慰安婦の強制連行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 23:15 UTC 版)
強制連行説を巡る議論
- 『慰安婦戦時性暴力の実態1&2』(緑風出版)によると、中国やフィリピン、インドネシアなど占領地域では暴力的な方法による強制連行との証言が多い[121] [要ページ番号]。
- 小林よしのりは、吉見義明をはじめとする慰安婦制度批判派が、旧日本軍による強制連行を批判してきたのに、証拠が無いとわかっても自説の訂正や謝罪はせず、「広義の強制性」を持ち出してきたことを「論点のすり替え」だとして批判している[122]。
- 秦郁彦は実質的に強制であるかどうかではなくて、物理的な強制連行の有無が問題だとし、「そうしないと、ある世代の全員が『強制連行』になりかねない。」と吉見義明の「広義の強制性」論に異議を唱えている[123]。また、「強制連行」については、志願者が多数いたので「強制連行」する必要性はなかったとし、「強制連行」されたという証言は元慰安婦の証言のみで、第三者の目撃証言はこれまで一切なく、2000年の女性国際戦犯法廷においても60数人の元慰安婦の来歴には誰が慰安所に強制連行したかの記載がないことについて「連行事情が食いちがってはまずいと考えたのか、女性国際戦犯法廷の報告書は参加被害者の略歴欄から誰が騙したか、連行したかの主語を削り落してしまったと指摘している[124]。
- 慰安婦に関する調査を実施した平林博・内閣外政審議室室長や石原信雄官房副長官は、政府の調査おいて、軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような証拠も証言もなかったと国会答弁[125][126]や新聞[127]、雑誌[10]等のインタビューにおいて語っている。
- フィリピンのアンヘレス市に当時いたダニエル・H・ディソンは、日本兵用の売春宿は存在したが、一般に強制性はなかったと目撃証言している[128]。
- 1991年当時NHK職員だった池田信夫は番組制作のため、韓国で数十人の強制連行されたという関係者に取材したが、軍が連行したという証言は得られなかったという[129]。
- 林博史は日本軍による慰安婦の「強制狩り出し」はハーグ陸戦条約43条および46条への違反であり、日本が植民地化していた朝鮮半島及び台湾、占領した中国、フィリピン、インドネシアなどでの「未成年者の強制連行」について婦人児童売買を禁止する国際条約違反であり、また朝鮮半島における就業詐欺や騙しによる慰安婦の徴集を戦前日本の刑法226条に違反する誘拐事件であると主張している[130]。また、朝鮮半島での慰安婦業者は就業詐欺行為を行っていたが、警察と軍はそれを黙認し、「軍と共謀して慰安婦集めも組織した」。また警察文書に「内密に」「何処迄も経営者の自発的希望に基く様取運」ように指示している事から[131]、「軍と警察が共謀して慰安婦を集めているが、それがばれると困るので、業者が勝手にやっているような振りをした」のだと解釈している[132]。ゆえに慰安婦制度は、「国家による大規模な犯罪」であり、それは現在の人権の水準に照らしてそうであるだけではなく、「当時の国際法に照らしても国内法に照らしても犯罪だ」と述べている[133]。
- 2006年9月13日に米上院外交委員会に提出された日本軍慰安婦問題に関し日本政府に謝罪を求める決議案 (H.Res.759) は「日本政府は性奴隷にする目的で慰安婦を組織的に誘拐、隷属させた」とし可決され[134]、2007年1月31日に提出されたアメリカ合衆国下院121号決議案も「日本政府は帝国軍への性行為という唯一の目的のために若い女性を職務として連行した」とし満場一致で採択されている。
注釈
- ^ 日本政府は、数万人分の名簿を韓国政府に提供している。「(朝鮮人強制連行)」参照。
- ^ 終戦後、日本政府は占領軍に慰安所(RAA)を提供したほか、中曽根康弘や岡村寧次は回顧録の中で自ら慰安所を設置したことを明かしていた[7][8](中曽根は、この問題が国際化すると、娯楽施設を作っただけだと釈明した[9])。
- ^ その後の政権交代により、この問題を追及していた野党議員が与党になり入閣を果たすが(福島瑞穂【内閣府特命担当大臣・男女共同参画担当】、千葉景子【法務大臣】、岡崎トミ子【国家公安委員長】など)、日本政府の公式見解が撤回されることはなかった。
吉見義明は現在、「慰安婦の強制連行」は公文書を作らない形で実行されたと説明している[11]。 - ^ 「強制連行#事典類の採録状況と解説」参照。
- ^ 千田以前にも「従軍慰安婦」という呼称を用いた例はある[18]。
- ^ 従軍看護婦は、国に対しては義務を負わなかったが、日赤に対して応召の義務があり、戦時中(半強制的に)戦地へ派遣された。
- ^ 外村大や永井和、秦郁彦から軍の指揮系統や現地の軍の状況と矛盾すると指摘されている[23]:31[24]
- ^ 第三者委員会は、この報道について「首相訪韓の時期を意識し、慰安婦問題が政治課題となるよう企図して記事としたことは明らか」としている[23]:18。
- ^ ただし、欄外で「(従軍慰安婦とは)約八割が朝鮮人女性・・・挺身隊の名で強制連行した」と解説。(1面)
- ^ 2014年に朝日新聞社が、自社の過去の慰安婦報道について検証する為に立ち上げた外部識者による検証委員会[42]
- ^ この前年に歴史学者の秦郁彦が済州島での調査結果を公表したことから、吉田証言の信憑性に疑いが生じていた(詳細は吉田清治 (文筆家)の頁参照)。
