レディ・ジョーカー
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映画
レディ・ジョーカー | |
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レディ・ジョーカー | |
監督 | 平山秀幸 |
脚本 | 鄭義信 |
原作 | 高村薫 |
製作 | 石原清行 |
製作総指揮 | 中村雅哉 |
出演者 |
渡哲也 徳重聡 吉川晃司 國村隼 大杉漣 吹越満 加藤晴彦 菅野美穂 辰巳琢郎 岸部一徳 長塚京三 斉藤千晃 |
音楽 | 安川午朗 |
撮影 | 柴崎幸三 |
製作会社 | 「レディ・ジョーカー」製作委員会 |
配給 | 東映 |
公開 | 日本 2004年12月11日 |
上映時間 | 121分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
製作費 | 5.0億円[7] |
興行収入 | 4.0億円[8] |
日活が撮影所創業50周年を期して、石原プロモーションの特別協力を得て制作された[9]。配給東映[7]。渡哲也・徳重聡W主演[7]。2004年12月11日公開。
映画化構想には5年が費やされた[1]。被差別部落問題を取り扱う部分があることから、一部で上映自粛の動きも見られた。
映画は2005年6月にDVD化された[10]。
あらすじ
昭和22年、物井清三の兄は日之出麦酒を解雇された。解雇の真の理由が、被差別部落の出身者と関わったことだと知った兄は、会社に意見の手紙を送った。
平成16年10月、『日之出ビール』の城山社長が誘拐され、5億円を要求する手紙が残された。差出人は「レディ・ジョーカー」と記されていた。
その5か月前、物井清三(渡哲也)の孫がバイク事故で死亡した。清三の娘婿である秦野浩之は、息子が暴走した理由が日之出ビールにあるとして、会社に恨み言を言った。死んだ息子は、日之出ビール社長の姪である佳子の恋人であり、そのために血筋を調べられた。秦野の実父は被差別部落の出身者だったのだ。そんな秦野に、日之出ビールと関わりのある総会屋が、密かに入手した50年以上前の清三の兄の手紙を渡し、会社を強請れと持ちかける。
城山社長誘拐の実行犯は、清三の仲間の布川たちだった。社長は56時間で無事に解放され、身代金も奪われなかった。城山社長は実行犯から日之出ビールの商品価値を人質として新たに20億円を要求され、それを警察にも隠していた。実行犯は、社長の姪の恋人の差別問題も関係があると仄めかしていた。企業イメージから、差別は決して公に出来ない問題だった。
物井清三は、品川署の半田刑事(吉川晃司)と繋がりがあり、警察の内部情報を得ていた。「レディ・ジョーカー」の主犯は清三であり、半田も実行犯のメンバーだった。偽の身代金受け渡しを演じ、誤認逮捕で警察を翻弄する清三たち。日之出ビールの商品には異物が混入され、出荷停止に追い込まれる。
レディ・ジョーカーと半田の関係に気付き始める本庁の合田刑事(徳重聡)。日之出ビールでは密かに、「レディ・ジョーカー」に20億円を送る準備を始める。城山社長の弟で、佳子の父である副本部長は心労から自殺する。
警察は半田刑事が犯人一味であると断定する。上司の警部は責任を取らされる絶望感から自殺する。面子にこだわる警察上層部は、半田の事情聴取をためらう。単独で半田を追い、ナイフで刺される合田刑事。警察幹部を動揺させたい半田は自首をし、完全黙秘を貫く。
気が抜けて、奪った金に興味を示さない清三たち。実行犯の一人で金を保管していた高は、総会屋に連れ去られる。城山社長は退陣し、総会屋との縁を切るために背任の罪を被る。傷が癒えて、刑事を続けると語る合田。清三の仲間の布川は、重い障害のある娘を残して連絡を絶つ。清三は、「レディ」と愛称で呼ばれるその娘を黙って引き取る。
キャスト(映画)
- 物井清三 - 渡哲也: 薬局の店主。レディ・ジョーカーの主犯。
- 合田雄一郎 - 徳重聡: 警視庁捜査一課の刑事。
- 半田修平 - 吉川晃司: 品川署の刑事。レディ・ジョーカーの一味。
- 布川淳一 - 大杉漣: トラック運転手。レディ・ジョーカーの一味。
- 高克己 - 吹越満: 信用金庫の職員。レディ・ジョーカーの一味。
- 松戸陽吉 - 加藤晴彦: 旋盤工。レディ・ジョーカーの一味。
- 城山恭介 - 長塚京三: 日之出麦酒社長。映画では殺害されない。
- 城山佳子 - 菅野美穂: 恭介の姪。原作では姓が杉原。
- 白井誠一 - 岸部一徳: 日之出麦酒副社長。
- 倉田誠吾 - 清水綋治: 日之出麦酒副社長。
- 城山武郎 - 辰巳琢郎: 佳子の父で恭介の弟。原作では妹婿で姓は杉原。
- 平瀬悟 - 國村隼: 警視庁警部補。
- 土肥正行 - 外波山文明: 品川署刑事課長代理。原作では土肥勝彦。
- 神崎秀嗣 - 矢島健一: 警視庁刑事部捜査第一課長。
- 安西憲明 - 菅田俊: 品川署の刑事。
- 青柳誠一 - 光石研: 品川署の刑事。
- 西村寛司 - 松重豊: 総会屋。原作では西村真一。
