再使用ロケット実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/29 16:48 UTC 版)
背景
宇宙開発が抱える問題のひとつに、地球から宇宙へ人や物を運ぶのに要する費用が莫大であることが挙げられるが、最大の原因は輸送手段であるロケットを使い捨てにしているということである。宇宙ロケットの製造費用は数十-数百億円であり、輸送費用の過半を占めている。しかし、ロケットが航空機のように帰還し、整備と燃料補給を受けて繰り返し飛行することが可能であれば、飛行1回あたりの減価償却費ははるかに安くなるため、輸送費用を劇的に安くできると考えられた。
このような観点から様々な再使用ロケット (RLV) が検討され、アメリカではスペースシャトルが実用化されたが、実際には整備に莫大な費用を要し、かえって使い捨てロケットより高くつく結果に終わった(詳しくはスペースシャトルの項を参照)。このため2007年現在、宇宙輸送機は使い捨てロケットが主流である。
しかし、高価なロケットを使い捨てにしている限り、輸送費用の低減には限度がある。また打ち上げのたびにロケットを投棄するため、安全上の問題や環境保全、資源節約の観点からも好ましいものではない。使い捨てロケットは、経済的な再使用ロケットが実現できない時点での、次善の策と言える。
再使用ロケットには様々な形態が検討されているが、その一類型として、1段式で衛星軌道に達する (SSTO)、垂直離着陸式 (VTOL) のロケットがある。この形態は1970年代にアメリカで発案され、太陽発電衛星の建設や宇宙観光旅行を可能にすると考えられた。1990年代にはマクドネル・ダグラス社によりデルタクリッパーが設計され、垂直離着陸技術を確認するための実験機DC-Xが飛行に成功した。また日本では、日本ロケット協会が観光丸と称する宇宙観光用ロケットを想定し、技術のみならず経済性やインフラストラクチャーなど、実際の運行を想定した検討が行われたが、いずれも当時の技術では衛星軌道に達することは不可能で、実現には至らなかった。
しかし、将来の再使用ロケット実現に向け、要素技術の開発は必要と考えられた。そこで1998年、日本の宇宙科学研究所は、衛星軌道に達する能力はないが小型・安価で繰り返し飛行することができるロケットを開発・運用し、技術の蓄積を図ることを計画した。これがRVTである。
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