景気循環 日本における景気循環

景気循環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 05:20 UTC 版)

日本における景気循環

内閣府による定義

日本の場合、景気の判断および景気循環(景気基準日付)の判定は、内閣府が発表している景気動向指数・景気合成指数(DI・CI)を用いて景気の局面を判断するのが一般的である。景気動向指数には、先行(景気に先行して動く指標)、一致(景気に一致して動く指標)、遅行(景気より遅れて動く指標)の3系列が存在する。

内閣府が発表している日本の景気循環は2局面分割であり、山、谷の時期(景気基準日付)は山や谷を過ぎてからかなりの時間が経過しないと確定しない。このため現時点で景気が拡張(拡大)局面にあるのか後退局面にあるのかという政府の公式判断は、内閣府が月例経済報告等に関する関係閣僚会議に報告している、月例経済報告による。

景気動向指数は、1950年に、H・L・ムーア(アメリカの統計経済学者)によって作成されているため、それ以前の記録はなく、日本においていつから統計をとっていたかは明らかにしていない[9][10]。そのため、景気基準日付の第一循環の谷は決まっていない[11][12]

景気基準日付の拡張(拡大)期間や後退期間の景気・不況の名称は、主にメディアや民間企業の経済研究所、経済学者、経済評論家などで名づけられて用いられているため通称または俗称、ニックネームだが、政府や日銀、都道府県などでも資料で景気・不況の名称を表記する場合がある。また、ごく一部でしか使用されていない景気・不況の名称もある。出典が明記されていない景気・不況の名称は、出典が見つかっていない景気・不況の名称であるので取り扱いに注意が必要である。

内閣府による景気基準日付[13]
循環
(全期間)
拡張期間 後退期間 拡張期間
(景気の名称[注 2][注 3]
後退期間
(不況の名称[注 4][注 5]
第1循環 1951年6月

(昭和26年6月)

4か月 1951年10月

(昭和26年10月)

特需景気[14] 反動不況[15]
第2循環
(37か月)
1951年10月

(昭和26年10月)

27か月 1954年1月

(昭和29年1月)

10か月 1954年11月

(昭和29年11月)

投資景気[16] 昭和29年不況[14]
第3循環
(43か月)
1954年11月

(昭和29年11月)

31か月 1957年6月

(昭和32年6月)

12か月 1958年6月

(昭和33年6月)

神武景気[17] なべ底不況[14]
第4循環
(52か月)
1958年6月

(昭和33年6月)

42か月 1961年12月

(昭和36年12月)

10か月 1962年10月

(昭和37年10月)

岩戸景気[14] 転換型不況[16]
第5循環
(36か月)
1962年10月

(昭和37年10月)

24か月 1964年10月

(昭和39年10月)

12か月 1965年10月

(昭和40年10月)

オリンピック景気[14] 証券不況[14]
第6循環
(74か月)
1965年10月

(昭和40年10月)

57か月 1970年7月

(昭和45年7月)

17か月 1971年12月

(昭和46年12月)

いざなぎ景気[14] ニクソン不況[14]
第7循環
(39か月)
1971年12月

(昭和46年12月)

23か月 1973年11月

(昭和48年11月)

16か月 1975年3月

(昭和50年3月)

列島改造景気[14] 第1次石油不況[17]
第8循環
(31か月)
1975年3月

(昭和50年3月)

22か月 1977年1月

(昭和52年1月)

9か月 1977年10月

(昭和52年10月)

安定成長景気[14] 円高不況[15]
第9循環
(64か月)
1977年10月

(昭和52年10月)

28か月 1980年2月

(昭和55年2月)

36か月 1983年2月

(昭和58年2月)

公共投資景気[14] 第2次石油不況[17]
第10循環
(45か月)
1983年2月

(昭和58年2月)

28か月 1985年6月

(昭和60年6月)

17か月 1986年11月

(昭和61年11月)

ハイテク景気[14] 円高不況[14]
第11循環
(83か月)
1986年11月

(昭和61年11月)

51か月 1991年2月

(平成3年2月)

32か月 1993年10月

(平成5年10月)

バブル景気[14] 複合不況[16]
第12循環
(63か月)
1993年10月

(平成5年10月)

43か月 1997年5月

(平成9年5月)

20か月 1999年1月

(平成11年1月)

カンフル景気[14] 日本列島総不況[16]
第13循環
(36か月)
1999年1月

(平成11年1月)

22か月 2000年11月

(平成12年11月)

14か月 2002年1月

(平成14年1月)

IT景気[14] デフレ不況[16]
第14循環
(86か月)
2002年1月

(平成14年1月)

73か月 2008年2月

(平成20年2月)

13か月 2009年3月

(平成21年3月)

いざなみ景気[14] リーマン不況[15]
第15循環
(44か月)
2009年3月

(平成21年3月)

36か月 2012年3月

(平成24年3月)

8か月 2012年11月

(平成24年11月)

エコ景気[14] 円高不況[14]
第16循環
(90か月)
2012年11月

(平成24年11月)

