権三助十 権三助十の概要

権三助十

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/18 10:11 UTC 版)

略歴・概要

「大岡越前」の通称で知られる実在の人物、大岡忠相(1677年 - 1752年)についての伝承・評判の類いを集めた講談、いわゆる「大岡政談』は18世紀ころから発生し始めるが、岡本綺堂によれば、『天一坊』や『村井長庵』、あるいは『髪結新三』『白子屋お熊』のエピソードと異なり、権三(ごんざ)と助十(すけじゅう)の登場する『小間物屋彦兵衛』は、江戸および東京以外では、ほとんど知られていなかったという[1][2]歌舞伎の大舞台で『権三助十』を上演したのは、岡本の知る限りでは、1897年(明治30年)5月、東京市本郷区(現在の東京都文京区本郷)の春木座(後の本郷座)で、三代目片岡我當(のちの十一代目片岡仁左衛門)が「権三」を演じたのが最初だという[1]。そのときの配役は以下の通り。

  • 三代目片岡我當 - 駕籠かき権三/彦兵衛の女房おとく/大岡越前守(三役)
  • 二代目片岡當十郎 - 駕籠かき助十
  • 五代目嵐徳三郎(のちの五代目嵐璃寛) - 小間物屋彦兵衛
  • 十三代目中村勘五郎(のちの四代目中村仲蔵) - 左官勘太郎

講談本の類いでは、国立国会図書館蔵書にみる限りでは、菅谷與吉の「日吉堂」が出版した『大岡政談 小間物屋彦兵衛伝』(1887年)をはじめとして、1880年代に多く出版された『小間物屋彦兵衛』の一挿話に収まっている[3]。岡本綺堂が書いた戯曲『権三と助十』は、1926年(大正15年)に初演された[2]

『権三助十』の最初の映画化は、岡本より早く、1923年(大正12年)8月1日に公開された、マキノ映画製作所製作・配給、後藤秋声(のちの後藤昌信)が監督した『権三と助十』で、市川幡谷が大岡越前守、片岡松太郎が権三、片岡市太郎が助十をそれぞれ演じた[4]。同作の脚本家は記録にないが、多くの映画化が、講談を下敷きに、オリジナルシナリオを標榜して製作されており、岡本綺堂の戯曲を原作にしたものは、わずか伊丹万作が監督した『権三と助十』(1937年)のみである[5]

これらの映画は、比較的新しい一部を除き、2013年(平成25年)1月現在、東京国立近代美術館フィルムセンターも、マツダ映画社も、本作の上映用プリントを所蔵しておらず、現存していないとみなされるフィルムである[6][7]

映画化

  • 権三と助十 - 講談を下敷きにした1923年の映画。
  • 権三と助十 - 講談を下敷きにした1926年の映画。
  • 権三助十 - 講談を下敷きにした1932年の映画。
  • かごや判官 - 講談を下敷きにした1935年の映画。
  • 権三助十 捕物大騒動 - 講談を下敷きにした1936年の映画。
  • 権三助十 鶴一番大当り - 講談を下敷きにした1938年2月公開の映画。
  • 権三助十 天狗退治 - 講談を下敷きにした1938年7月公開の映画。
  • 初笑ひかごや判官 - 講談を下敷きにした1939年の映画。
  • 権三と助十 - 講談を下敷きにした1940年の映画。
  • 権三と助十 かごや太平記 - 講談を下敷きにした1956年の映画。
  • 浪曲権三と助十 ゆうれい駕籠 - 講談を下敷きにした浪曲版の1960年の映画。
  • 浪曲権三と助十 呪いの置手紙 - 上記映画の続篇としての1960年の映画。
  • サラリーマン権三と助十 - 講談・戯曲のパロディとしての1962年の映画。
  • サラリーマン権三と助十 恋愛交叉点 - 上記映画の続篇としての1962年の映画。

  1. ^ a b c d e 岡本[1956], p.349-354.
  2. ^ a b c 世界大百科事典『《権三と助十》』 - コトバンク、2013年1月11日閲覧。
  3. ^ 権三助十国立国会図書館、2013年1月11日閲覧。
  4. ^ a b c 権三と助十(1923年) - 日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  5. ^ 岡本綺堂 - 日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i 所蔵映画フィルム検索システム東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i 主な所蔵リスト 劇映画 邦画篇マツダ映画社、2013年1月11日閲覧。
  8. ^ 権三と助十(1926年)、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  9. ^ 権三と助十(1926年)、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  10. ^ 権三助十、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  11. ^ a b かごや判官、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  12. ^ a b c かごや判官、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  13. ^ a b c かごや判官、東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月11日閲覧。
  14. ^ 権三助十 捕物大騒動、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  15. ^ 権三助十 捕物大騒動、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  16. ^ 権三助十 鶴一番大当り、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  17. ^ 権三助十 鶴一番大当り、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  18. ^ a b 権三助十 天狗退治、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  19. ^ a b c 権三助十 天狗退治、東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月11日閲覧。
  20. ^ 初笑ひかごや判官、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  21. ^ 初笑ひかごや判官、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  22. ^ a b 権三と助十(1940年)、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  23. ^ a b 権三と助十(1940年)、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。
  24. ^ 権三と助十 かごや太平記(1940年)、日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  25. ^ 権三と助十 かごや太平記(1940年)、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月11日閲覧。





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