地名 地名の対象

地名

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 06:37 UTC 版)

地名の対象

地名の対象は、0次元。例:山頂)、1次元。例:国境軍事境界線)、2次元。例:流域自然保護区領土)、立体あるいは3次元空間(3次元。例:洞窟坑道水系断層)の形をとる。地球上の地名の場合、陸地山地平地洞窟海岸湿地など)・水域湖沼、湿地、など)・生物による地形などといった自然物と、人工的な構造地形(集落、坑道など)、および、市町村など政治的に決められたものがある。一部の道路公園堤防などの名も地名として機能する。[要出典]

地名の変更と保存・復活運動

日本では、上記のような宅地開発や市町村合併に加えて、住居表示法施行(1962年)によって、新たな地名や合成地名が誕生したり、古来の地名が消滅したりしてきた。こうした動きには批判的な意見もある。地名の保存を強く訴えた民俗学者の谷川健一[13]は1978年に「地名を守る会」を発足させ、1981年には「日本地名研究所」(地名研)を設立。地名研を母体に博物館を作る構想は立ち消えとなったが、神奈川県川崎市教育委員会の「地名資料室」に引き継がれている[14]

石川県金沢市や東京都千代田区などでは旧町名復活運動が進められ、一部は実現した。

異なる言語間での地名の扱い

外国地名

言語はその話者の居住範囲の地名だけを表現できればよいというものではないので、現代の言語は当然に世界中の地名をカバーしなければならない。そこで、一つの対象について正しい地名は一つでなく、言語の数だけ地名があると言うこともできる。とはいうものの、話者の身近にある外国地名もあれば、ほとんど用いられず、意識されることさえない外国地名もある。

外国地名にはほぼ例外なくその場所、あるいは近辺の居住者によって現地語の地名が付けられている。それらを自言語に転写するだけで済むなら外国地名固有の問題はないはずであるが、実際には現地語とずれることが珍しくない。ずれが生じる理由は様々にある。国・地方のような広域地名では、自称で生まれた地名と周辺から呼んだ地名が初めから異なることが多い。そうでなくても、名の意味を自言語に訳すことで別の呼び方になることがある。現地で地名が変化したのに、周辺言語が古い地名を保存することもある。複数言語の住民が混住する地域で、民族・言語によって地名が異なる場合には、国境の変更によって公的な現地語が変わることになる。

文字を共有する別言語で、発音と表記の対応方法が異なる場合には、現地語とのずれは避けがたい。中国語では、漢字表記が定まっていても、方言差のせいで標準語普通話)である北京語の発音と現地の発音が異なるところが多い[15]。こうしたことはアルファベットを共有するヨーロッパ諸言語の間にもあり、綴り字が同じでも発音が異なることがある。例えば "Chile" は現地のスペイン語で「チレ」というが、英語では「チリ」のように発音する。

各言語の影響力の違いも外国地名の決定要素として無視できない重みがある。影響力のない小言語の現地地名よりも、大言語が外から呼ぶ地名のほうが他の言語に採用されやすいのである。

20世紀後半から、外国地名についてはできるかぎり現地での呼び方を尊重するが、自国語で慣習が根強い場合にはそちらを優先するというのが世界的な傾向になっており、徐々に慣習的な表記を改める動きもある[6]

日本の地名の英語表記

Naiegawa Riverと記された奈井江川の標識

2016年に国土地理院は、観光立国の実現や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を目前にして急増する(と想定された)インバウンド需要への対応策として、地図に記載する地名等に関する英語表記ルールや外国人にわかりやすい地図記号を決定した[16]。英語表記ルールでは置換方式と追加方式の2通りを定め使い分けることとしている[16]

  • 置換方式
地名に含まれる「山」を「Mt.」、「川」を「River」のように、そのまま英語に置き換える方式[16]
筑波山はMt.Tsukuba、利根川はTone Riverとなる[16]
  • 追加方式
地名のローマ字表記に、「山」であれば「Mt.」、「川」であれば「River」などを追加する方式[16]。置換方式を適用すると、月山はMt.Gatsu、荒川はAra Riverとなるが、日本人には通じにくくなってしまうため、月山はMt.Gassan、荒川はArakawa Riverとするもの[16]。英語から元の日本語地名を認識することが困難となる場合などには追加方式が適用される[16]
施設名称に由来する地名にも追加方式が適用され、例えば東大寺はTodai TempleでなくTodaiji Templeとなる。

民族・領土問題と地名

上記のように、同じ土地に対して周辺住民による呼称が複数ある場合だけでなく、探検や交易、征服植民地化などを目的にやって来た外来者が、地元呼称と異なる地名を付けることも珍しくない。例えば、ヒマラヤ山脈にある世界最高峰エベレストと“命名”したのはインドを統治していた英国人であり、それ以前から山麓のネパールでは「サガルマータ」、チベットでは「チョモランマ」と呼ばれていた(エベレスト#名称を参照)。オーストラリアで原住民が「ウルル」と呼んでいた巨大な岩山は、イギリス植民者により「エアーズ・ロック」と名付けられたが、近年は現地において「ウルル」の呼称が尊重されている。

