ハリアー II (航空機) 装備

ハリアー II (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/15 06:29 UTC 版)

装備

電装

アメリカ海兵隊のAV-8B(ナイトアタック型)

アビオニクスにおける最大の変更点は、AN/AYK-14電子計算機を搭載するとともに、これを含む各種の電子機器をMIL-STD-1553B英語版データバスで連接した点である[2]。2002年よりOSCAR(Open Systems Core Avionics Requirement)計画による商用オフザシェルフ(COTS)化や能力向上が図られている[2]

火器管制システム(FCS)として、初期生産型162機はA-4Mと同様のAN/ASB-19 ARBS(Angle Rate Bombing System: 角速度爆撃システム)を搭載した[2][注 1]。これはその名の通りの爆撃照準器として用いられるほか、空対空戦闘でも、空中目標を光学的に捕捉・追尾可能である[2]。ただし視野が狭いほか、可視光線を用いるために基本的には間のみの運用となるという制約があった[2]

その後、遠赤外線(熱赤外線)を用いた熱線映像装置(AN/AAR-51 FLIR)を搭載するとともに、AN/AVS-9暗視ゴーグル(NVG)の使用にも対応して夜間攻撃能力を獲得したナイトアタック仕様(Night Attack: NA)も開発された[2]。まず162966号機がNA仕様に改装されて1987年6月26日に初飛行したのち[1]、1989年7月8日に初飛行した163853号機以降はこちらの仕様で生産されるようになった[3]。NA仕様機は1989年度から1991年度にかけて66機が発注されたが、1991年度分の途中から生産はAV-8B+仕様に切り替えられたため[3]、生産数は65機となった[1]

AV-8B+はレーダーハリアーとも通称されるとおり火器管制レーダーを搭載したもので、ARBSを撤去して機首を43センチ延長し、AN/APG-65(V)2を搭載している[3]。このAN/APG-65(V)2の多くは、F/A-18C/Dの火器管制レーダーをAN/APG-73に換装する際に撤去されたものをオーバーホールするとともにアンテナを小型化したものであった[2]。AV-8B+は輸出向けを含めて28機が新造されたほか、米海兵隊では、REMAN(Remanufacture)計画に基づき、既存の昼間攻撃機仕様の機体74機をAV-8B+仕様に改修した[1][3]

なおAV-8Bではソノブイの搭載・敷設にも対応しており、SUU-40/AまたはSUU-44/Aディスペンサーに各種ソノブイ4本を収容できた[2]。これは揚陸艦部隊を援護し、その護衛艦の艦載ヘリコプターを補完してバリアーを構築するためのもので、音響信号処理LAMPSヘリコプターや護衛艦が行う方式であったが、遠距離に敷設したソノブイの信号を中継するためのAN/ARQ-41ポッドをAV-8に装着する計画もあった[2]。また陸上においても、橋頭堡に接近する敵地上部隊を探知するため、ADSID-V振動探知機を搭載・運用することができる[2]

兵装

空対地ミサイルとしてはAGM-65E/Fマーベリックが用いられた[2]。また対レーダーミサイルとしては、AV-8AのAGM-45シュライクにかえてAGM-122 サイドアームが用いられた[2]誘導爆弾としてはレーザー誘導ペイブウェイIIIが用いられていたほか、NA仕様機やAV-8B+については、OSCAR改修によってJDAMの運用能力が付与されている[2]。またOSCAR改修ではハープーン空対艦ミサイルの運用能力も付与される予定だったが、予算不足でこれは断念された[4]。なお、当初はAGM-65Fやレーザー誘導爆弾については地上部隊や他機によるレーザー目標指示が必要だったが、NA仕様機やAV-8B+で照準ポッドAN/AAQ-28 ライトニング II)の搭載に対応したことで、自ら誘導も行えるようになった[2]

無誘導爆弾としてMk.818283の搭載に対応するほか、各種のクラスター爆弾も搭載できる[2]。湾岸戦争ではMk.20 ロックアイIIを多用して戦果を上げたものの、この時点では弾道コンピュータが同爆弾の高高度投下に対応しておらず、低空での投弾を余儀なくされ、このために損害を受けたこともあった[2]。またMk.77 mod.2/4 焼夷弾も搭載できる[2]

空対空ミサイルとしては、AV-8AではAIM-9B/D/G/Hサイドワインダーを2発搭載していたのに対し、AV-8Bでは搭載ミサイルをAIM-9L/M/Xに更新したほか、ハードポイントの増設に伴って搭載数も4発に増加した[2]。そしてAV-8B+では、視界外射程ミサイルであるAIM-120 AMRAAMの運用にも対応している[2]

航空機関砲としては、AV-8Aでは原型のハリアーGR.1/1Aと同様に30mm口径ADEN Mk.5を搭載していたのに対し、AV-8Bでは25mm口径GAU-12が搭載された[2]。着脱可能なガンポッド2基としての搭載であり、砲身は左舷側、弾薬は右舷側に収容して、胴体底面に密着したブリッジ構造で左右を繋いで給弾する構造となった[2]


注釈

  1. ^ アメリカのヒューズ社が開発したもので、地上の移動目標の追跡能力があり、テレビ・センサーとレーザー・センサーを収めたものを機首部に装備しており、コックピット内に装備された拡大テレビ映像でパイロットが目標を識別することができ、これらにより、目標の捕捉、誘導兵器の標準と誘導を行うことができる

出典






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