分娩 分娩の評価

分娩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/26 07:04 UTC 版)

分娩の評価

分娩の進行度合いの評価としてパルトグラムによる評価と、フリードマン曲線、また分娩の進行に伴う胎児ジストレスの発見のための分娩監視装置というものがある。

パルトグラム

パルトグラムは分娩進行状態を一目で把握できるように記載した表である。パルトグラムで記載される代表的なパラメータを列記する。

  • 頸管開大部
  • 先進部の下降度
  • 先進部の回旋状況
  • 母体のバイタルサイン
  • CTGのデータ

パルトグラムの異常としては以下のものが有名である。

  • 始めから降りてこない、分娩が開始しない
    子宮頚管の未成熟、または児頭骨盤不均衡の疑い
  • 途中から降りてこない
    微弱陣痛、回旋異常

フリードマン曲線

分娩の進行状態を表すもので、児頭の下降度と頸管の開大度を分娩所要時間に対してあらわしたもの。遷延分娩の診断に役に立つ。典型的にはS字型カーブを描く。分娩第一期から分娩第二期(破水)までを記述する。開きかけた子宮口が途中で止まってしまう続発性開口停止、子宮口開大のラストスパートがかからない活動期開大遅延、潜伏期が延長する潜伏期遷延(原発性微弱陣痛パターン)といった微弱陣痛の分類が知られている。

胎児心拍数陣痛図(CTG)

胎児心拍数陣痛図(CTG)とは胎児心拍数と子宮収縮(陣痛)を経時的に記録した、分娩監視装置である。横軸は3cm/minであり縦軸はbpmとmmHgである。NSTとCSTが知られている。

NST

NSTは分娩開始や過期妊娠、ハイリスク妊娠の妊娠健診時に用いられることが多い。胎児は20~40分ごとに睡眠覚醒を繰り返すといわれている。NSTでは一過性頻脈が認められるまで、または80分間の計測を行う。32週未満であると自律神経の発達が未熟であるために評価方法が異なることに注意する。NSTでは基線が正常範囲にあり、基線細変動が正常に出現していること、一過性頻脈があり、一過性徐脈がなければ正常であることが多い。異常が認められたらCST、VAST(児頭に振動音刺激を与えれば睡眠中でも一過性頻脈が出現する)、BPSを行うこともある。

CST

CSTでは40秒以上持続する子宮収縮が10分間に3回認められるまでオキシトシン、または乳頭刺激を与えてCTGを行う。遅発一過性徐脈や変動一過性徐脈が認められなければ胎児の状態は良好と判定する。NSTにて胎児状態が良好であることが確認できなかった場合や子宮内胎児発育遅延(IUGR)やハイリスク妊娠の場合に行う。前置胎盤、切迫早産、多胎妊娠の場合は禁忌となる。子宮収縮の半数以上に遅発一過性徐脈が見られた場合は胎児ジストレスを疑う。

CTGの所見

CTGにおいて確認すべき項目としては、基線の高さ、基線細変動の有無、一過性変動の有無及び波形である。

胎児心拍数基線とその細変動

正常では胎児の心拍数は110~160bpmであるのが正常である。180bpm以上では高度頻脈、100bpm以下では高度徐脈と判定する。頻脈では母体、胎児の感染や胎児の不整脈を疑う。徐脈では胎児不整脈が多い。正常では6~25bpmの細変動を伴う。細変動の減少、消失は胎児ジストレスの可能性がある。他の細変動の異常としてはサイナイゾルパターンというものが知られており、胎児の心不全を示唆する。貧血、低酸素状態を疑う2~5cpmの正弦波を示す。

一過性変動

一過性頻脈、早発一過性徐脈、遅発一過性徐脈、変動一過性徐脈の4種類が有名である。一過性頻脈は基線よりも15bpm以上の心拍数増加が15秒以上持続するものである。32週未満では基線よりも10bpm以上の心拍数増加が10秒以上持続するものとする。これは胎児が良好である徴候である。早発一過性徐脈は子宮収縮に伴ってほぼ同時に胎児心拍数が減少し、収縮終了とともに回復するものである。児頭圧迫による正常反応である。子宮収縮の波形と心拍数減少の波形が対象形となる。通常、心拍数減少の開始から最下点まで30秒以上でゆるやかに下降する。遅発一過性徐脈は子宮収縮よりも少し遅れて胎児心拍数が減少し、子宮収縮の修了より遅れて心拍数が回復するものである。これは胎盤機能不全を示す徴候である。基線細変動の減少、消失を伴う場合は急速遂娩の必要がある。通常、心拍数減少の開始から最下点まで30秒以上でゆるやかに下降する。変動一過性徐脈は臍帯圧迫を示す所見であり羊水過少症でよく出現する。徐脈の出現と子宮収縮の関係が徐脈ごとに異なる。15bpm以上の心拍数減少が30秒未満の経過で急速におこる。そのた、遷延性一過性徐脈というものもある。これは15bpm以上の心拍数減少が2分以上10分未満持続することである。10分以上の変化は基線の変化とみなす。これは様々な病態で出現するため評価が難しい。

BPS

NSTを利用した胎児well-being評価としてBPS(biophysical profile scoring)が有名である。超音波検査を利用し、呼吸様運動、胎動、筋緊張、NSTの一過性頻脈でスコアリングし点数によって経過観察、分娩を決定する方法である。8点以上が良好と考えられている。呼吸様運動としては30分間に30秒以上続く胸壁、横隔膜の運動があること、胎動としては30分間に躯幹か四肢の動きが3回以上、筋緊張としては30分間に躯幹か四肢の屈曲運動が1回以上、あるいは手掌の開閉を認め、羊水ポケットが2cmより大きいところが認められ、NSTで20~40分未満の測定で一過性頻脈が2回以上認められる、各項目2点で測定していく。他のwell-being評価としては臍動脈や中大脳動脈のパルスドップラーなどが知られている。


  1. ^ a b 日本経済新聞朝刊2016年12月25日付
  2. ^ “子宮収縮薬の適正使用で再注意喚起 胎児の心音など十分に監視するよう呼びかけ”. 医薬品医療機器総合機構(m3.com). (2019年1月25日). https://www.m3.com/clinical/news/652092 2019年12月19日閲覧。 
  3. ^ アトニン-O注 あすか製薬 (PDF)
  4. ^ プロスタルモン・F注射液 丸石製薬 (PDF)
  5. ^ プロスタグランジンE2錠「科研」 科研製薬 (PDF)
  6. ^ オキシトシン注射液「F」 富士製薬工業 (PDF)
  7. ^ ジノプロスト注射液「F」 富士製薬工業 (PDF)






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