民族問題や領土問題、海洋権益を巡る国家間の争いが生じている地域・海域では、地名とその国際的な通用性も対立の一部となることが多い。例えば竹島 (島根県)について、島を占拠する大韓民国は「独島」(ドクト)と呼称している。その韓国は北朝鮮の地名を認めておらず、1945年8月15日時点の地名を準用している。東欧のマケドニア共和国に対して、その国号を南隣のギリシャは認めず、変更を要求している(マケドニア共和国#マケドニア呼称問題を参照)。


注釈

  1. ^ 小国や地方の名前には、音を表す字に「邑」(おおざと)を附記し、山の名前には音を表す字「山」を附記し、河川や湖沼の名前には音に水部(さんずい)を附記するなど。」「」「」「」「」「」「」「がその例。
  2. ^ 続日本紀』和銅6年5月2日条 : ここに見えるには二字とは書かれていないが、この時点を境にかなり強引に二字にされたことが木簡資料などで確かめられている。
  3. ^ 「津(つ)」が「摂津(つ)」に変更され、字に引きずられて「摂津(せっつ)」に変化する、など。「群馬」もその例である。
  4. ^ 「二荒(ふたら)」を「にこう」と読み替えた上で「日光(にっこう)」の字をあてる、など。
  5. ^ 塩竈」と「塩釜」など。
  6. ^ 椙村大彬『地理名称の表現序説』14頁。英語なら川、海、山脈、砂漠には定冠詞を付けるが、集落など他の地名には原則として付けない。スペイン語では普通名詞からとった集落名には定冠詞を付けるのが原則である(La Paz ラパス)など)。
  7. ^ ジョージ・ワシントンからワシントン特別区クリストーバル・コロンからコロンビアなど。椙村大彬『地理名称の表現序説』84頁。
  8. ^ グアイカイプロからグアイカイプロ市など。
  9. ^ 中華民国1925年(民国14年)に孫文(孫中山)の生地を「香山県」から「中山県」に改称した。ドミニカ共和国の「サントドミンゴ」はトルヒーヨ大統領によって「シウダー・トルヒーヨ」と改められ、アルゼンチンの「ラプラタ市」はペロン大統領によって妻の名と同じ「エヴァ・ペロン」とされたが、いずれも政権崩壊後に戻された。椙村大彬『地理名称の表現序説』86頁。アメリカ合衆国の「ケープ・カナベラル」は暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の名を採って「ケープ・ケネディ」と改めたが、後に戻された。
  10. ^ 姓+「家荘」、姓+「鎮」、姓+「村」という形で名づける。
  11. ^ 東京と大阪にある日本橋など。
  12. ^ アメリカ合衆国のモンタナ州アナコンダ、日本の愛知県豊田市奈良県天理市など。
  13. ^ 英語で使われ日本語でも用いられる近東(Near East)・中東(Middle East)・極東(Far East)。
  14. ^ 日本では肥前国肥後国などにみられる。
  15. ^ 九嵕山(きゅうそうざん)の南、渭水の北に当たり「咸(みな)陽」
  16. ^ 詳しくは「グリーンランド#「グリーンランド」の由来」を参照のこと。
  17. ^ 火星#地形」「金星#地形」「水星#地形」を参照のこと。
  18. ^ 月#地名」「フォボス (衛星)#地形」「エウロパの地形一覧」「イオ (衛星)#地質」「カリスト (衛星)#表面の地形」「タイタン (衛星)#表面の特徴」「トリトン (衛星)#物理的特徴」等を参照のこと。
  19. ^ イトカワ (小惑星)#地名」を参照のこと。

出典

  1. ^ a b c d 『ブリタニカ国際大百科事典』「地名」
  2. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 2-7頁。
  3. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 9-11頁。
  4. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 41頁。
  5. ^ a b 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 44頁。
  6. ^ a b 椙村大彬 『地理名称の表現序説』
  7. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 84-86頁。
  8. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 89頁。
  9. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 76頁。
  10. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 98-109頁。
  11. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 46頁。
  12. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 42-43頁にニューファンドランド島の多数の例を引く。
  13. ^ 谷川健一「地名は日本人のアイデンティティ」全国町村会・論説(第2664号・平成21年1月12日)2018年3月18日閲覧
  14. ^ 【わがまちお宝館】川崎市教委地名資料室(高津区)「大地の索引」歴史たどる『朝日新聞』朝刊2018年2月7日(第2東京面)
  15. ^ 椙村大彬 『地理名称の表現序説』 179頁。
  16. ^ a b c d e f g 地名等の英語表記ルールと外国人向け地図記号を決定”. 国土地理院広報第575号(2016年5月発行). 国土地理院. p. 10. 2020年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月5日閲覧。外国人にわかりやすい地図表現検討会 (2016年1月6日公表). “第1部 地図に記載する地名及び施設名の英語表記方法について” (PDF). 地名の英語表記及び外国人にわかりやすい地図記号について. 国土地理院. pp. 4-22. https://www.gsi.go.jp/common/000111876.pdf 






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