明暦の大火 状況

明暦の大火

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 00:29 UTC 版)

状況

明暦の大火の焼失地域。①は1月18日の出火地点・本郷丸山本妙寺、②は1月19日の出火地点・小石川伝通院表門下、③は1月19日の出火地点・麹町。

この火災の特記すべき点は火元が1か所ではなく、本郷小石川麹町の3か所から連続的に発生したもので、ひとつ目の火災が終息しようとしているところへ次の火災が発生し、結果的に江戸市街の6割、家康開府以来から続く古い密集した市街地においてはその全てが、焼き尽くされたことである。

このことは、のちに語られる2つの放火説の有力な根拠のひとつとなっている。

記録

むさしあぶみ』より、明暦の大火当時の浅草門。牢獄から解放された罪人達を「集団脱走している」と誤解した役人が閉門したので逃げ場を失った多数の避難民が炎に巻かれ、を乗り越えた末に堀に落ちていく状況。

当時の様子を記録した『むさしあぶみ』は、火災発生の当時について

扨も明暦三年丁酉正月十八日辰刻ばかりのことなるに、乾のかたより風吹出ししきりに大風となり、ちりほこりを中天に吹上て空にたまひきわたる有さま、雲かあらぬか煙のうずまくか、春のかすミのたな引かとあやしむほどに、江戸中の貴賤門戸をひらきえず、夜は明ながらまだくらやミのごとく、人の往来もさらになし
去年霜月の比より今日に至る迄、既に八十日ばかり雨一滴もふらで

としており、火事の様相を

さしもに深き浅草の堀死人にてうづみけり、その数二万三千余人、三町四方にかさなりて、堀はさながら平地になる

のちのちにとぶ者ハ前の死骸をふまへて飛ゆへに、その身すこしもいたまずして河向ひにうちあがり助かるものおほかりけり、とかくする間に重々にかまへたる見付の矢倉に猛火燃えかかり大地にひびきてどうと崩れ死人の上に落かゝる、さて人にせかれ、車にさへぎられていまだ跡に逃おくれたるものどもハむかふへすすまんとすれバ前にハ火すでにまハり、後によりハ火のこ雨のごとくにふりかゝる、諸人声々に念仏申事きくにあハれをもほよす間に前後の猛火にとりまかれ、一同にあつとさけぶ

声、上ハ悲愴のいただきにひびき、下ハ金輪[注釈 1]の底迄も聞ゆらんと、身の毛もよだつばかりなり、

などと記録している[6][7][8]

経過

3回の出火の経過は以下のようであったと考えられている。

  1. 1月18日未の刻(14時ごろ)、本郷丸山の本妙寺より出火。神田京橋方面に燃え広がり、隅田川対岸にまで及ぶ。霊巌寺で炎に追い詰められた1万人近くの避難民が死亡、浅草橋では脱獄の誤報を信じた役人が門を閉ざしたことで逃げ場を失った2万人以上が死亡。
  2. 1月19日巳の刻(10時ごろ)、小石川伝通院表門下、新鷹匠町の大番衆与力の宿所より出火。飯田橋から九段一帯に延焼し、江戸城は天守を含む大半が焼失。
  3. 1月19日申の刻(16時ごろ)、麹町5丁目の在家より出火。南東方面へ延焼し、新橋の海岸に至って鎮火。

注釈

  1. ^ 仏教の世界観では、大地の底に人間界を支える金輪があるという。「金輪際」の語源

出典

  1. ^ a b 森下・山﨑(2013)、3-5頁。
  2. ^ a b 森下・山﨑(2013)、5・6頁。
  3. ^ 近世史料研究会編:『江戸町触集成』第4巻,塙書房,1994。
  4. ^ 東京市役所編纂『東京市史稿市街篇』第7巻。
  5. ^ 近世史料研究会編:『江戸町触集成』第1巻・第4巻,塙書房,1994.
  6. ^ 『むさしあぶみ-明暦の大火(振袖火事) (東日本橋 初音森神社彌宜 田部幸裕編)』初音森神社にて頒布。 
  7. ^ むさしあぶみ_翻刻”. 大船庵. 2023年4月3日閲覧。
  8. ^ 東京市 (1924年). “むさしあぶみ”. dl.ndl.go.jp. 明暦安政及大正の難. 国立国会図書館デジタルコレクション. 2023年4月3日閲覧。
  9. ^ [1]
  10. ^ 『歴史への招待8』、205-206,233頁
  11. ^ 間瀬久美子「近世朝廷と寺社の祈祷」(初出:『千葉経済論叢』58号、2018年/所収:間瀬『近世朝廷の権威と寺社・民衆』吉川弘文館、2022年)2022年、P172-173.
  12. ^ 浅草〜合羽橋散策コース”. 台東区. 2019年11月24日閲覧。






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