熱力学温度 性質

熱力学温度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/28 08:47 UTC 版)

性質

熱力学温度は平衡熱力学における基本的要請を満たすように定義される示強変数であり、そのような温度は一つに限らない。

熱力学温度が持つ基本的な性質の一つとして普遍性がある。具体的な物質の熱膨張などを基準として定められる温度は、選んだ物質に固有の性質をその定義に含んでしまい、特殊な状況を除いて温度の取り扱いが煩雑になる。熱力学温度はシャルルの法則熱力学第二法則のような物質固有の性質に依存しない法則に基づいて定められるため、物質の選択にまつわる困難を避けることができる。

熱力学温度が持つもう一つの基本的な性質として、下限の存在が挙げられる。熱力学温度の下限は実現可能な熱力学的平衡状態[注 2]を決定する。この熱力学温度の下限は絶対零度と呼ばれる。

負の温度について

熱力学では温度には下限があり、それを絶対零度と呼ぶが、統計力学では「絶対零度を下回る」温度として負温度が導入することがある。ただし、負温度は熱力学や平衡統計力学の意味での温度とは異なる概念である。熱力学で用いられる通常の温度は平衡状態の系を特徴づける物理量だが、負温度は反転分布の実現するような非平衡系や系のエネルギーに上限が存在するような特殊な系を特徴づける量である。負温度はある種の非平衡系に対してカノニカル分布を拡張した際に、この分布に対する逆温度の逆数(をボルツマン定数で割ったもの)として定義され、負の値をとる。すなわち、負の逆温度 β < 0 に対し負温度 T

という関係が成り立つように定められる。

この関係は通常の(正の)温度と逆温度の関係をそのまま非平衡系に対して適用したものとなっている。しかしながらその元となる逆温度と温度の対応関係は、統計力学で定義される諸々の熱力学ポテンシャルが熱力学で定義されたものと(漸近的に)一致するという要請から導かれるものであり、負温度が実現する系において同様の関係が成り立つと考える必然性はない。


  1. ^ 熱力学的温度(ねつりきがくてきおんど)とも呼ばれる。
  2. ^ 熱力学や統計力学に関する文献では単に平衡状態と呼ばれることが多い。
  1. ^ 田崎 2000, pp. 51–52, §3-7 圧力と状態方程式.
  2. ^ 久保 1961.


「熱力学温度」の続きの解説一覧




熱力学温度と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「熱力学温度」の関連用語

熱力学温度のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



熱力学温度のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの熱力学温度 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS