岡田麿里
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 06:47 UTC 版)
おかだ まり 岡田麿里 | |
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プロフィール | |
別名 | 超平和バスターズ(長井龍雪、田中将賀との共有筆名) |
誕生日 | 1976年4月23日(48歳) |
出身地 |
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出身校 | アミューズメントメディア総合学院 |
主な作品 | |
映画 |
『まじめにふまじめ かいけつゾロリ なぞのお宝大さくせん』 『心が叫びたがってるんだ。』 『さよならの朝に約束の花をかざろう』 『空の青さを知る人よ』 『アリスとテレスのまぼろし工場』 |
アニメ |
『とらドラ!』 『true tears』 『花咲くいろは』 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』 『凪のあすから』 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 |
舞台 | ミュージカル黒執事 -The Most Beautiful DEATH in The World- 千の魂と堕ちた死神 |
受賞 | |
上海国際映画祭 アニメーション部門 最優秀作品賞 2018年『さよならの朝に約束の花をかざろう』 シッチェス・カタルーニャ国際映画祭 ファンタスティック・ディスカバリー部門 最優秀長編作品賞 2018年『さよならの朝に約束の花をかざろう』 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 ニューウェーブアワード(クリエイター部門) 2018年『さよならの朝に約束の花をかざろう』 アニメーション神戸 個人賞(脚本家) 2011年 毎日映画コンクール アニメーション映画賞 2024年『アリスとテレスのまぼろし工場』 | |
その他 | |
小説家・漫画原作者・作詞家・映画監督 日本脚本家連盟会員 |
経歴
※ 以下は本人の自伝(#参考文献を参照。以下出典「岡田」については、この本の略)に記載されていた内容を中心に記載している。自伝のため第三者の客観的な公表事実だけが書かれているわけではないが、概ね下記のような経緯で現在の職業に就いたとされる。
両親は3歳の頃に離婚し[4]、母と母方の祖父(高校時代に死別)の3人家族で育つ[5]。小学校低学年の頃から月に1・2回程度の「ずる休み」をするようになり[5]、5年生の頃から不登校が本格化した[6]。
中学校進学に際して、誰からも嫌われない親友をモデルに「キャラクターづくり」をしてクラス内で思い描いていたポジションを得たが[7]、1年生の1学期が終わる頃にはストレスを覚えるようになり、学校を休む[8]。欠席の間に小学校時代の不登校の話が広まり、クラスの中で「本当は繊細」というキャラクターづけがされたことで、再度不登校を始めた[9]。ほぼ引きこもりの生活を送り[10]、大きな学校行事がある日などを除いて登校しなかった[11]。ただ、作文の課題だけは提出していた[12]。3年生の時点で卒業に必要な出席日数は満たせない状況だったが、「高校に合格すれば卒業させざるを得ない」という話を聞き、自宅で受験勉強をして高校に合格した[13]。
しかし、高校でも半年程度で三たび不登校となる[14]。高校には「決められた課題を提出すれば最低限の出席日数でも進級できる」という決まりがあり、担任教師と話して読書感想文を提出することになった[15]。感想文には担任教師が評をつけて返却し、そのやりとりは3年生まで続いて[16]、高校を卒業する[17]。岡田はコンピュータゲームの専門学校に入ることを決め[18]、1995年春に上京した[19]。
専門学校では自分と似たオタクや不登校経験者と知り合った[20]。専攻はゲームシナリオコースで、授業が楽しく、やがてシナリオライターになりたいと思うようになる[21]。しかし、伝手は全くない状態で、成人向けVシネマのシナリオ募集を見つけて応募、卒業直前に採用されてデビューした[22]。Vシネマのシナリオは非常に安価だったため、テープ起こしで生計を立て、やがてフリーで漫画原作、ゲームシナリオ、CDドラマなどの脚本に携わる[23]。
1998年の『DTエイトロン』の第9話「FANG OF THE TANK-CEMETERY」よりアニメ脚本を手掛け始める[24]。岡田によると、ブラインドタッチのできない知人から「タイピング要員」として仕事を頼まれて初めてアニメ作品に参加し、監督のアミノテツローから「ライター希望なら」とアイディアを求められてシナリオを書くに至ったという[25]。しかし以後の営業をせず、すぐにアニメのライターにはならなかった[26]。2001年に『おとぎストーリー 天使のしっぽ』の脚本を担当。この作品を契機にアニメのライターを志し、アミノテツローに仕事をしたいと申し出る[27]。アミノからは「自分についてのシナリオを書く」という課題を与えられ、岡田は自らの不登校時代をモチーフにしたシナリオを提出した[27]。岡田にとって、不登校のカミングアウトという側面もあった[28]。アミノからは「アニメ業界に入って、いつか俺の遺作のホン(脚本)を書け」という返事をもらい、本格的にアニメのシナリオライターとなる[28]。
