慣性モーメント 定義

慣性モーメント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/31 20:53 UTC 版)

定義

質点系がある回転軸まわりに一様な角速度ベクトル ω回転するとき、質点系の持つ角運動量ベクトル L は次のように書ける。

[1]

ここでmii 番目の質点の質量、ri は回転軸上の原点との相対座標でありriはその大きさである。この式からわかるように、Lω と向きは必ずしも一致しないが、ω線形変換したものになっている。つまり、その線形変換をIとすると、

と表せる。この変換 I は2階のテンソルであり、LIの各成分は

という形に表される[2]。ここに δjkクロネッカーのデルタri, j はベクトル rij 成分である。I を行列表示すると

となる。この定義から I対称テンソルである。この2階のテンソル I慣性モーメントテンソル、または簡単に慣性テンソルと呼ぶ[2]。また、慣性テンソルの対角成分 IxxIyyIzz を(それぞれ xyz 軸に関する)慣性モーメント係数: moment of inertia coefficient)と呼び、 IxyIyzIzx慣性乗積: products of inertia)と呼ぶ[3]

なお、質量分布が連続的に広がっている場合には、その物体の慣性テンソルは密度 ρ を用いて

となる[4]

ある軸まわりの慣性モーメント

物体をある回転軸まわりに回転させたとき、ωと同じ向きをもつ単位ベクトルnをもちいると、回転軸にそった角運動量成分は次のように与えられる。

ここで、ω = |ω|は角速度の大きさである。

ここに与えられたスカラー をその軸まわりの慣性モーメントと呼ぶ[5]

慣性主軸と主慣性モーメント

慣性テンソル行列は実対称行列なので、適当な直交座標系 { e1, e2, e3 } を選ぶことで対角化(すなわち Ixy = Iyz = Izx = 0 と)することができ、そのときの座標軸を慣性主軸、慣性モーメント { I1, I2, I3 } 主慣性モーメントと呼ぶ[6]。慣性主軸座標系では角運動量は

と単純に表すことができる。


  1. ^ (ゴールドシュタイン 1983, p. 248) 式(5-2)
  2. ^ a b (ゴールドシュタイン 1983, p. 254)
  3. ^ (ゴールドシュタイン 1983, p. 249)
  4. ^ (ランダウ & リフシッツ 1986, p. 124)
  5. ^ (ゴールドシュタイン 1983, p. 255) 式 (5-19)
  6. ^ (ランダウ & リフシッツ 1986, pp. 124–125)
  7. ^ a b (戸田 1982, pp. 167–175)
  8. ^ (ランダウ & リフシッツ 1986, pp. 122–124)
  9. ^ 谷腰欣司 『小型モーターのしくみ』 電波新聞社、2004年、24頁。ISBN 4-88554-775-X 
  10. ^ 堀野正俊 『機械力学入門』 理工学社、1990年、97頁。ISBN 4-8445-2253-1 
  11. ^ 谷腰欣司 『小型モータとその使い方』 日刊工業新聞社、1987年、21頁。ISBN 4-526-02147-4 
  12. ^ 電気学会 電気規格調査会 標準規格 『JEC-2130 同期機』 電気書院、2016年、8頁。 
  13. ^ 日本工業標準調査会 『JIS B 0119 水車及びポンプ水車用語』 日本規格協会、2009年。 
  14. ^ 電気設備学会編 『電気設備用語辞典』 オーム社、2008年。ISBN 978-4-274-20962-8 
  15. ^ モータ技術用語辞典編集委員会編 『モータ技術用語辞典』 日刊工業新聞社、2002年、52頁。ISBN 4-526-05034-2 
  16. ^ 電気用語辞典編集委員会編 『電気用語辞典』 コロナ社、1997年、643頁。ISBN 4-339-00411-1 






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