北岳
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登山
登山基地である[45]広河原での入山者の7割が北岳を目指す[9]ほどで、山頂直下には150人規模収容の2つの山小屋がある[20][46]。北岳バットレスにも登攀ルートが伸びている。また、高山植物が豊富で、特に山頂の南東側斜面(中白峰までの縦走路付近)、山頂北側の白根御池上部の「草すべり」や「右俣コース」、北岳肩の小屋のキャンプ指定地付近などに大きな群落があり、夏には100種以上の高山植物が見られる。
登山コース
広河原からのコース
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- 広河原 - 大樺沢 - 二俣 - 八本歯のコル - 北岳
- 広河原 - 大樺沢 - 二俣 - 小太郎尾根 - 北岳肩ノ小屋 - 北岳
- 広河原 - 白根御池 - 小太郎尾根 - 北岳肩ノ小屋 - 北岳
南アルプス市芦安の広河原は、南アルプス林道と山梨県道37号南アルプス公園線との合流部の野呂川右岸にある北岳へのメインルートの登山口である。甲府方面や北沢峠方面へのバス発着所となるアルペンプラザ広河原がある。夏期の登山シーズン中には、南アルプス署広河原臨時警備派出所が併設される。毎年6月末にアルペンプラザ広河原前の広場で、南アルプス開山祭が行われている。1989年(平成元年)10月15日に、その広場に南アルプス開祖の人として、ウォルター・ウェストン、名取運一、天野久の3名レリーフが埋め込まれた石碑が設置された[47]。
広河原からの登路は大樺沢 (おおかんばさわ) 左俣を利用するもの、大樺沢右俣を利用するもの、草すべりを利用するものの三つに大別される[30]。左俣を利用するものは、夏も残る雪渓歩きや北岳バットレスの展望が特徴[30][48]。途中八本歯のコルでは梯子を使って登る箇所があり、このコースを登りきると北岳山荘側である北岳の南側の稜線に出る[48]。右俣を利用するものは、二俣から右俣と呼ばれる沢沿いを登る[49]。このコースを登りきると、北岳肩ノ小屋側、即ち北岳の北側の稜線に出る[49]。草すべりを利用するものは白根御池小屋を経る[50]。小屋裏から伸びる「草すべり」と呼ばれる急な登山道を登る[50]。このコースを登りきると、小太郎尾根の稜線に出る。そして北岳肩ノ小屋を経て北岳山頂へ至る[50]。
両俣からのコース
- 野呂川出合 - 両俣 - 左俣大滝 - 中白峰沢ノ頭 - 北岳肩ノ小屋 - 北岳[35]
北岳の西側から登山をするコースである[51]。野呂川出合から林道を歩き[51]、両俣に建つ両俣小屋に向かう。両俣から野呂川左俣沿いの登山道を歩き、最後の給水地点となる[34]左俣大滝に向かう。この滝の高さは10 mほどである[34]。左俣大滝で沢から離れ、中白峰沢ノ頭を経由して北岳の北側の登山道に合流する[51]。広河原が主要な登山口となっているため、利用者は他のルートと比較して少ない[51][30]。
池山吊尾根からのコース
- 鷲ノ住山 - あるき沢橋 - 池山御池小屋 - ボーコン沢ノ頭 - 八本歯のコル - 北岳
バリエーション・ルートとして、池山吊尾根コース (鷲住山展望台からボーコン沢ノ頭を越えて山頂に至る) があるが、一般向きではない。ただし、冬季にはこのルートが一般路となる[52]。
白峰三山縦走のコース
- 北岳 - 北岳山荘 - 中白根山 - 間ノ岳 - 農鳥小屋 - 西農鳥岳 - 農鳥岳 - 大門沢下降点 - 大門沢小屋 - 奈良田第一発電所 - 奈良田
山頂からは中白根山を経由して間ノ岳、西農鳥岳、農鳥岳、奈良田温泉に至る白峰三山縦走路が南に続いている[30]。間ノ岳から三峰岳へ進むと、赤石山脈主稜線の縦走路と合流する。
北岳バットレス (登攀ルート)
- 広河原 - 大樺沢 - 二俣 - バットレス - 北岳
北岳バットレスには7つの岩稜があり、中でも第4尾根が主たる登路となっている[30]。尾根の間にはガリー(岩溝)があり、それぞれ名が付けられている[19]。
山小屋
周辺には、下表の複数の山小屋があり、一部の山小屋にはキャンプ指定地が併設されている。主に無雪期の登山シーズン中に有人の営業が行われ、冬期は一部が緊急避難場所として開放される小屋がある[53]。水は山小屋の天水やペットボトルを購入したり、条件により小屋の下部の水場の流水から得ることができる。広河原にあった『広河原ロッジ』は、2004年(平成16年)3月に閉鎖されて、その後撤去された。
北岳周辺で営業をしている山小屋で、最も利用されているのは北岳山荘である[54]。2004年から2008年にかけての間は、毎年1年間で8000人前後の利用者を集めた[54]。次いで利用されているのは北岳肩ノ小屋で[54]、同様の期間におおよそ毎年6000人の利用者を集めた[54]。
周辺の山小屋に関する情報は下表を参照[35]。
画像 | 名称 | 所在地 | 標高/m | 北岳からの 方角と距離/km |
収容 人数 |
キャンプ 指定地 |
備考 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() |
広河原山荘 | 野呂川上流左俣出合付近 | 1530 | ![]() |
80 | テント100張 | [45] | |
![]() |
両俣小屋 | 野呂川左俣沢出合 | 2020 | ![]() |
30 | テント40張 | [55] | |
![]() |
白根御池小屋 | 白根御池畔 | 2238 | ![]() |
150 | テント40張 | [56] | |
![]() |
北岳肩ノ小屋 | 北斜面山頂直下 | 3010 | ![]() |
150 | テント50張 | [46] | |
![]() |
北岳山荘 | 北岳・中白根山鞍部 | 2900 | ![]() |
150 | テント80張 | 昭和大学医学部 夏山診療所 |
[20] |
![]() |
池山御池小屋 | 池山吊尾根の御池畔 | 2900 | ![]() |
30 | なし | 避難小屋 | [57] |
![]() |
農鳥小屋 | 間ノ岳・西農鳥岳鞍部 | 2800 | ![]() |
120 | テント50張 | [58] |
交通・アクセス
最寄りの登山口である広河原はマイカー規制が行われるため[59]、夜叉神峠や戸台(北沢峠経由)からの観光や登山用の市営バスが運行されている[60]。この市営バスの利用者は、2008年度には山梨県側から26636人、長野県側から43635人が利用した[61]。1980年の運行開始以来、2008年度までに累計1888554人がこれらのバスを利用した[60][61]。
注釈
出典
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- ^ “山梨百名山”. 社団法人やまなし観光推進機構. 2010年11月6日閲覧。
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- ^ a b 『コンサイス日本山名辞典』三省堂、1992年12月、154頁頁。ISBN 4-385-15403-1。
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- ^ さわやか自然百景のバックナンバー NHK、2011年3月1日閲覧。
- ^ お勧めの山・北岳 NHK、2011年3月1日閲覧。
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