ラファエロの間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/06 09:57 UTC 版)
署名の間
「署名の間」はラファエロが最初に手がけた部屋である。この部屋はユリウス2世の書庫であり、学習に供された部屋であった。もともとはここに使徒座署名院最高裁判所 (en) が置かれていたことから、その名がある。キリスト教とそれ以前の精霊の調和、および教皇の蔵書のテーマである神学、哲学、法学、詩作の調和を表現したトンド (en) として制作されており、ルネット(壁と円天井が接する部分にある半円形の部分、en)の上に描かれている。この部屋の絵画の題材は、世俗的および霊的な知恵と、ルネサンス人文主義がともに認めるキリスト教とギリシャ哲学の調和である。この部屋で教会会議が行われ、また重要書類への教皇の署名が行われたことから、知恵と調和はもっとも適切な主題と言える。
聖体の論議
ラファエロが1508年または1509年、最初に描いたのは「聖体の論議」である。この名前は、秘跡に対する祈りのことを示す、古い呼び方である。絵画中では地上と天上の両方に広がる存在として教会が表現されている。
アテナイの学堂
1509年の終わりに、ラファエロは「聖体の論議」の向かい側の壁に次の絵を描き始めた。これは「アテナイの学堂」と名付けられ、この部屋の隣のユリウス2世の書庫が、学問の部屋としての位置づけを持っていたことから、哲学的な理性によって真実を探ることが主題となっている。ラファエロの作品中、もっとも広く知られているものであろう。
パルナッソス
ラファエロは1509年の終わりから1510年の初めあたりに、3つ目の絵画の制作を始めた。これが「パルナッソス」で、ギリシャ神話ではアポローンとミューズたちが住み詩作が祭られている場所である、とされている。この絵画では、アポローンとミューズの周囲に、当時の詩人が多く描かれている。
枢要徳
この部屋の4つ目の壁には、ラファエロの工房の弟子たちによる2つの絵があり、その上のルネットに「枢要徳」と題された1511年にラファエロが制作した絵画がある。「枢要徳」という題名は(もっとも重要な徳目である)忍耐(あるいは勇気)、慎重さ、自制を表しており、それぞれ3人の女性によって象徴的に表現されている。
- ^ Roger Jones and Nicholas Penny, Raphael, New Haven, 1983, 113; Ingrid D. Rowland, "The Vatican Stanze," in The Cambridge Companion to Raphael, ed. Marcia B. Hall, Cambridge, 2005, 111.
- ^ Jones and Penny, 117; Rowland, 112.
- ^ Jones and Penny, 117; John Pope-Hennessy, Raphael, London, 1970, 112; Rowland, 113.
- ^ Jones & Penny, 118-121; Pope-Hennessy, 115.
- ^ Jones & Penny, 118; Rowland,112-113.
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