東京都交通局12-600形電車
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3次車
2018年度からは大江戸線の混雑緩和と輸送力増強のため、2次車をベースに主要機器の変更を行った3次車の導入を開始した[18]。外観デザインは「多様な人々を受け入れる、人にやさしい車両」をコンセプトとした[18]。3次車は第69編成(12-691 - 12-698)以降が該当。車両価格は2018年度車(第69 - 71編成)の3編成で「47億6,200万円」(消費税抜・1編成あたり 約15億8,733万円)であり[19]、2次車よりも1.5倍以上高くなっている。
カラーリングは、先頭車前頭部にマゼンタ色を使用し、車体側面の戸袋部にもマゼンタ色を配色[20]することで、大江戸線のラインカラーを強調したデザインとした[18]。前面の前照灯・尾灯は下部にコンビネーション化して配置することで、新しいイメージとした[18]。
- 内装
客室内は1・2次車と同じ白色系を基本としながら、妻面壁にはアイボリー色を採用した[18]。床敷物は藤色から、グレーの単色に変更した。座席は1人当たりの座席掛け幅を460mmから475mmへ拡大[21]、このために妻面窓を廃止した[18]。車内に開放感を持たせるため袖仕切、連結面貫通扉には強化ガラス入りを採用したほか、大江戸線の路線名から菱格子という江戸小紋柄を袖仕切ガラス、連結面貫通扉、座席表地に配した[18]。座席表地には龍村美術織物製のものが使用されている[22]。
乗客へのサービス向上のため、各車両に車内Wi-Fi端末設備と空気清浄機を設置、セキュリティ対策として各車4台防犯カメラを設置した[18]。従来からの車椅子スペース(4・5号車設置)に加えて、それ以外の車両にベビーカーなどに配慮した「フリースペース」を設置し、2段式の手すりを設けている[18][23]。このほか、車内放送用スピーカーの増設、空調ダクトの改良・大型化、つり革の増設(1両あたり10個)などが行われている[18]。冷房装置については変更ないが、客室の暖房装置は1年を通して使用する機会がないことから、準備工事のみとした[24][25]。車内案内表示器については、2次車から変更していない[18]。
乗務員室は速度計、圧力計、表示灯類を廃し、これらを液晶モニターに集約表示をするグラスコックピットを採用した[24]。マスコンハンドルは、小型ワンハンドル式からL形ワンハンドル式に改良し、操作性を向上させた[24]。
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車内(3次車)
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優先席(3次車)
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車内案内表示器(3次車)
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17インチ液晶表示器(チカッ都ビジョン)
- 走行機器など
制御装置は小型軽量化を図った日立製作所製SiC(シリコンカーバイト)ハイブリッドモジュール素子を使用したVVVFインバータ制御を採用した[24]。主電動機(リニアモータ)、補助電源装置、台車などの主要機器は基本的に1・2次車と同一としているが、空気圧縮機(CP)は、レシプロ式から潤滑油が不要なオイルフリースクロール式(1台のCPに小型コンプレッサーを4台内蔵)に変更した[24]。
列車情報制御装置(ATI)は基幹伝送路をメタル線伝送方式から高速伝送機能を有するイーサネットケーブルを採用した[24]。イーサネットを採用することで、車両間の伝送速度は100 Mbpsへ大幅に向上した[26]。イーサネットの大容量データ伝送機能を活かし、編成全体で一括した力行・回生ブレーキのトルク制御の実現(編成制御機能)、運転台へのメーター表示機能、故障時における記録機能を大幅に拡張した[26]。また、ATIモニター画面から個々のパンタグラフを上昇させる「個別パンタ上げ機能」を追加した[24][26]。
- ^ a b 交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2012年4月号DJ NEWS FILE「東京都交通局12-600形(大江戸線)」参照
- ^ PHP研究所「都営地下鉄・都電・都バスのひみつ」
- ^ a b c d e f g h i j 日本鉄道運転協会「運転協会誌」2012年1月号新型車両プロフィールガイド「東京都交通局 大江戸線12-600形車両の概要」参照。
- ^ a b c ネコ・パブリッシング「レイルマガジン」2012年5月号NEW COMER「大江戸線12-600形車両の概要について」記事。
- ^ 都営大江戸線向け12-600形が甲種輸送される アーカイブ 2020年12月2日 - ウェイバックマシン - railf.jp 鉄道ニュース、2011年8月29日掲載。
- ^ a b c d 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2012年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2012年版「東京都交通局12-600形」152-153頁記事。
- ^ a b c d e f g h i 交友社「鉄道ファン」新車ガイド「東京都交通局12-600形」50-52頁記事。
- ^ a b c d 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2012年6月号New model「東京都交通局12-600形」記事。
- ^ a b c d e f g 日本地下鉄協会「SUBWAY」No.194車両紹介「東京都交通局大江戸線12-600形車両」記事。
- ^ a b c d e f g 交友社「鉄道ファン」新車ガイド「東京都交通局12-600形」53-54頁記事。
- ^ 東洋電機製造「東洋電機技報」No.125(2012年3月)「東京都交通局12-600形車両用低圧電源装置」 (PDF) (インターネットアーカイブ)。
- ^ 馬込車両検修場では、車両の在場日数を減らすために台車やパンタグラフなど一部機器については整備済みの予備品(リンク品)を用意している。入場車両の整備対象機器はリンク品へと交換し、入場車両から取り外した整備対象機器は別途整備の上、次回入場の別な編成に使用される。
- ^ a b c d e f 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2015年7月号研究と開発「都営大江戸線12-600形2次車の概要」24-26頁記事。
- ^ a b 日本鉄道車両工業会「車両技術」250号「東京都交通局 大江戸線 12-600形車両(2次車)」記事。
- ^ a b c d e f g h i j 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2015年7月号研究と開発「都営大江戸線12-600形2次車の概要」27-28頁記事。
- ^ 東京都交通局『都営交通のあらまし2015』p.30「経営状況」記事。
- ^ 「三菱電機技報」2016年01月号「横長LCD表示器 アーカイブ 2016年10月11日 - ウェイバックマシン
- ^ a b c d e f g h i j k 日本鉄道車輌工業会「車両技術」258号(2019年9月)「東京都交通局 大江戸線12-600形車両(3次車)」35-44頁記事。
- ^ 東京都交通局『都営交通のあらまし2019』p.30「経営状況」記事。
- ^ 乗客への案内用に戸袋部には大江戸線の路線マーク「E」を表記している。
- ^ このため、座席定員を4・7・7・4人掛けから3・6・6・3人掛けに変更した。
- ^ 「産業資材」 - 龍村美術織物HP(インターネットアーカイブ)。
- ^ 車椅子スペースとフリースペースの違いは、車椅子固定用ベルトの有無のみである。東京都交通局の資料では、両者を区別して記載している。
- ^ a b c d e f g 日本鉄道車輌工業会「車両技術」258号(2019年9月)「東京都交通局 大江戸線12-600形車両(3次車)」45-57P記事。
- ^ 乗務員室内の800Wファンヒーターは存置されている。
- ^ a b c 日本鉄道サイバネティクス協議会「鉄道サイバネ・シンポジウム論文集」第56回(2019年)「東京都交通局12⁻600形3次車ATIの開発」論文番号508。
- ^ 東京都交通局向けリニア式地下鉄車両を受注 アーカイブ 2020年6月5日 - ウェイバックマシン - 川崎重工ニュースリリース 2016年5月26日掲載
- ^ 東京都交通局経営計画2019 アーカイブ 2020年5月14日 - ウェイバックマシン - 東京都交通局 2019年1月26日発表
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