塩谷町 指定廃棄物最終処分場候補地

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 塩谷町の解説 > 指定廃棄物最終処分場候補地 

塩谷町

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/29 05:07 UTC 版)

指定廃棄物最終処分場候補地

2014年7月30日、放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の候補地として塩谷町上寺島(寺島入)の国有地が提示された[14]。環境省からの提示を受けた見形和久町長は「明確に反対ということで話をした」と述べた[14]。同年7月31日、県指定廃棄物処理市町村長会議で石原伸晃環境大臣が候補地での詳細調査への協力を求めた[15]。同年8月5日、塩谷町議会が候補地の白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決した[16]。意見書では候補地が尚仁沢湧水に隣接し不適切であると表明している[16]

同年8月31日、最終処分場建設に反対する「塩谷町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会」が町内で住民集会を開き、候補地選定の白紙撤回を求める決議を採択した[17]。主催者発表によると同集会には約2,000人が参加した[17]

同年9月19日、塩谷町議会は「町高原山・尚仁沢湧水保全条例」案を全会一致で可決し、条例は即日施行された[18]。条例に基づき町は湧水等保全地域を指定し、指定後は同地域内での指定廃棄物の最終処分場の設置等の際には町の許可を要することとなる[18]

同年10月29日、塩谷町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会は候補地選定の白紙撤回を求める173,573人分の署名を環境省に提出した[19]

この問題に対して、見形町長は指定廃棄物を福島第一原子力発電所周辺に貯蔵すべきと主張している[20]。同年11月4日5日、見形町長は県内24市町を訪問し各市町長にこの主張への理解を求めている[20]。なお、指定廃棄物を福島第一原発周辺に集約すべきという主張は見形町長が初めてではなく、以前に矢板市が最終処分場の候補地に選定された際に福田昭夫衆議院議員が指定廃棄物を福島第一原発敷地内で一時保管すべきと主張していた[21]

同年11月9日、県指定廃棄物処理促進市町村長会議で見形町長は福島第一原発周辺に処分場を作ることを主張したが、望月義夫環境大臣は県内処理を見直さない方針を表明し、福田富一知事は国の方針を支持した[22]。同会議で福田知事は指定廃棄物を放射線量が減衰した時点でリサイクルし原状回復する方法を提案した[22]

2015年2月2日、環境省は現地にて候補地の面積確認をしようとするも、候補地へ通じる林道入口付近に最終処分場建設に反対する住民らが集結し同省職員らの立ち入りを阻止した[23]

同年6月9日、塩谷町は環境省への抗議文を同月8日付で送付したと発表した[24]。望月環境大臣が県内処理を見直さない方針を表明したことについて、同町は文書の中で検証結果を待たず結論を誘導するものだと批判している[24]。また、同文書では各県ごとに最終処分場を設置することを定めた放射性物質汚染対処特措法の見直しを求めている[24]

同年6月26日、環境省による住民説明会開催の要請に対して、塩谷町はこれを拒否すると回答した[25]

同年7月8日、県指定廃棄物処分等有識者会議は環境省による候補地選定プロセスが適切であったとする最終報告をまとめた[26]。また、環境省は一時保管している指定廃棄物のうち放射能濃度が10万Bq/kg超のものが171トンであることを公表した[26]

同年10月9日、県市長会長の佐藤栄一宇都宮市長と県町村会長の古口達也茂木町長が塩谷町役場を訪問し、環境省の説明会開催の要請に応じるよう説得するも見形町長は拒否した[27]

同年10月14日、環境省は現地調査を行ったところ、関東・東北豪雨によって候補地の一部が冠水した可能性があることが判明した[28]。これに対し調査に同行した環境省の有識者は対策を講じれば処分場建設は可能とする見解を表明した[28]。同年10月16日丸川珠代環境大臣は候補地を変更しない意向を表明した[29]。なお、この現地調査の時に有識者が処分場建設の詳細調査に向けた情報収集を目的に挙げるなど災害調査の目的を逸脱した発言をしたとして、見形町長は同年10月26日に環境省を訪問し抗議文を提出している[30]

