リウマチ学 歴史

リウマチ学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/14 15:06 UTC 版)

歴史

古代

膠原病の証拠を残す最古のものが、アメリカ・テネシー川近くで発掘された紀元前4500年ころのインディアンの人骨に残されている。このインディアンは、関節リウマチにかかっていたと考えられている。

紀元前500年ころすでにヤナギの木の皮から得られる成分「サリチン」が発見され痛み止めとして使用されていたらしい。このサリチンはのちに19世紀後半に、化学者によりアセチルサリチル酸アスピリン)に合成され、1世紀以上にわたって鎮痛薬の主役を務めることになる。

紀元前400年ころ、ヒポクラテスの文献には関節疾患の記載がある。紀元前50年ころに活躍したユリウス・カエサルは関節炎にかかっていたと考えられている。

中世

「リウマチ」という言葉はヨーロッパで古来より関節をおかす疾患を総称していて、現在ではリウマチ熱や関節リウマチといった疾患などの名前に残っている。

ルネッサンスを迎えると、Guillaume Baillou(1558年 - 1616年)は初めてリウマチが全身の筋・骨格の症候であると述べた。痛風は古来他の関節炎とわけて語られることはなかったが、トーマス・シデナム (Thomas Sydenham) がはじめて痛風とリウマチ熱とをわけて記載した。さらには慢性化するリウマチ熱があると述べており、これは現在の関節リウマチに相当すると考えられている。15世紀後半ころには、キナの皮から得られるキニーネがリウマチの治療に用いられ始め、現在の欧米でのヒドロキシクロロキンの使用につながる。また、16世紀からはヤナギの木の皮からえられるサリチル酸がリウマチの治療に用いられ始めた。

近代

関節リウマチをはじめて明確に記載したのは1800年のことで、サルペトリエール病院のAugustin-Jacob Landre-Beauvaisの論文においてである。リウマチ熱 (rheumatic fever) の用語を初めて用いたのはDavid Dundasで、1808年のことである。全身性エリテマトーデスによると思われる皮疹を最初に記載したのはFerdinand von Hebraである(1845年)。強皮症の名称は、1847年Elie Gintracによって初めて用いられた。同じ1847年にはAlfred B. Garrodが痛風患者から尿酸を検出する方法を確立した。また、関節リウマチ (Rheumatoid arthritis) という言葉を最初に用いたのもGarrodで、1858年のことである。1862年にはMaurice Raynaudがレイノー現象を報告している。1866年アドルフ・クスマウル (Adolf Kussmaul) とRudolf Maierは剖検例をおかしていた新たな疾患に対して結節性動脈周囲炎なる疾患名を冠した。1886年にはErnst L. Wagnerが多発性筋炎の用語をはじめて使用した。皮膚筋炎は、1891年にHeinrich Unverrichtが記載している。全身性エリテマトーデスの内臓病変を最初に記載したのはウイリアム・オスラーで、このときは "exudative erythema" という名称がもちいられていた。

また1899年ドイツの製薬会社バイエルからアスピリンが発売され、薬物治療が始まった。

進行性全身性強皮症 (PSS) という言葉を最初に使用したのは1945年のRH Goetzであるが、現在では進行性という言葉は適切でないとされ用いられない。全身性硬化症 (systemic sclerosis; SSc) と呼ばれることが多い。Jacob ChrurgとLotte Straussが好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧名:Churg-Strauss症候群)を報告したのは1951年のことである。1964年、Richard H. WinterbauerがCRST(後のCREST)症候群を記載した。

膠原病という概念の誕生

近代に入って、全身性エリテマトーデスといった古典的なリウマチ疾患を初めとしたさまざまな疾患の病態が解明されていき「リウマチ=関節をおかす疾患」といった概念でまとめるのが難しくなり、臨床像による概念から病態による「全身の臓器をおかす疾患」という概念に発展していっていった。

そこで、現在では病理学的にこれらの疾患がコラーゲン(膠原)のある部位が侵されていたということに由来して、「膠原病:collagen diseases」という疾患概念が誕生し、またコラーゲンのある部位とは専門的には結合組織と言われることから「結合組織病」(connective tissue diseases, CTD) ともいわれる。日本でも現在は一般的に「膠原病」という呼び名が定着している。

自己免疫性疾患

また最近では、病態としてこれら疾患の発症には免疫が関与していることが判明しており「自己免疫性疾患」(autoimmune disorders) という概念が確立され、膠原病だけでなくクローン病潰瘍性大腸炎などといった幅広い疾患を含んだ概念が確立してきた。








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