湧玉池 湧玉池の概要

湧玉池

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/17 09:50 UTC 版)

概要

湧玉池

昭和19年(1944年)11月に国の天然記念物に指定され、昭和27年(1952年)には特別天然記念物に指定された[1]。湧玉池の水源は富士山伏流水であり[2]、年間を通してほとんど増減なく毎日約30万t湧き出ており、水温は1年を通して13℃前後で安定している[3]。一級河川神田川は、湧玉池を水源としている。

池の水源がある境内北の丘陵地[4]に末社である水屋神社が位置し、近辺には水汲み場が存在している。また池周辺には他に末社として厳島神社や稲荷神社が位置する。

歴史

湧玉池は古くは上池と下池に分けて呼称されており、以前は上池のみを湧玉池と言い、下池から下流は「御手洗川」と呼んでいた[5]。湧玉池は多くの歌人に歌われており、和歌には「御手洗川」と歌うものも多い。

詞書:駿河にふじといふ所の池には 色々なるたまなんわくといふ それにりんじの祭しける日よみてうたはする
歌:つかふべき かずにをとらむ 浅間なる みたらし河の そこにわく玉 — 平兼盛、『兼盛集』
詞書:するがのくにに神拝し侍けるに、ふじの宮によみてたてまつりける
歌:ちはやぶる 神世のつきのさえぬれば みたらしがはも にごらざりけり — 北条泰時、『新勅撰和歌集

また飛鳥井雅有『春の深山路』の弘安3年(1280年)11月24日条に「潤川、これは浅間大明神宝殿の下より出でたる御手洗の末とかや」とあり、実際に湧玉池の水は潤井川へ合流している。

湧玉池は古来より富士登拝の道者による禊の場とされ、富士参詣曼荼羅図にも湧玉池にて道者が禊をする様子が図示されている。絹本著色富士曼荼羅図(国の重要文化財)をはじめとして、現存する表口を描いた富士参詣曼荼羅図にそれぞれ確認されている[6][7][8]

また慶長13年(1608年)の『寺辺明鏡集』という史料に「大宮ト言処ニトマルナリ 先ソコ[注釈 1]ニテコリ[注釈 2]ヲトル コリノ代六文出シテ大宮殿ヘ参也」とあり、当時登拝の際に湧玉池にて垢離をとっていた風習が史料にて示されている[9]

環境保全

湧玉池は外来の藻が大量発生する等により土着のバイカモ等の生長が危機的状況にあるとされ、定期的な外来種の除去や清掃等が必要とされており、平成20年には、それらの作業を長年行ってきたとされる浅間大社青年会が環境省から「水・土壌環境保全功労者表彰」を受けた[10]

また、同年に湧玉池と神田川が環境省により「平成の名水百選」に認定された[11]ことから、富士宮市では、毎年1回6月上旬に環境美化や自然保護を目的とし外来種の除去等も行う「湧玉池・神田川一斉清掃」を実施するようになり、上記の浅間大社青年会等が参加している[12]

所在地・アクセス


注釈

  1. ^ 湧玉池のこと
  2. ^ 垢離のこと

出典

  1. ^ 文化庁・環境省・林野庁・山梨県・静岡県『包括的保存管理計画(分冊1)』 (PDF)
  2. ^ 「社殿・境内」(「富士山本宮浅間大社」公式ホームページ)
  3. ^ 「静岡県/富士エリア」(静岡県ホームページ)
  4. ^ 文化庁・環境省・林野庁・山梨県・静岡県『包括的保存管理計画(本冊)』 (PDF)
  5. ^ 富士山本宮浅間大社(富士宮市)
  6. ^ 大高康正、「富士参詣曼荼羅再考―富士山本宮浅間大社所蔵・静岡県指定本を対象に―」『富士山信仰と修験道』、岩田書院、2013年
  7. ^ 大高康正、「富士参詣曼荼羅にみる富士登拝と参詣路 : 新出の常滑市松栄寺本を対象に」『国史学』第221号、2017年
  8. ^ 大高康正、「富士山の参詣曼荼羅を絵解く ─重要文化財指定本と新出松栄寺本」『聚美』18号、聚美社、2016年
  9. ^ 山形隆司、「近世における畿内からの富士参詣とその信仰―大和国を中心に―」『近世民衆宗教と旅』、法藏館書店、2010年
  10. ^ 「平成20年度「水・土壌環境保全功労者表彰」受賞者一覧表」(環境省ホームページ)
  11. ^ 「「平成の名水百選」の発表及び認定書交付式の開催について」(環境省ホームページ)
  12. ^ 「湧玉池・神田川一斉清掃」(富士宮市ホームページ)


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