ヤング図形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/07 10:15 UTC 版)
ヤング盤は、ケンブリッジ大学の英国人牧師・数学者アルフレッド・ヤング (Alfred Young, 1873-1940) により 1900年に導入された。その理論は、アルフレッド・ヤング自身およびアラン・ラスクー (Alain Lascoux)、パーシー・マクマホン (Percy Alexander MacMahon)、ギルバート・ロビンソン (Gilbert de Beauregard Robinson)、ジァン・カルロ・ロータ (Gian-Carlo Rota)、マルセル・ポール・シュッツェンベルジェ(Marcel-Paul Schützenberger)、リチャード・スタンレー(Richard P. Stanley)その他の数学者により、さらに発展した。
定義
ヤング図形
ヤング図形あるいはフェラーズ図形(フェラーズずけい、英: Ferrers diagram)とは、数 n の分割を表現する方法である。n を正整数とする。分割とは、n をいくつかの正整数の和として
- n = k1 + k2 + … + km
- k1 ≧ k2 ≧ … ≧ km
と表すことである。この分割は i 行目は ki 個の箱をもつ m 行からなる合計 n 個の箱により表現できる。これをヤング図形という。ここで、各行は左寄せにする。
この分割を k = (k1, k2, …, km) とする。このとき、k に共役な分割(英: partition conjugate to k)とは、各列の箱の数からなる n の分割のことをいう。つまり、各ヤング図形に対し、対角線に沿って縦横を反転した共役ヤング図形が存在する。
右上図は、分割 10 = 5 + 4 + 1 に対応するヤング図形である。この共役分割は、 10 = 3 + 2 + 2 + 2 + 1 である。
ヤング盤
ヤング盤は、ヤング図形を1つ取り、同図形の n 個の箱に 1, 2, …, n の数を、以下の制約に基づいて埋めることによって得られる。
- 各行で、数は左から右に増加する。
- 各列で、数は上から下に増加する。
各数が1つの箱に必ず1回きり現れるとき、その盤を標準盤(英: standard tableau)という。右上図は、分割 10 = 5 + 4 + 1 に対応する標準盤の一つである。
半標準盤(英: semi-standard tableaux)は、この変種で、全ての数が盤に現れる必要はない代わりに、ある数が複数個の箱に現れうるものである。半標準盤では、上の最初の制約が、以下のように弱められる。
- 各行で、数は左から右に非減少である。
半標準盤は、1, 2, …, t のどの数も持ちうる。ここで一般に、t は特定されている。この集合 1, 2, …, t から全ての数が半標準盤に現れる必要はなく、またある数は複数回現れても良い。数は列の中では増加しなければならないので、半標準盤が存在するためには、t ≧ m が必要である。
表現論における応用
ヤング図形は、対称群の複素数体上の既約表現と一対一対応をもつ[1]。これは、既約表現を構成するヤング対称子(英: Young symmetriser)を特定するのに便利である。対応するヤング図形から、表現に関する多くの事実を推論することができる。以下に、表現の次元を決定する例と、表現の制限の例の2つを記述する。両方の例において、そのヤング図形を使うだけで、表現のある性質を決定できることを見る。
表現の次元
分割 λ に対応する既約表現 πλ の次元は、その表現のヤング図形から得られる異なるヤング盤の数に等しい。この数は、フック長の公式から計算できる。
ヤング図形 λ の中のある箱 x のフック長(英: hook length) hook(x) とは、同一行の右にある箱の数と同一列の下にある箱の数の和に 1 (その箱自身)を加えた数である。フック長の公式によると、既約表現 πλ の次元は、n! を、同表現のヤング図形の全箱のフック長の積で割った数に等しい。
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ヤング盤は、対称群の任意の体の上の表現を構成し、その構造を研究することもできる。 正標数の場合には、これらの表現は既約とは限らない[2]。
- ^ Sagan 2001, Theorem 2.4.6.
- ^ (Sagan 2001)のTheorem 2.4.6の後にある注意を見よ。
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