マドリード地下鉄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 13:59 UTC 版)
マドリード地下鉄 Metro de Madrid | |
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アントニオ・パラシオス(Antonio Palacios)設計の典型的なマドリード地下鉄の入口、トリブナル駅 | |
基本情報 | |
国 | スペイン |
所在地 | マドリード |
種類 | 地下鉄 |
開業 | 1919年10月19日 |
所有者 | マドリード |
公式サイト |
metromadrid |
詳細情報 | |
総延長距離 | 293 km (182 mi)[1] |
路線数 | 13 |
駅数 | 302 |
輸送人員 | 657,210,000人 (2018年)[2] |
軌間 | 1,445 mm (4 ft 8 7⁄8 in) |
電化方式 |
直流架空電車線方式 600V (1号線–6号線) 1500V (7号線–12号線) |
最高速度 |
70 km/h (43 mph) (1号線–6号線) 110 km/h (68 mph) (7号線–12号線) |
路線図 | |
地下鉄の開業は1919年、路線数は13、駅数は231で、路線長は282.5 キロメートルある。またこの他に Metro Ligero というライトレール路線が2007年に開業し、3路線38駅で路線長28キロメートルである。
歴史
マドリード地下鉄の最初の路線は、1919年10月17日にメトロ・アルフォンソ8世会社(Compañía de Metro Alfonso XIII)の運営で3.5 キロメートルの区間に8駅で開業した。狭断面で建設され、駅には60 メートルのプラットホームを備えていた。この路線の延長工事と他の2路線の建設はそのすぐ後に行われた。1936年には地下鉄網には3つの路線とオペラ駅(Opera)とノルテ駅(Norte)の間の支線が存在していた。これらの全ての駅はスペイン内戦時には防空壕として用いられた。
スペイン内戦後、地下鉄網の拡張工事は少しずつ進められていった。1944年、4号線が建設されて、2号線の支線のゴヤ駅(Goya) - ディエゴ・デ・レオン駅(Diego de León)間を1958年に4号線へ吸収した。この支線は建設当初から4号線の一部となるべく意図されていたものであったが、4号線が建設されるまで2号線の支線として用いられていた。
1960年代には、プラサ・デ・エスパーニャ駅(Plaza de España)とカラバンチェル駅(Carabanchel)の間の郊外鉄道線が建設され、プラサ・デ・エスパーニャ駅で3号線と、また同駅で2号線のノビシアード駅(Noviciado)と長い通路で接続した。さらに5号線が狭断面であるが90 メートルのプラットホームをもって開業した。5号線の最初の区間の開業のすぐ後に、1号線のプラットホームが60 メートルから90 メートルへと延長され、また隣のイグレシア駅(Iglesia)と500 メートル以下しかなく近すぎるためチャンベリ駅(Chamberí)が閉鎖された。旧チャンベリ駅は現在では地下鉄博物館となっている。
1970年代初め、マドリードの好況に伴う人口の流入、スプロール現象に対応するために、地下鉄網は大規模に拡張された。新線は広断面で、115 メートルのプラットホームで計画された。4号線と5号線も同様に拡張された。1979年、まずい管理により経営危機に陥った。既に着工していた工事は1980年代に完成されたが、他の全てのプロジェクトは取り消された。これらのプロジェクト全ての完成後、マドリード地下鉄には100 キロメートルにのぼる路線が存在し、また郊外鉄道線はアロンソ・マルティネス駅(Alonso Martínez)まで延長されて10号線に転換した。
1990年代初め、地下鉄網の管轄は公営事業へと移管され、メトロ・デ・マドリード(Metro de Madrid)となった。さらに大規模な拡張プロジェクトが提案された。1号線、4号線、7号線が拡張され、またマドリード郊外地域に向けて新線である11号線が建設された。8号線と10号線は統合されてより長い新しい10号線となり、新しい8号線が地下鉄網をマドリード=バラハス空港へと接続するために建設された。さらに拡張された9号線はマドリード郊外から初めて離れて、マドリード南東にある2つの町、リバス=バシアマドリードとアルガンダ・デル・レイ(Arganda del Rey)へ到達した。
2000年代初期の巨大プロジェクトでは50 キロメートルにもおよぶ新線を建設した。マドリード市街のヌエボス・ミニステリオス駅(Nuevos Ministerios)と空港を直結する8号線の延長、マドリード南部郊外に40 キロメートルのメトロスール(MetroSur)と呼ばれる環状線の建設などが行われた。
メトロスールはヨーロッパでも最大規模の土木プロジェクトで、2003年4月11日に開業した。40 キロメートルのトンネルに10号線との乗換駅を含めて28の新駅がある。10号線と乗り換えることでマドリード中心部や郊外鉄道線へアクセスすることができる。建設は2000年6月に始まり、環状線全体を3年以内で完成させた。マドリード南部の5つの町、ヘタフェ、モストレス、アルコルコン、フエンラブラーダ、レガネスを結んでいる。
現在のマドリード市政府は地下鉄網の拡張に多くの努力を注いでいる。近年完了した2003年-2007年計画では、エスペランサ・アギーレマドリード自治州首相は、路線の新設と既存路線のほとんど全ての拡張工事に数百万ドル規模のプロジェクトを実施した。このプロジェクトには90 キロメートルに上る新線と80の新駅建設が含まれている。この計画により、それまで地下鉄が通じていなかった多くの地域、ビジャベルデ(Villaverde)、マノテーラス(Manoteras)、カラバンチェル・アルト(Carabanchel Alto)、ラ・エリーパ(La Elipa)、ピナール・デ・チャマルティン(Pinar de Chamartín)などへ地下鉄を開通させ、東や北の郊外地区、コスラーダ、サン・フェルナンド・デ・エナーレス(San Fernando de Henares)、アルコベンダス、サン・セバスティアン・デ・ロス・レージェスにも地下鉄網が延びた。マドリードでは初めて、3つのライトレールも建設され、西側郊外のポスエロ・デ・アラルコン(Pozuelo de Alarcón)、ボアディージャ・デル・モンテ(Boadilla del Monte)へmL2、mL3、北側の郊外のサンチナーロ(Sanchinarro)とラス・タブラス(Las Tablas)へmL1が開業した。mLはMetro Ligero(メトロ・リヘーロ)の略である。最も近年の拡張としては、マドリード・バラハス空港T4(ターミナル4)の8号線の接続がある。
駅の設計と設備
マドリード地下鉄の駅は、その設計により建設年代が分かる。狭小断面の路線にある古い駅はとてもコンパクトで、パリ地下鉄の駅にかなり似ている。駅ごとに異なる色合いのタイルで装飾されている。近年、これらの駅の大半は改装されて、単一色のプレートになっている。1970年代後半から1990年代初期に掛けて建設された駅はよりゆったりとしており、多くがクリーム色の壁になっている。
一方、最も近年に建設された駅はスペースを念頭に置いて建設されており、自然な感じの照明や余裕のある入口など世界でも最もよいと思われる。駅ごとに異なる色合いを使っており、単一色のプレートを使って明るい色で駅全体を覆っている。近年建設された乗換駅は白い壁になっているが、これが基準とされているわけではない。
ほとんどの駅には対向式のプラットホームが建設されており、少数の乗客の多い乗換駅についてはこの対向式ホームに加えて島式ホームも備えており、対向式ホームが出口専用にされている。この方式はもともとバルセロナ地下鉄で採用されたもので、スパニッシュ・ソリューション(Spanish Solution)と呼ばれている。この方式が使われている駅は以下の通りである。
- 2号線 クアトロ・カミーノス駅(Cuatro Caminos)
- 4号線 アルグエージェス駅(Argüelles)
- 5号線 カンパメント駅(Campamento)、カラバンチェル駅(Carabanchel)
- 6号線 アベニーダ・デ・アメリカ駅(Avenida de América)、マヌエル・ベセーラ駅(Manuel Becerra)、サインス・デ・バランダ駅(Sáinz de Baranda)、パシフィコ駅(Pacífico)、プラザ・エリプティカ駅(Plaza Elíptica)、オポルト駅(Oporto)、ラグーナ駅(Laguna)
- 7号線 アベニーダ・デ・アメリカ駅(Avenida de América)、プエブロ・ヌエボ駅(Pueblo Nuevo)
路線間で素早く乗換ができるように、対面乗り換えができる設備を備えている駅もある。この配置になっているのはプリンシペ・ピオ駅(Príncipe Pío、)とカサ・デ・カンポ駅(Casa de Campo、)である。どちらの駅でも、10号線が外側の線路を使っており、このためこの駅に到着する旅客は通常の左側のドアではなく、右側のドアを使う。
これに加えて、通常の対向式ホームではなく島式ホームだけで建設された駅もいくつかある。そうした駅は以下の通りである。
- 3号線 アルメンドラーレス駅(Almendrales)、ビジャベルデ・アルト駅(Villaverde Alto)
- 5号線 アルーチェ駅(Aluche)
- 8号線 カンポ・デ・ラス・ナシオネス駅(Campo De Las Naciones)、アエロプエルトT4駅(Aeropuerto T4)
- 9号線 リバス・ウルバニサシオネス駅(Rivas Urbanizaciones)、アルガンダ・デル・レイ駅(Arganda del Rey)
- 10号線 ホアキン・ビルムブラレス駅(Joaquin Vilumbrales)
もう1つの方式としては、1つの島式ホームと1つの対向式ホームを備えているものがある。この方式は7号線、9号線、10号線の、マドリード郊外の町、たとえばアルコベンデス(Alcobendes)やコスラダ(Coslada)などの町へ旅行を続けるために小型の列車に乗り換えなければいけない駅で用いられている。こうした配置は、島式ホームで列車間を簡単に乗り換えられるようにする一方で、将来その先の駅へフル規格での営業が開始された時には対向式ホームを使うようにすることで、駅の配置が地下鉄網全体のものと同じになるようにして、乗客が出口のドアを間違えないようにするために準備されているものである。そうした駅は以下の通りである。
- 7号線 エスタディオ・オリンピコ駅(Estadio Olimpico)
- 9号線 プエルタ・デ・アルガンダ駅(Puerta de Arganda)
- 10号線 トレス・オリーボス駅(Tres Olivos)
この他、ホームには電車が発車してから何分が経過したかをカウントする設備もある。これによって利用者は、あとは今が何分間隔で電車が運行されている時間帯かを時刻表で確認すれば、次の電車が何分後に来るかを知ることができる [3] 。
- ^ “Metro de Madrid Figures”. Metro de Madrid. 2019年7月30日閲覧。
- ^ “Informe corporativo 2018 - Metro de Madrid”. Metro de Madrid. 2019年7月30日閲覧。
- ^ 谷川 一巳 『地下鉄のフシギ!?』 p.195、p.196 山海堂 1999年6月10日発行 ISBN 4-381-10335-1
- ^ プラットホームが90 メートルの路線では6両、60 メートルの路線では4両編成で構成されている。このため実際の列車数は88から132までの間で変化する。
- ^ CAFの2000-A系説明ページ タイトルでは2000Bと言っているが実際には2000Aである
- ^ CAFの2000-B系説明ページ タイトルでは2000と言っているが実際には2000Bである
- ^ Andén 1 - Historia del Metro Archived 2007年11月14日, at the Wayback Machine.
- ^ CAFの5000系説明ページ - 販売情報と写真は5500番台のもの
- ^ CAFの6000系説明ページ
- ^ CAFの8000系説明ページ
- ^ 2008年現在、スペイン政府が高速鉄道であるAVEの全国網整備に注力しているため、同じような状況がセルカニアス通勤列車網で起きている。
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