71か月 2018年10月

(平成30年10月)

19か月 2020年5月

(令和2年5月)

アベノミクス景気[14] コロナ不況[14]

一時的な景気変動

東日本大震災(2011年3月):第15循環の拡張期間中に発生。一時的に経済活動が低下して景気が悪化した。ただし、経済の大半の部門に持続的に波及する景気後退面には該当しないものと評価され、拡張期間を維持した[18]

2020年(令和2年)5月からの景気動向指数

内閣府による景気基準日付で設定された2020年(令和2年)5月からの景気動向指数(CI一致指数)を示す。値は2020年(令和2年)の100とした時の値である。

内閣府による景気動向指数[19]
年月 指数
CI一致指数
2020年(令和2年)5月 87.2
6月 90.6
7月 94.5
8月 96.1
9月 99.0
10月 103.4
11月 103.5
12月 103.9
2021年(令和3年)1月 106.3
2月 105.8
3月 108.4
4月 110.8
5月 109.0
6月 110.0
7月 109.2
8月 106.8
9月 104.8
10月 106.9
11月 111.6
12月 111.8
2022年(令和4年)1月 110.9
2月 111.2
3月 111.5
4月 111.8
5月 111.1
6月 113.4
7月 113.7
8月 115.0
9月 114.5
10月 114.0
11月 113.7
12月 113.4
2023年(令和5年)1月 111.5
2月 114.2
3月 114.2
4月 114.4
5月 114.7
6月 115.6
7月 114.2
8月 114.6
9月 114.7
10月 115.9
11月 114.6
12月 115.9
2024年(令和6年)1月 112.1
2月(速報) 110.9

注釈

  1. ^ 技術を進歩させる変数として何を考えるかは立場が分かれている。内生的な経済変数によって説明する立場は、労働や設備の不足や景気の過熱を懸念した投資意欲の減退などを変数とする。外性的な経済変数によって説明する立場は、予想外の技術革新、天候の変化、石油危機などを変数とする。
  2. ^ 景気の名称は通称や俗称、ニックネームで他にも景気の名称はある。
  3. ^ 内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、「第○循環拡張局面」と呼称されている。
  4. ^ 不況の名称は通称や俗称、ニックネームで他にも不況の名称はある。
  5. ^ 内閣府経済社会総合研究所景気統計部では、「第○循環後退局面」と呼称されている。

出典

  1. ^ 景気動向指数の見方、使い方 第1章 景気変動をどうとらえるのか (1) 景気変動”. 内閣府. 2011年4月29日閲覧。
  2. ^ 景気動向指数研究会 平成20年 6月27日 議事概要”. 2011年8月18日閲覧。
  3. ^ 景気動向指数研究会 平成21年 1月29日 議事概要”. 2011年8月18日閲覧。
  4. ^ 森一夫、杉野真紀「景気の4局面分割への試論 景気対策の発動のシグナルの開発」『経済学論叢』第52巻第4号、同志社大学、2001年、408-425頁、2020年3月15日閲覧 
  5. ^ a b 岩田規久男 『景気ってなんだろう』 筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉、2008年、16頁。
  6. ^ [1] Archived 2014年1月25日, at the Wayback Machine. 「景気循環」の英語版en:Business cycleから翻訳
  7. ^ 大和証券 金融・証券用語解説 [コンドラチェフ波動]
  8. ^ 小峰隆夫 『ビジュアル 日本経済の基本』 日本経済新聞社・第4版〈日経文庫ビジュアル〉、2010年、14頁。
  9. ^ (参考)景気動向指数採用系列の変遷(PDF形式:30KB)統計は1960年から公開されている。
  10. ^ (参考) 第15循環の景気の谷の暫定設定について(PDF形式:205KB)第一循環の山を1951年6月と設定しているため、少なくともそれ以前から統計はとられていたと考えられる。
  11. ^ 日本の戦後景気循環過程1949年10月が第一循環の谷だと主張する人(1949年当時の日本は、アメリカ主導の連合国軍占領下であった為、アメリカの景気基準日付を参考にしていた可能性もある)もおり、景気動向指数ができる前の可能性がある。
  12. ^ 日本の景気循環1950年5月が第一循環の谷だと主張する内閣府の一部の人もいる。
  13. ^ 景気基準日付”. 内閣府. 2020年10月11日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 日経平均株価超長期月足チャート”. BaseViews. 2022年6月15日閲覧。
  15. ^ a b c 日本における景気循環の歴史!好景気と不景気の種類31選”. 株式会社日本廣告工藝社. 2023年12月9日閲覧。
  16. ^ a b c d e 景気基準日付(全国・愛知県)”. 愛知県. 2023年12月9日閲覧。
  17. ^ a b c 在庫循環の基準日付”. 千葉大学. 2024年2月11日閲覧。
  18. ^ 第14回景気動向指数研究会 景気基準日付について”. 2021年6月26日閲覧。
  19. ^ 統計表一覧:景気動向指数 結果
  20. ^ 景気指標と実感、ズレがあるときは要注意”. 2011年8月21日閲覧。






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