りが、子供にしばしば引き起こす精神的障害は、分離不安、PTSD、摂食障害、学習障害、行動障害などである[11]。これらの精神的障害は、DSMに記載されている。自然災害もPTSDを起こすことがあるが、自然災害は「疾患」ではない。同様に、連れ去り自体は「疾患」ではない。

PASという用語について

PASは診断学上の症候群の概念には該当していない。これについては、ガードナーとケリー&ジョンストンの間で激しい論争があった。ケリー&ジョンストンは「疎外された子供」の定義から評価することを提唱し、子供が他方の親との接触に抵抗を示すケースの全てを、悪意のプログラミングによる片親引き離し症候群と考えるのは単純であり、診断学上のシンドローム(症候群)に該当しないと批判した。

日本の現状

現在、日本の離婚件数は年間約25万件にものぼり、うち約16万組に未成年の子がいる。しかし日本は、離婚後共同親権・離婚後共同監護を認めておらず[要出典]、離婚に際してどちらか一方の親が親権者となる単独親権制度を採用しているため、子の争奪を巡って夫婦間で争いが繰り広げられるケースが多い[12][13]

片親引き離しの影響

片親引き離しは、子供に次のような影響を与える。

片親だけで育てられた子供は、精神的な問題を起こしやすい
片親だけで育てられた子供は、学業成績不良、睡眠障害、抑うつ症状、自殺企図、違法行為、風紀の乱れ、薬物依存などの問題を起こしやすい。バージニア大学のヘザリントン教授は、離婚が子供に及ぼす影響について研究したが、「片親だけで育てられた子供は、精神的トラブルが2倍になる[14]」と述べた(ここでは触れられていないが、再婚家庭においても同様の問題が起きやすい事が指摘されている。詳しくは下記を参照)。
子供の発達・発育に不利になる
ケンブリッジ大学のMichael Lamb 教授は、「片親と子供の分離が子供に不利にならないようにするためには、時間をうまく配分したとしても、片親と過ごす時間が子供の時間の30~35%以上あることが必要である」と述べた。
父親の役割を果たせなくなる
父親の役割と、母親の役割は、共通の部分もあるが、異なる部分もある。父親は、子供が成長して迎え入れられる社会について、子供に教え準備をさせる。父親は、子供の独立を促す。また規律、ルール、労働、責任、協力、競争などについて、子供に教える [15][16][17]。母親だけで子供を育てると、特に男の子の教育において、これらの点について訓練や準備が充分には行われず、こうした点が不得意な大人になる[18][19]
同居親との関係もうまく行かなくなる
別居や離婚が子供の思春期以後に起きた場合には、子供から片親が引き離されると、子供は同居親からも精神的に離れていく事が多い。同居親とあまり話さなくなったり、自室に引きこもったりする事が多くなる。同居親に新しい交際相手ができて性的活動が行われるようになると、この傾向は一層顕著になる[20]

  1. ^ Parental Alienation, DSM-5, and ICD-11: Response to Critics
  2. ^ PAS
  3. ^ Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse
  4. ^ Parental Child Abduction is Child Abuse
  5. ^ Parental Kidnapping: Prevention and Remedies Hoff著、アメリカ弁護士協会、2000年
  6. ^ 米国政府文書
  7. ^ The Crime of Family Abduction 米国法務省の文書
  8. ^ Fortin, Jane (2003). Children's Rights and the Developing Law. Cambridge University Press. pp. 263. ISBN 9780521606486 
  9. ^ Bainham, Andrew (2005). Children: The Modern Law. Jordans. pp. 161. ISBN 9780853089391 
  10. ^ Hoult, JA (2006). “The Evidentiary Admissibility of Parental Alienation Syndrome: Science, Law, and Policy”. Children's Legal Rights Journal 26 (1). http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=910267. 
  11. ^ Parental Child Abductions Victims of Violence - カナダ政府が出資している機関
  12. ^ NHK解説委員室 視点・論点「会えないパパ 会えないママ」2009年03月19日 (木)
  13. ^ 「親権」と「親」の乖離:後藤富士子
  14. ^ ISBN 0393324133 For Better or for Worce, Hetherington
  15. ^ The Role of the Father
  16. ^ Biology of Dads BBCドキュメンタリー番組
  17. ^ 人間関係「父親が子どもの発達に与える影響」第2節 p37-39 著:谷田貝公昭
  18. ^ The Importance of Fathers in the Healthy Development of Children 米国政府文書
  19. ^ Fathers' impact on their children's learning and achievement Fatherhood Institute
  20. ^ ISBN 1886230846 Parenting after Divorce, P70


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