また、環境省が町の全世帯に対して指定廃棄物について考えを聞くダイレクトメールを郵送したことに関して、町は10月22日付で環境省に対して抗議文を郵送した[31]。町は抗議文の中でいたずらに町民の不安をあおる行為だと批判している[31]。環境省によると、このダイレクトメールに対する町民の回答は10月23日までにおよそ900通で、そのうち環境省の意向に理解を示す意見は1割弱にとどまり、9割以上は環境省の方針に反対する意見だったという[32]。同年10月29日、環境省は町の全世帯に対して再度ダイレクトメールを郵送した[32]。前回のダイレクトメールには連絡先の記載がなかったが、今回は連絡先を記載した上で質問への回答形式で処分場の安全性などを説明している[32]。同年11月6日、町は再度のダイレクトメール郵送に関して環境省に対して抗議文を郵送した[33]。なお、同年12月には環境省が町の全世帯に対して3回目となるダイレクトメール郵送を行っている[34]

同年11月20日、町民対象の報告会で町は9月の豪雨の被害状況を説明した[35]。報告会の中で見形町長は、豪雨で冠水した候補地は候補地になり得ないと述べ、環境省に候補地の返上を伝える意向を表明した[35]

同年11月30日、環境省は会見で先の豪雨の影響調査の結果を公表した[36]。その中で候補地の一部で冠水の痕跡があったことを認めたものの、大規模な土石流の影響は受けにくいとしている[36]。また、環境省は影響を正確に把握するため詳細調査が必要だと説明したが、見形町長は詳細調査を拒否する考えを表明している[36]

この問題で同年12月9日、塩谷町民と福田知事が県公館で初めて話し合いをしている[37]

2016年1月22日井上信治環境副大臣が福田知事、見形町長と会談し、環境省が各県ごとに1か所ずつ処分場を造る方針を断念したとする一部報道について、その事実がないことを説明した[38]

同年10月17日、県指定廃棄物処理促進市町村長会議で環境省は指定廃棄物のうち国の基準値の8千Bq/kgを下回ったものを一般ごみとして処理し、また個人で保管している農家などの負担を軽くするために焼却による減容化、保管場所の集約の方針を説明した[39]

2017年7月10日、環境省は宇都宮市内で行われた会議で、農家が一時保管している廃棄物の減容化や保管場所の集約を提案したが合意には至らなかった[40]