2011年上半期に、『フラクタル』『放浪息子』『GOSICK -ゴシック-』『花咲くいろは』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、『あの花』と略記)など延べ6クール分のシリーズ構成を同時に担当した(そのうちの3作品『フラクタル』『花咲くいろは』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』は原作のないオリジナルアニメであるが、それぞれのシリーズ構成・脚本を実際に執筆した時期が全て重なっていたわけではない)。
2017年以降、実写映画・ドラマの脚本も執筆するようになる。
2017年4月に自伝『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(文藝春秋)を刊行[29][30][31]。この自伝はNHK BSプレミアムにて2018年9月に実写ドラマとして放映されることが同年5月に発表され、岡田自身が脚本を執筆する[32]。
2018年2月24日、初監督作品となる劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』(以下、『さよ朝』と略記)が公開。詳細は当該項目および本項副節#『さよ朝』に関してなどを参照。同年3月、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の第5回ニューウェーブアワード(クリエイター部門)を受賞。岡田は表彰式において「映像作品は人との出会いで生まれるもの。新しい人と出会ったり、少しでも座組が変わったりするとまた新しい作品が生まれてきます。これからも楽しんで作品を生み出せるようにがんばっていきます」と述べている[33]。
2022年度の第50回アニー賞で、脚本を担当したNetflixのアニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』(監督 堤大介)が、リミテッドシリーズ作品賞を受賞した[34]。
2023年9月15日、監督・脚本を務めた『アリスとテレスのまぼろし工場』が公開され、制作には『さよならの朝に約束の花をかざろう』のメインスタッフが再集結した[35]。岡田の監督作としては2作目となる[36]。同作は第78回毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞した[37]。
人物像
全話の脚本を担当した『おとぎストーリー 天使のしっぽ』では、ネットで原作ファンからの「死ね」という言葉を含む書き込みを見てひどく落ち込み、「自分の死が願われ続けている」という恐怖から体重が減少し、本人はこれを「不幸ダイエット」と呼んでいた[38]。一時ネットも見なくなったが、スタッフの勧めで評価するコメントを目にして嬉し泣きし、これを契機に本格的にアニメのライターを志した[38]。
テレビアニメ『ローゼンメイデン』の水銀燈が、アニメ第1期の第8話「蒼星石 Lapislazuri Stern」で血圧が上がり苦しむ元治に発したセリフとして「乳酸菌摂ってるぅ?」があるが、そのセリフを発案したのはこの回の脚本を担当した岡田であると、松尾衡監督が語っている。
テレビアニメ『花咲くいろは』の原案は『航空宅配便に乗るヒロインの物語』だったにもかかわらず、岡田の意見により温泉旅館を舞台にした物語に変更になった[39]。
- ^ a b 朝日新聞・Be、2017年4月15日付1面。
- ^ アニメーション神戸-第16回アニメーション神戸賞
- ^ a b c 『脚本家年鑑 2019』246頁
- ^ 岡田、2017年、pp.89 - 91
- ^ a b 岡田、2017年、p.25
- ^ 岡田、2017年、pp.32 - 33
- ^ 岡田、2017年、pp.44 - 45
- ^ 岡田、2017年、pp.47 - 51
- ^ 岡田、2017年、pp.52 - 54
- ^ 岡田、2017年、p.61
- ^ 岡田、2017年、p.77
- ^ 岡田、2017年、p.103
- ^ 岡田、2017年、pp.108 - 110
- ^ 岡田、2017年、p.115
- ^ 岡田、2017年、p.116
- ^ 岡田、2017年、p.127
- ^ 岡田、2017年、pp.134 - 135
- ^ 岡田、2017年、p.137
- ^ 岡田、2017年、p.139
- ^ 岡田、2017年、p.148
- ^ 岡田、2017年、pp.151 - 153
