外患罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 04:27 UTC 版)
外患誘致罪
保護法益
本罪の保護法益は国家の対外的存立である。
行為
外国と通謀して日本国に対して武力を行使させることを内容とする(81条)。
この場合の「外国」とは、外国人の私的団体ではなく外国政府を意味する。ただし、日本国政府との国交の有無はもちろん、国際法における国家の成立要件を完全に備えていることは要件とはならない。「通謀」とは、意思の連絡を生ずることをいう。
内容としては、外国政府に働きかけ武力行使することを勧奨したり、外国政府が日本国に対して武力を行使しようとすることを知って、当該の武力行使に有利となる情報を提供する行為をいう。「武力の行使」とは軍事力を用い日本国の安全を侵害することを言うが、国際法上の戦争までを意味しない。具体的には、外国政府が、安全侵害の意思を持って、公然と日本国領土に軍隊を進入させたり、砲撃・ミサイル攻撃等を加えることをいう。
本罪の着手時期は、武力行使の目的を持って通謀行為を開始したとき、又は、継続的な連絡行為後、外国政府が武力行使の意思を生じた時に画されるであろう。既遂は、外国が武力を行使したときに成立する。
法定刑
本罪の法定刑は死刑のみ(絶対的法定刑)であり、現行刑法上で最も重い罪である。また、未遂罪も処罰されるため(刑法87条)、死亡者が発生しなくても死刑となる。但し、法定減軽・酌量減軽は可能である。たとえば、大掛かりな犯罪であるのでまず考えられないが、少年法上において死刑を科すことのできない18歳未満の者がこの罪を犯した場合は無期懲役刑を科すものと考えられている。本法が制定されて以来、現在までにこの罪を犯した者および裁かれた者は存在しない。
未遂
本罪の未遂は罰する(刑法87条)。
共犯
外患誘致の教唆をなし、又はこれらの罪を実行させる目的をもってその罪のせん動をなした者は、7年以下の懲役又は禁錮に処される(破壊活動防止法38条1項)。
この場合に教唆された者が教唆に係る犯罪を実行するに至ったときは、刑法総則に定める教唆の規定の適用は排除されず、双方の刑を比較して重い刑をもって処断される(破壊活動防止法41条)。
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