二酸化硫黄 構造

二酸化硫黄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 08:43 UTC 版)

構造

二酸化硫黄の構造
二酸化硫黄の2つの共鳴構造

二酸化硫黄はC2v対称折れ線形構造である。電子に着目すると、硫黄原子の形式酸化数は+4、電荷は0で、5つの電子対を持っている。分子軌道法の点から見ると多くの電子対が結合に関与しており、典型的な超原子価化合物であると言われていたが、実際にはオゾン類似の比較的単純な結合構造であることが判明している。

硫黄酸化物一酸化硫黄と二酸化硫黄のS-O結合長は、一酸化硫黄SO (148.1 pm)、二酸化硫黄SO2 (143.1 pm) とOの数が増えるにつれて短くなっているが、酸素の同素体二酸素オゾンのO-O結合長は、二酸素O2 (120.7 pm)、オゾンO3 (127.8 pm) と長くなっている。さらに、結合解離エネルギーが一酸化硫黄と二酸化硫黄ではSO (524 kJ mol-1)、SO2 (548 kJ mol-1) と大きくなっているのに対し、二酸素とオゾンではO2 (490 kJ mol-1)、O3 (297 kJ mol-1) と小さくなっている。これに関しては、オゾンの各O-O結合が1.5重結合[5]であるのに対し、二酸化硫黄の場合はd軌道の混成による超原子価構造によりS=O二重結合となっている証拠であると説明された時代もあった(現在でもその誤った説明がなされている書籍などもある)。しかしながら硫黄を含む超原子価化合物(と呼ばれていた分子)の場合、理論計算(自然結合軌道を用いる)ではd軌道の結合への寄与は無視出来る程度に小さいことが少なくとも1980年代には判明しており[6][7][8][9][10]、この解釈が誤りなのは明らかである。つまり、硫黄原子の3d軌道は結合に関与するにはエネルギー的に高すぎであり[11]、2本のS-O σ結合とO-S-O鎖を繋ぐ三中心四電子π結合からなるルイス構造が最適な描写である(この結果S-O結合の結合次数は1.5となる)[5]。近年の実験により、二酸化硫黄のS-O結合はオゾンと同じように1.5重結合であるが、電気陰性度の違いにより硫黄原子が+2価、酸素原子が-1に近くなる事による両者の間のイオン結合的な力が働き、これが加算されることで2重結合なみの結合エネルギーとなっている事が判明している[12][13][14]


  1. ^ a b 3.2 Properties of inorganic compounds ; Part 4: Silicon - Zirconium” (英語). Kaye and Laby Online (based on 16th edition (published 1995)). イギリス国立物理学研究所 (1995年). 2017年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月18日閲覧。
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  3. ^ "二酸化イオウ". 岩波理化学辞典 (第3版増補版第3刷 ed.). 岩波書店. 5 November 1982. p. 974.
  4. ^ Dr. Mike Thompson, Winchester College, UK http://www.chm.bris.ac.uk/motm/so2/so2h.htm
  5. ^ a b グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン英語版. ISBN 978-0-08-037941-8 p. 700
  6. ^ Kutzelnigg, W. (1984). “Chemical Bonding in Higher Main Group Elements”. Angew. Chem. Int. Ed. 23: 272-295. doi:10.1002/anie.198402721. 
  7. ^ Reed, A. E.; Weinhold, F. (1986). “On the role of d orbitals in sulfur hexafluoride”. J. Am. Chem. Soc. 108: 3586-3593. doi:10.1021/ja00273a006. 
  8. ^ Mezey, P. G.; Haas, E. C. (1982). “The propagation of basis set error and geometry optimization in ab initio calculations. A statistical analysis of the sulfur d‐orbital problem”. J. Chem. Phys. 77: 870. doi:10.1063/1.443903. 
  9. ^ Gilheany, D. G. (1994). “Ylides, phosphoniumNo d Orbitals but Walsh Diagrams and Maybe Banana Bonds: Chemical Bonding in Phosphines, Phosphine Oxides, and Phosphonium Ylides”. Chem. Rev. 94: 1339-1374. doi:10.1021/cr00029a008. 
  10. ^ Dobado, J. A.; Martinez-Garcia, H.; Molina, J. M.; Sundberg, M. R. (2000). “Chemical Bonding in Hypervalent Molecules Revised. 3. Application of the Atoms in Molecules Theory to Y3X-CH2 (X = N, P, or As; Y = H or F) and H2X-CH2 (X = O, S, or Se) Ylides”. J. Am. Chem. Soc. 122: 1144-1149. doi:10.1021/ja992672z. 
  11. ^ Stefan, T.; Janoschek, R. (2000). “How relevant are S=O and P=O Double Bonds for the Description of the Acid Molecules H2SO3, H2SO4, and H3PO4, respectively?”. J. Mol. Model. 6 (2): 282-288. doi:10.1007/PL00010730. 
  12. ^ Powers, D.; Olson, H. G. (1980). “Determination of S-O bond order in sulfur dioxide and dimethyl sulfite using a low‐energy particle‐accelerator technique”. J. Chem. Phys. 73: 2271. doi:10.1063/1.440376. 
  13. ^ Jürgensen, A.; Cavell, R. G. (2000). “A comparison of the oxygen 1s photoabsorption spectra of SO2 and NO2”. Chem. Phys. 257: 123. doi:10.1016/S0301-0104(00)00147-6. 
  14. ^ Grabowsky, S.; Luger, P.; Buschmann, J.; Schneider, T.; Schirmeister, T.; Sobolev, A. N.; Jayatilaka, D. (2012). “The Significance of Ionic Bonding in Sulfur Dioxide: Bond Orders from X-ray Diffraction Data”. Angew. Chem. Int. Ed. 51: 6776-6779. doi:10.1002/anie.201200745. 
  15. ^ アーカイブされたコピー”. 2008年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年12月18日閲覧。
  16. ^ 桜島の火山活動解説資料(平成22年1月)福岡管区気象台火山監視・情報センター,鹿児島地方気象台
  17. ^ トンガ噴火は日本に「令和の米騒動」引き起こすか? 米教授が指摘する“圧倒的に少ない”物質とは”. AERA.com (2022年1月20日). 2022年1月24日閲覧。
  18. ^ 大気中の二酸化硫黄(SO2),浜松市






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