- ^ NYTに対して吉見は、慰安婦の強制動員について、こういった類のものは決して公文書には書かれないと説明している(“There are things that are never written in official documents,” he said. “That they were forcibly recruited — that’s the kind of thing that would have never been written in the first place.”)。
- ^ この時のやり取りについて、西岡の著書では「番組では、まず、強制連行があったかなかったか、という話になったのだが、私はすぐ『吉見先生、朝鮮半島で権力による強制連行があったと証明できているのですか』と聞いた」と書かれている[37]:134。
- ^ 初報は7月21日の夕刊
- ^ 日本政府は、一切の関与を否定していたわけではない[77]。
- ^ 『バタビア裁判25号事件』『同106号事件』などのBC級戦犯裁判の記録[83]。
- ^ 神議員の質問に対する政府の答弁書には「御指摘のような記述がされている」とは書かれているが、記述が「慰安婦の強制連行」を意味するものだとは書かれていない[86][87]
- ^ 「軍・官憲による強制連行を直接示す資料は発見されていないとする第一次安倍内閣時の閣議決定(2007)が、『強制』否定の根拠になることはありえません。2014年に入っても、『慰安婦強制』を示す新資料が発見されているのです」(吉見)
- ^ ...these documents are official documents maintained by government of Japan’s Ministry of Justice; however government of Japan has not recognize these documents as related to the issue of so called comfort women.
- ^ 吉見義明は、慰安婦は経済的・精神的に拘束されており、慰安所から逃亡することも困難だったとしている[94]:148,151。
- ^ 慰安所の多くは、民間経営[96]。
- ^ 一連の「狭義の強制性」発言について、首相は以下のように説明している。「この問題の発端として、これはたしか朝日新聞だったと思いますが、吉田清治という人が慰安婦狩りをしたという証言をしたわけでありますが、この証言は全く、後にでっち上げだったことが分かったわけでございます。・・・その後、言わば、このように慰安婦狩りのような強制性、官憲による強制連行的なものがあったということを証明する証言はないということでございます」[107]
- ^ 日本語版タイトル『証言 強制連行された朝鮮人軍慰安婦たち』明石書店 1993年
- ^ 河野談話には、意に反して性行為をさせられたとは書かれていない。
- ^ 婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約が指定する「醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買禁止ニ関スル国際条約」第2条
- ^ その一方で鄭は、日本政府が詐欺などの手法を用い、騒ぎにならぬよう主として下層階級の女性を連行したとも述べている。(同書)
- ^ 挺対協は、こうした女性の存在に言及したり支援団体を表彰したりする事はあるが、それ以上の事はしていない[138]。
- ^ 韓国軍の慰安婦や在韓米軍相手の売春婦の中にも同様の状況で就業させられたケースが存在したとされるが[136][137]、挺対協は大きな問題にはしていない[注釈 27]
出典
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- ^ 吉見義明『日本軍「慰安婦」制度とは何か』岩波書店、2010年、20頁。ISBN 9784002707846。"日本政府・軍の公文書が発見されていないからといって、強制がなかったというのは説得力がないでしょう。・・・自分にとって都合の悪いことや犯罪行為をわざわざ公文書に書いて残しておくでしょうか。"。
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きょう参考人としてお願いをした元山口県労務報国会動員部長の吉田清治さんなどは、本当に非常に具体的な体験を持っていらっしゃるわけです。・・・この従軍慰安婦や強制運行に関する政府所管資料をもっと全面的に調査され・・・全面的に私は公開をしていただきたいと思います
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中学の教科書、七社の教科書すべてにいわゆる従軍慰安婦の記述が載るわけであります。・・・いわゆる従軍慰安婦というもの、この強制という側面がなければ特記する必要はないわけでありますが、この強制性については全くそれを検証する文書が出てきていない・・・明らかにこれは外交的配慮から強制性があったということになってこの官房長官談話につながったのだ、私はこういうふうに思います。
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- 慰安婦の強制連行のページへのリンク