- 物井清二 - 谷津勲: 清三の実兄。原作では姓が岡村。
- 秦野浩之 - 綾田俊樹: 歯科医。清三の娘婿。妻とは死別。
- 秦野孝之 - 永岡佑: 浩之の息子。
- レディ - 斎藤千晃: 布川の娘。本名は、さち。
- 城山玲子 - 島ひろ子: 武郎の妻。原作では恭介の妹で姓は杉原。
スタッフ(映画)
- 原作:高村薫
- 監督:平山秀幸
- 脚本:鄭義信
- 企画:近藤晋
- 総括プロデューサー:永江信昭、藤田裕一
- プロデューサー:横手実、藤田義則、福島聡司
- 撮影:柴崎幸三
- 照明:上田なりゆき
- 美術:中澤克巳
- 録音:宮本久幸
- 編集:川島章正
- 音楽:安川午朗
- 擬斗:高倉英二
- 装飾:松本良二
- 衣裳:岩崎文男
- ヘアメイク:森田京子
- 視覚効果:橋本満明
- キャスティング:安藤実
- 助監督:蝶野博
- 製作担当:宿崎恵造
- 製作管理:安村重幸
- 公式サイト製作:デジタルハリウッド
- 企画・製作:日活
- 特別協力:石原プロモーション
- 製作:「レディ・ジョーカー」製作委員会(日活、東映、毎日新聞社、テレビ朝日、葵プロモーション、スポーツニッポン、日本出版販売)
- 配給:東映
- 上映時間:121分
製作
2003年11月19日、石原清行日活(株)常務取締役映像開発本部長がスポーツ誌6誌だけを限定して企画発表[7]。1963年の石原プロモーション設立以来、関係が必ずしも良くなかった日活と石原プロが40年ぶりに組んだ[7]。渡哲也石原プロ社長としても2004年夏に故石原裕次郎の17回忌を控え、徳重聡の映画デビューを華々しく飾ってやりたいという思いから合意に至った[7]。渡の日活映画出演は1971年の『関東破門状』以来33年ぶり[7]。また東映が同時期に『半落ち』という社会派サスペンスを手掛けていたことから、日活と東映の思惑が一致し、東映が一部製作に参加した他、配給を担当した[7]。両社が本格的に組むのは初めてのこと[7]。製作に関わった東映サイドからは物井清三役に高倉健を推す意見も出されたが[7]、日活サイドは渡哲也でないと製作を進めないと突っ張って押し切った[7]。直接製作費は5億円で、日活が筆頭で幹事会社を務める他、東映・毎日新聞・テレビ朝日・葵プロモーション、スポーツニッポン、日本出版販売で製作委員会を組み、各社出資も行った[7](出資比率不明)。石原プロモーションは特別協力というクレジットで出資はしていない[7]。2004年5月27日に赤坂プリンスホテルで行われた製作発表会見では、日活の中村雅哉社長が調布撮影所の創業50周年に待望の大型作品を製作できることは光栄だ」などと話した[11]。坂上順東映常務は「ハリウッド映画に押されている日本映画が踏み止まりより強くなるため、日活、石原プロと組めたのは意味がある」などと[11]、高村薫は「映画化は正直無理だろうと思っていた」などと話した[11]。
- ^ a b “レディ・ジョーカー”. CINEMA TOPICS ONLINE. 2016年1月7日閲覧。
- ^ “レディ・ジョーカー(上)|推理小説|文学・小説|書籍|毎日新聞社”. 毎日新聞出版. 毎日新聞出版. 2015年12月1日閲覧。
- ^ “レディ・ジョーカー(下)|推理小説|文学・小説|書籍|毎日新聞社”. 毎日新聞出版. 毎日新聞出版. 2015年12月1日閲覧。
- ^ “レディ・ジョーカー(上)|推理小説|文学・小説|書籍|新潮社”. 新潮文庫. 新潮社. 2015年12月1日閲覧。
- ^ “レディ・ジョーカー(中)|推理小説|文学・小説|書籍|新潮社”. 新潮文庫. 新潮社. 2015年12月1日閲覧。
- ^ “レディ・ジョーカー(下)|推理小説|文学・小説|書籍|新潮社”. 新潮文庫. 新潮社. 2015年12月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 「インタビュー/石原清行日活(株)常務取締役映像開発本部長 『3年計画で配給部門の売上倍増を目指す』」『AVジャーナル』2004年1月号、文化通信社、24–27頁。
- ^ 「2005年度 日本映画・外国映画 業界総決算 経営/製作/配給/興行のすべて」『キネマ旬報』2006年(平成18年)2月下旬号、キネマ旬報社、2006年、178頁。
- ^ “レディ・ジョーカー|解説”. 日活. 日活. 2015年12月1日閲覧。
- ^ “レディ・ジョーカー”. 日活. 日活. 2015年12月1日閲覧。
- ^ a b c 「"製作NEWS 東映=日活『レディ・ジョーカー』高村薫原作のベストセラー映画化」『映画時報』2004年6月号、映画時報社、28–29頁。
- ^ “第30回ATP賞”. 全日本テレビ番組制作社連盟. 2015年12月1日閲覧。
- ^ “連続ドラマW レディ・ジョーカー”. 20世紀FOX. 2015年12月1日閲覧。
固有名詞の分類
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