リトルボーイ 概要

リトルボーイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 09:15 UTC 版)

概要

ガンバレル型核爆弾の構造

全長3.05 m、最大直径0.71 m、総質量4,400 kg。番号はMk.1。ウラン235を用いており、二分されたパイプの両端に置かれたウラン235の塊の一方を火薬の爆発力でもう一方のウラン塊にぶつけ、臨界量を超過させて起爆するガンバレル型である。

積載されたウラン140ポンド(約63.5 kg)のうち、1.38 %(約876.3 g)が核分裂反応を起こしたと推定されている[2]

名称

原子爆弾のコードネームは、プルトニウム原子爆弾に付けられていた。ガンバレル方式・インプロージョン方式のそれぞれに、Mark 2「シンマン」とMark 3「ファットマン」とのコードネームが与えられた。これらの命名を行った人物は、ロバート・オッペンハイマーのかつての教え子で、自らもマンハッタン計画に参加したロバート・サーバーだった。サーバーはそれぞれの爆弾の外観に基づいて名前を選んでおり、Mark 2は細長い形状であったため、ダシール・ハメットの探偵小説『影なき男 (原題:The Thin Man)』とその映画化作品から着想を得て、「シンマン(Thin Man、痩せ男)」と命名された。シンマンの開発は1944年に中止されたが、リトルボーイはこのシンマンの寸法よりもさらに小形になったため、サーバーとは別の人物によってリトルボーイ(少年)と呼ばれるようになった[3]

日本語では、単に「リトルボーイ」と表記することもあるが、「少年[4]」や「かわいい少年[5]」、または「ちび[6][7]」と翻訳されることもある。

核出力

広島の原子雲、リトルボーイ(1945年8月6日)

現在では(2005年以降)、核出力の最良推定値は、TNT換算で16 kt ± 2 kt である[8][9]。1TNT換算トン = 4.184×109 J なので、 6.694×1013 J ということになる。なお、長崎に投下されたファットマンの核出力は、21 kt ± 2 kt である。

核出力についての過去の数値は様々であった。

  • エノラ・ゲイの点火装置設定担当だったウィルアム・パーソンズ英語版による視認による推定値:18 kt
  • トルーマン大統領の発表:20 kt(パーソンズの推定値をスピーチライターが丸めたもの)
  • 物理学者ウィルアム・ペニーらによる、広島の現地での測定による数値:12 kt±1 kt[10]
  • 燃焼力に基づくもの:13.4 kt - 13.7 kt[11]
  • 物理学者フレデリック・ライネスによる1953年の推定値:15 kt
  • ロスアラモス国立研究所のジョン・マリク(John Malik)による1985年の推定値:15 kt(不確かさは20%)[12](このMalikによる推定値は広範に引用されている。)

  1. ^ ガンバレルとは、の弾の通る部分、つまり「銃身」のこと。機構の詳細はガンバレル型原子爆弾参照
  2. ^ http://www.atomicheritage.org/history/little-boy-and-fat-man
  3. ^ Serber, Robert; Crease, Robert P. (1998). Peace & War: Reminiscences of a Life on the Frontiers of Science. New York: Columbia University Press. ISBN 9780231105460. OCLC 37631186  P.104
  4. ^ 広島・長崎の被災状況”. 長崎市. 2023年6月3日閲覧。
  5. ^ 知っ得・なっ得コーナー”. 北海道ノーモア・ヒバクシャ会館. 2023年6月3日閲覧。
  6. ^ 長崎原爆資料館学習ハンドブック”. 長崎原爆資料館 (2013年6月). 2023年6月3日閲覧。
  7. ^ Clarence Fernandez編集 (2020年8月4日). “原爆投下から75年 閃光、そして世界が一変した”. ロイター. 2023年6月3日閲覧。
  8. ^ Reassessment of the Atomic Bomb Radiation Dosimetry for Hiroshima and Nagasaki –Dosimetry System 2002 –, chapter1 Chapter 1 BOMB PARAMETERS, p.57 Table 4,by George D. Kerr, Robert W. Young, Harry M. Cullings, Robert F. Christy, 放射線影響研究所, 2005
  9. ^ この値は、Dosimetry System 2002(2002年線量計測体系)(DS02と呼ばれる再評価体系)の一環である。DS86(1986年線量計測体系)では、15 kt ± 3 kt としていたが、再評価された。
  10. ^ The Nuclear Explosive Yields at Hiroshima and Nagasaki Lord Penney, D. E. J. Samuels and G. C. Scorgie、Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series A, Mathematical and Physical Sciences Vol. 266, No. 1177 (Jun. 11, 1970), pp. 357-424 (76 pages)、Published 1970-06-11
  11. ^ The Yields of the Hiroshima and Nagasaki Nuclear Explosions By John Malik, LA-8819 UC-34, Sep.1985, p.21
  12. ^ The Yields of the Hiroshima and Nagasaki Nuclear Explosions By John Malik,LA-8819 UC-34,Sep.1985、冒頭のABSTRACT,p.1 又は、XI. CONCLUSIONS,p.25
  13. ^ 「リトルボーイ」に使われた大量の高濃縮ウランの出所は明らかになっていない。一般には米ニューメキシコ州ロス・アラモスにあるオークリッジ国立研究所であったとされている。


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