リッチマン、プアウーマン
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作品の評価
受賞
放送途中の9月14日に発売された雑誌『オリ★スタ』の「ドラマ☆AWARD2012夏」で、「オリスタGIRLS1000人が選んだ好きな夏ドラマ」第1位に選ばれた。恋愛ものと同時に現代の企業をリアルに描いた点、展開のテンポの良さ、「毎回、ある謎が登場し、その回のうちに解決してはまた次の謎が……という展開」「ドラマの連続性を生かしたストーリー」などが評価されている[35]。
日刊スポーツ・ドラマグランプリ・2012年夏ドラマ選考では、小栗旬が主演男優賞、石原さとみが助演女優賞を受賞し2部門を制したほか、助演男優賞の3位に井浦新、作品賞でも2位となった[36]。
第74回ザテレビジョンドラマアカデミー賞(2012年11月発表)では、主演男優賞に小栗旬、助演女優賞に石原さとみが選ばれたほか、作品賞で3位、助演男優賞で井浦新が3位、ドラマソング賞で「ヒカリヘ」が2位となっている[37]。
ソーシャルメディアの反響
インスタントメッセンジャーによるSNSサービス「LINE」の石原さとみ公式アカウントあてのメッセージとして、最終回放送前日の「最終回予想」に12万件、「最終回直後の感想」に約16万件が寄せられた[38]。
評論家による評価
本作に関しては、恋愛ドラマの陰にアイデンティティを巡る問題を描いているという複数の指摘がある。早稲田大学文化構想学部教授(テレビドラマ研究)の岡室美奈子は、一見シンデレラ・ストーリー風ながら、偽名を名乗るヒロインや、実の母を知らず戸籍管理のシステムを作って母を探し求める主人公など、主要人物は自分自身がよく分からない者たちとして設定されており、古典的な自分探しのテーマを現代のバーチャルな時代の中で追及する物語であると分析した。そして同時期放送で同じく戸籍問題をテーマとした『息もできない夏』のアプローチがストレートであることと対比し、さまざまな要素の複合的な絡まりの向こうに深いテーマが見えてくる仕掛けがあり、恋愛も要素の一つとしてほどよいさじ加減で含まれていると評価した[39]。
また、ライターの木俣冬は、当初のヒロインの名「千尋」からアニメ映画『千と千尋の神隠し』を連想し、本作の「名前を覚えられない」主人公の設定と同アニメの名前を奪われて湯屋で働くキャラクターたちが登場する物語の構造などに共通性を見出し、やはりアイデンティティの問題を描いているとした。そして「社会の中で便宜上分たれた、リッチとプア、男(日向)と女(真琴)などのカテゴリーを有機的につなげていくことを描いている」、確かなつながりの見えない時代の「さみしい狭間をさまようニッポン人を鮮やかに描いた作品」であると評した[40]。
評論家の宇野常寛とライターの成馬零一の対談では、フジテレビの月9枠という、「面白い作品を作るのと同時に、皆に観てもらえる作品でなければならない」ドラマ枠が試行錯誤の末に見出した新しい恋愛ドラマとして評価されている。この対談では、ここ数年のフジテレビのドラマでは、フジテレビヤングシナリオ大賞出身の脚本家や若手俳優を積極的に起用して、新人を育てようという明確な姿勢があるという流れとともに本作も評価されている。また、トレンディドラマ以降のフジテレビの恋愛ドラマが失ってきた「社会」との接点が、仕事というもう一つのテーマを魅力的に描いたことで取り入れられ、これをバランスよく配したことで恋愛の部分も輝いたと評価している。そして、主人公カップルの恋愛ドラマを盛り上げる「当て馬」の役割が女性のライバルである燿子ではなく、男性の朝比奈であり、主人公の日向を皆で取り合うという構造に制作陣のボーイズラブ的センスを見出している。この背景には、恋愛ドラマの訴求力が低下したゼロ年代のトレンドであった友情ドラマがあり、月9枠として恋愛ドラマを回復するならばもはや同性のライバルではヒロインの当て馬にならず、友情と恋愛の中間である朝比奈と日向の関係を対立構造にして構成し、ゼロ年代的なものをなかったことにせず新しい恋愛ドラマをつくりだしたという点でも重要な作品であったと結論付けられている[41]。
注釈
出典
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