  1. ^ a b 新庁舎開庁!!”. 塩谷町. 2023年11月3日閲覧。
  2. ^ a b 下野新聞社 編 2006, p. 84.
  3. ^ a b 下野新聞社 編 2006, p. 86.
  4. ^ 塩谷 過去の気象データ検索”. 気象庁. 2023年3月5日閲覧。
  5. ^ 矢板市・塩谷町の境界を変更 栃木県の土地改良事業施行で”. 下野新聞 (2022年3月27日). 2023年5月14日閲覧。
  6. ^ a b c 歴史と伝統、新庁舎で受け継ぐ 塩谷町役場で閉庁式 築71年の現庁舎に別れ”. 下野新聞. 2023年11月3日閲覧。
  7. ^ 「塩谷町庁舎整備基本構想」を策定しました。”. 塩谷町役場庁舎建設準備室 (2019年3月27日). 2023年5月14日閲覧。
  8. ^ a b 塩谷町新庁舎建設工事 起工式が行われました。”. 都市環境建築設計所 (2023年2月28日). 2023年5月14日閲覧。
  9. ^ 『全国市町村要覧』平成16年版、第一法規、p.144
  10. ^ 『広報しおや』平成16年8月号[1]、塩谷町、p.2
  11. ^ 『全国市町村要覧』平成19年版、第一法規、p.130
  12. ^ 『全国市町村要覧』平成24年版、第一法規、p.130
  13. ^ 『全国市町村要覧』平成27年版、第一法規、p.130
  14. ^ a b “塩谷町に国が提示 最終処分場候補地選定 町長「明確に反対」 環境相きょう首長会議で説明”. 下野新聞: p. 1. (2014年7月31日) 
  15. ^ “環境相が調査協力要請 塩谷町長「簡単ではない」 候補地選定で市町村長会議”. 下野新聞: p. 1. (2014年8月1日) 
  16. ^ a b “最終処分場候補地選定 「湧水に隣接、不適切」 塩谷町議会意見書可決”. 下野新聞: p. 1. (2014年8月6日) 
  17. ^ a b “2000人白紙撤回求める 反対住民ら緊急集会”. 下野新聞: p. 1. (2014年9月1日) 
  18. ^ a b “最終処分場、規制対象に 塩谷町議会 湧水保全条例を可決”. 下野新聞: p. 1. (2014年9月20日) 
  19. ^ “塩谷町の反対同盟 撤回署名17万人分提出 環境省、管理130年試算も”. 下野新聞: p. 1. (2014年10月30日) 
  20. ^ a b “塩谷町長 福島第1周辺へ集約を 県内全首長理解求める”. 下野新聞: p. 1. (2014年11月6日) 
  21. ^ “「原発内保管」発言が波紋 福島知事が関係悪化懸念 本県知事、福田議員批判”. 下野新聞: p. 2. (2012年10月30日) 
  22. ^ a b “首長会議で望月環境相 塩谷町長と議論平行線 「県内処理見直さず」”. 下野新聞: p. 1. (2014年11月11日) 
  23. ^ “環境省、面積確認を中止 塩谷住民ら 300人立ち入り阻む”. 下野新聞: p. 1. (2015年2月3日) 
  24. ^ a b c “特措法見直し 塩谷町、環境省に抗議文 「検証待たず結論誘導」”. 下野新聞: p. 5. (2015年6月10日) 
  25. ^ “塩谷町 住民説明会を拒否 環境相要請に文書回答”. 下野新聞: p. 3. (2015年6月27日) 
  26. ^ a b “処分場候補地 塩谷選定は「適切」 県有識者会議が最終報告 環境省公表 一時保管10万ベクレル超171トン”. 下野新聞: p. 1. (2015年7月9日) 
  27. ^ “市長会長と町村会長 国説明受け入れ提案 塩谷町長拒否、物別れに”. 下野新聞: p. 1. (2015年10月10日) 
  28. ^ a b “塩谷の候補地、豪雨時冠水 環境省調査「対策講じ建設可能」”. 下野新聞: p. 1. (2015年10月15日) 
  29. ^ “冠水受け丸川環境相 候補地変更を否定 塩谷町の反発は必至”. 下野新聞: p. 5. (2015年10月17日) 
  30. ^ “塩谷町、環境省に抗議 災害調査、単独で報告会”. 下野新聞: p. 5. (2015年10月27日) 
  31. ^ a b “「不安をあおる」環境省に抗議文 DM問題で塩谷町”. 下野新聞: p. 3. (2015年10月24日) 
  32. ^ a b c “環境省 塩谷町全戸へ再度DM 質問に回答形式、連絡先も”. 下野新聞: p. 2. (2015年10月30日) 
  33. ^ “環境省の再度のDM郵送に抗議 塩谷町”. 下野新聞: p. 5. (2015年11月7日) 
  34. ^ “環境省、3回目のDM 塩谷町全戸に”. 下野新聞: p. 4. (2015年12月15日) 
  35. ^ a b “環境省に「候補地返上」 冠水受け塩谷町長、町民に表明”. 下野新聞: p. 5. (2015年11月21日) 
  36. ^ a b c “塩谷候補地豪雨調査 環境省、一部冠水認める 大規模土石流「影響受けにくい」”. 下野新聞: p. 1. (2015年12月1日) 
  37. ^ “塩谷有志と福田知事 初対談打開策手探り 話し合いの継続、確認”. 下野新聞: p. 1. (2015年12月10日) 
  38. ^ “環境副大臣本県入り 「集約断念の事実ない」 各県処理方針、知事に説明”. 下野新聞: p. 1. (2016年1月23日) 
  39. ^ “県市町長に環境省説明 個人保管の指定廃集約 焼却で減容化、農家負担減”. 下野新聞: p. 1. (2016年10月18日) 
  40. ^ “集約、減容化合意至らず 環境省の農家負担軽減策 6市町と個別協議へ”. 下野新聞: p. 1. (2017年7月11日) 
  41. ^ 塩谷町の歴史”. 塩谷町総務課 (2017年1月16日). 2023年5月14日閲覧。
  42. ^ 構造改革特別区域計画”. 内閣府地方創生推進事務局. 2023年5月14日閲覧。
  43. ^ 生涯学習センター利用案内”. 塩谷町生涯学習課 (2020年8月19日). 2023年5月14日閲覧。
  44. ^ 新高徳駅~矢板駅間路線バスの運行について
  45. ^ 10月1日から路線バス(新高徳駅〜矢板駅)を運行します。 - 塩谷町、2014年9月29日更新


「塩谷町」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「塩谷町」の関連用語

1
100% |||||

2
100% |||||

3
100% |||||

4
100% |||||

5
100% |||||

6
100% |||||

7
100% |||||

8
100% |||||

9
100% |||||

10
100% |||||

塩谷町のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



塩谷町のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの塩谷町 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS