フリーオ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/01 22:35 UTC 版)
本製品は、復号された放送データ(MPEG-2 TS)を、コンピュータのハードディスク等へ暗号化せずに記録可能な製品として登場した[1]。これは、電波産業会(ARIB)が日本のデジタルテレビ放送向けチューナーを製造する上で遵守すべき仕様として定めた、ARIB運用規定[2]に準拠していない。
概要
沿革
- 2007年10月25日、地上デジタルテレビ(地デジ)仕様のフリーオが発売された。
- 2008年4月4日、衛星デジタルテレビ(衛星放送)仕様のフリーオ(ブラック)が発売された。
- 2009年4月26日、地デジ仕様でExpressCard/34対応のフリーオ Expressが発売された。この製品ではそれ以前の製品にあったB-CASカードの挿入スロットが廃止されている。
- 2011年9月11日、スカパー!HDと地デジに対応したフリーオスカイ(Friio Sky)が発売された。
ARIB 規定への非準拠
日本のデジタル放送は、通常CCI(Copy control information)と呼ばれるコピー制御信号を含んでおり、ARIB規定では、CCIがコピーワンスの場合は、保存媒体への記録時にネバーコピー(コピー禁止)へ書き換えるよう定めている。しかし、これに従わないフリーオでは、CCIの書き換えを行わずにコピーワンスのまま記録する。また、ARIB規定では、保存媒体へ記録する際には、データの再暗号化を施すよう定めているが、フリーオではこれも行わず、平文のMPEG-2 TSで記録する。そのため、録画データはMPEG-2 TSの扱える一般的なソフトウェアで視聴及び編集が可能である。
フリーオのようにARIB運用規定に従わないチューナーを締め出すために、日本のデジタル放送では、放送データそのものにMULTI2暗号(B-CAS暗号)によるスクランブルが施されており、これを解除して視聴及び録画するためには、ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズによって発行されたB-CASカードが必要である。ARIB及びB-CAS社に認証されたチューナーは、B-CASカードが付属した状態で販売されているが、フリーオには付属しておらず、フリーオで使うことを目的としてARIBやB-CAS社に請求しても発行はされない[3]。
そのため、フリーオを使用するためには、認証されたチューナー向けに発行されたB-CASカードを流用することになる。ただし、2008年8月21日に公開されたドライバ(1.90beta)では、インターネット上から暗号解除用のデータを取り入れることによって、B-CASカードなしでスクランブル解除が可能になった[4]。 フリーオはCCIを削除しないため、法的に取り締まることが出来無くなっている。
このような特徴から、日本国内では販売されておらず、購入するためには台湾(公式ウェブサイトより)に所在する業者から、公式サイトを通じて個人輸入する形となる。コピー・ワンス制御を受けないことが、電子掲示板等で話題となった結果、再発売の度にすぐに(早いときには開始から数分で)完売となる状況が長く続き、ネットオークションにて、10万円近いプレミア価格で転売されていた時期もあった。現在では、在庫は潤沢になっており、容易に入手が可能である。
外付けタイプのデジタルチューナーとしては、使用機器を限定されるなどの制限を受けないUSB接続で、手軽な外付けデジタルチューナーとしての利点もある。
日経BPの報道によれば、フリーオは殆どの処理をソフトウェアで行い、ハードウェアには低コストの電子部品を採用した「非常に簡素な構造」となっていることや、各種の特許料を支払っていないと考えられることから、製造コストは3000〜3500円程度であると試算している[5]。
製品の品質
- パソコンと接続するUSBケーブルとの相性がシビアで、USBケーブルの長さに関わらずB-CASカードが認識されないエラー(B-CAS general error)が発生し、使用できないケースが一部ユーザーにより報告されている。そのため、フリーオ公式サイトのFAQ[6]では、エラーが発生する場合、高品質ケーブルや短めのUSBケーブルの使用、(デスクトップPCの場合)本体背面のUSBポートに接続するなどの対策を推奨している。ただし、販売元ではこのような不安定状態についてのサポートは行っていない。また、複数のフリーオ情報サイトでその確実な対策について討議されているが、決定的な解決方法は見つかっていない。ただし、場合によってはセルフパワードのUSBハブからの給電、ICカードリーダを別付けするなどの対策で安定することも多い。
- 衛星放送仕様では、特定の出荷(LOT9)でアンテナ接続直後に、筐体が発煙するという製品不良が発生している。この件については、公式サイトでも製造上の不良として認識しており、返品も受け付けている。
- 正式版ソフトウェアでは、衛星放送仕様でコマンドラインでのチャンネル設定を受け付けないなど、制御ソフトウェアの品質問題も発生している。この不具合はベータ版では解決されているため、次版の正式バージョンでは修正される予定である。
仕様・動作環境
フリーオの仕様及び動作に必要な環境は次の通りとなっている[7]。
製品名 | フリーオ | フリーオ BS/CS | フリーオ Express | Friio Sky |
---|---|---|---|---|
筐体色 | 白 | 黒 | ||
接続端子 | USB2.0とF型コネクタ | ExpressCard/34とMMCX | USB2.0ポート×1とF型コネクタ×2(地デジ用端子及びスカパー!HD用端子) | |
供給電源 | USBバスパワー(DC+5V) | ECバスパワー | USBバスパワー DC5V(地デジ)及びACアダプター12V1A(地デジ+スカパー!HD) | |
最大消費電力 | 2.1W | 4.5W(LNB電源On) 2.5W(LNB電源Off) |
400mA | 2.1W (地デジ), 4.5W (LNB電源ON時6.5W) |