- ^ 岡田、2017年、pp.154 - 157
- ^ 岡田、2017年、pp.163 - 164
- ^ 『アニメージュ』(徳間書店)2012年2月号「この人に話を聞きたい」第147回、98頁より。
- ^ 岡田、2017年、pp.170 - 171
- ^ 岡田、2017年、pp.173 - 174
- ^ a b 岡田、2017年、pp.184 - 186
- ^ a b 岡田、2017年、p.195
- ^ 下山進 (2017年4月12日). “ひきこもりの少女は人気アニメ作家になった”. 東洋経済ONLINE 2017年4月16日閲覧。
- ^ “(フロントランナー)アニメ脚本家・岡田麿里さん 「あの花」「ここさけ」の先に”. 朝日新聞. (2017年4月15日). オリジナルの2021年4月20日時点におけるアーカイブ。 2017年4月16日閲覧。
- ^ a b “(フロントランナー)岡田麿里さん 「現実は妄想ほど怖くなかった」”. 朝日新聞. (2017年4月15日). オリジナルの2017年5月21日時点におけるアーカイブ。 2017年4月16日閲覧。
- ^ @NHK_PR (2018年5月29日). “脚本家・岡田麿里のアニメ創作の原点とは?学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで”. 日本放送協会(NHK)公式ホームページ 2017年5月30日閲覧。
- ^ a b “葉山奨之と川栄李奈が初受賞に感慨、岡田麿里「作品は人との出会いで生まれる」”. 映画ナタリー. (2018年3月15日) 2018年3月15日閲覧。
- ^ “アニー賞「ピノッキオ」が最多5冠、岡田麿里脚本のアニメ「ONI」も作品賞を受賞”. 映画ナタリー. 株式会社ナターシャ (2023年2月26日). 2023年2月27日閲覧。
- ^ “岡田麿里 監督の最新作映画『アリスとテレスのまぼろし工場』特報映像が公開 アニメーション制作はMAPPA、『さよ朝』スタッフ再集結”. SPICE(スパイス). イープラス (2021年6月28日). 2023年5月22日閲覧。
- ^ “「あの花」脚本家・岡田麿里、監督2作目「アリスとテレスのまぼろし工場」制作決定! MAPPA初のオリジナル劇場作品”. アニメ!アニメ!. (2021年6月28日) 2023年7月23日閲覧。
- ^ a b “アリスとテレスのまぼろし工場:「毎日映画コンクール」アニメーション映画賞受賞 岡田麿里監督×MAPPAの劇場版アニメ”. まんたんweb. (2024年1月19日) 2024年1月19日閲覧。
- ^ a b 岡田、2017年、pp.177 - 181。本書には作品のタイトルはないが概要と監督名は記載されている。
- ^ P.A.WORKS BLOG 花咲く舞台袖・Q&A② 温泉旅館
- ^ 岡田、2017年、pp.213、216
- ^ 岡田、2017年、pp.218 - 219
- ^ 岡田、2017年、pp.221 - 222
- ^ 岡田、2017年、pp.223 - 224
- ^ “「さよ朝」初監督作の公開迎えた岡田麿里がスタッフ、声優、ファンすべてに深謝”. コミックナタリー. (2018年2月24日) 2018年2月25日閲覧。
- ^ “ONI ~ 神々山のおなり”. 公式サイト. トンコハウス (2022年). 2023年2月27日閲覧。
- ^ 番組エピソード 事実は小説より奇なり【実話ドラマ特集】-NHKアーカイブス
- ^ “清水富美加×飯豊まりえW主演、女子高が舞台のミステリー小説「暗黒女子」映画化”. 映画ナタリー. (2016年9月8日) 2016年9月8日閲覧。
- ^ 「惡の華」映画化、押見修造「井口昇監督に撮って頂くことは、長年の夢でした」2018年11月10日 閲覧。
- ^ “岡田麿里「さよ朝」上海映画祭でアニメーション最優秀作品賞に輝く、ソフトも発売”. 映画ナタリー. 株式会社ナターシャ (2018年6月25日). 2018年6月25日閲覧。
- ^ “「あの花」「ここさけ」話に声弾む 脚本家・岡田麿里さんとファンの村岡桃佳選手、埼玉文化賞授賞式で歓談”. 埼玉新聞. (2018年11月23日) 2018年11月23日閲覧。
- ^ 「第15回さいたま輝き荻野吟子賞」受賞者を決定しました― 2月12日(水曜日)表彰式 ― - 埼玉県庁(県政ニュース・報道発表資料)
- ^ “アニメーション神戸賞決定 個人賞 岡田麿里さんなど” (2011年9月2日). 2023年9月30日閲覧。
- ^ “映画「アリスとテレスのまぼろし工場」が新潟国際アニメーション映画祭で傾奇賞を受賞”. コミックナタリー. (2024年3月20日) 2024年3月26日閲覧。
- 1 岡田麿里とは
- 2 岡田麿里の概要
- 3 『あの花』に関して
- 4 脚注
固有名詞の分類
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