受信チャンネル | UHF13〜62ch ISDB-T |
950〜2150MHz(BS1〜15,ND1〜24) ISDB-S |
VHF2-12, UHF13-62, CATVの一部(C23-26,C60-63) ISDB-T |
UHF13~62ch(VHF非対応)、スカパー!HD(950~2150MHz) |
サイズ | 38(W)×170(H)×180(D)mm | 75mm x 34mm x 5mm | 165(W)×25(H)×120(D)mm | |
その他 | USBケーブルは付属されない | USB-Yケーブルが付属 (LNB電源On時にUSB一系統給電の上限2.5Wを超えるため) |
スマートカードインターフェースを持たない | スマートカードインターフェイスが本体に2つ付いている |
動作環境 |
| |||
メーカー販売価格(送料込み) | 19,800円 | 14,800円 | 19,800円 |
法的位置付けに関する議論
![]() | この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
以下には、B-CAS方式に対する議論も含まれる。
- フリーオの法的位置付けに関しては、それ自体の製造・販売に対する観点と、B-CASカードの利用に対しての観点で考える必要がある。
- 日本の放送業界や家電業界は、電波産業会(ARIB)運用規定に準拠しない(B-CASカード発行審査に合格しない)チューナーを「不正チューナ」と定義[8]しているが、これは業界の視点から見て手続きを踏んでいないという意味であり、法的な裏付けに基づくものではない。
- 日本のデジタル放送が受信可能なチューナーの開発を管理する法律はないため、フリーオのような受信機の開発自体に違法性はない。日本のメーカーはARIBに準拠したチューナーを製作しているが、あくまでも一種の紳士協定的なものに過ぎず法的拘束力はない。また、MULTI2部分を含めデジタル放送の仕様は公開されているため企業秘密の漏洩にも該当しない。MULTI2は、同規格を開発した日立製作所の特許であるため特許権侵害の可能性があったが、該当する特許は2008年(平成20年)4月28日に期限が切れている。
- 使用については著作権法違反(技術的保護手段の回避。30条1項2号)、開発や販売については不正競争防止法違反(技術的制限手段迂回装置提供行為。2条1項10号)や著作権法違反(技術的制限手段迂回装置提供行為。120条の2第1号)が疑われる。
- 製造・販売に関しては「総務省がこの種のチューナーの規制を検討」と報じられた[9]こともあり、今後については不明である。
- B-CASカード使用許諾契約約款に基づけば、B-CASカードのシュリンクラップを開封した者が、フリーオでB-CASカードを利用すると約款が想定している用途と異なるために、契約違反が成立する可能性があり(同約款第8条第1項・第9条)[10]、ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ側もフリーオにB-CASカードを挿入して使用することを禁じている[3]。
- ^ 日経エレクトロニクス 2007年12月17日号 p.7〜p.8
- ^ ARIB-STD-B25 デジタル放送における限定受信方式
- ^ a b “フリーオのような機器にもB-CASカードを発行してもらえますか?”. ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ. 2018年5月17日閲覧。
- ^ デジタル放送コピーフリー化の「フリーオ」、B-CASカード不要に
ついにあの「フリーオ」がB-CASカード不要に、とんでもない方法を採用 - ^ a b "衝撃のコピーフリー受信機「フリーオ」、その仕組みをひもとく:ITpro:". 17 December 2007. 2020年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月2日閲覧。
- ^ フリーオ公式サイト FAQ 「B-CASカードが認識しない」
- ^ デジタルハイビジョンテレビアダプター・フリーオ 仕様と動作環境
- ^ 地上デジタル/BSデジタルの全番組が来春よりコピーワンスに(Impress Watch)
- ^ http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=AS3S21031%2023122007
- ^ “BS・CS・地上 共用カード 約款”. ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ. 2018年5月17日閲覧。
- ^ 地上デジタル/BSデジタルの全番組が来春よりコピーワンスに
- ^ 総務省、「無制限」機の規制を検討・デジタル放送番組の複製
- ^ a b デジタル放送の暗号化に疑問の声が相次ぐ、総務省の検討委員会
- ^ デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(第37回)
- ^ "デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 第30回 議事録" (PDF). 27 December 2007. pp. 14–15. 2021年10月2日閲覧。 河村委員の発言が該当。PDFのリンク元は デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 の過去の会議資料
- ^ 12月26日(金) デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(第47回)
- ^ 法制度によるデジタル放送の著作権保護を検討開始
- ^ フリーオ駆逐の最終兵器、「合法外付けチューナー」の胎動 アーカイブ 2007年12月26日 - ウェイバックマシン
- ^ これでフリーオは不要、市販のUSB地デジチューナーでコピーフリー録画が可能に
- ^ MonsterTV HDUSの新型番モデルが出回る
- フリーオのページへのリンク