ノルウェー連続テロ事件
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容疑者の起訴と裁判
ノルウェーの検察当局は、7月23日、反テロ法違反および計画殺人の罪でブレイビクを起訴した[48]。7月25日、勾留延長について尋問するためオスロ地方裁判所に出廷[49]。ノルウェーでは国民の知る権利のため原則裁判の審理は全て公開されるが、ブレイビクにより法廷で思想宣伝されるのではないかと市民から懸念が大きいこともあり審理は非公開になった[49]。また、慣例である審理冒頭に行われるメディアによるブレイビク本人へのインタビューも行われなかった[49]。ブレイビクは公開審理を要求していた[50]。
ブレイビクは「イスラムによる乗っ取りから西欧を守るため」を動機として「反多文化主義革命」に火をつけることをあげ、「非道ではあるが必要なことだった」と主張して[51]、無罪を主張した。また自分の組織にはあと2つの細胞があると共犯者の存在を示唆した[52]。審理は約40分続き、警察が求めていた8週間の勾留延長の許可を認めた[53]。8月13日にはウトヤ島にて現場検証が行われ、ブレイビクが犯行を再現している[1]。
11月14日の審理でブレイビクは犯行を認めたものの、有罪にはならないと主張[54]。11月29日にはブレイビクが統合失調症である鑑定結果が裁判所に提出され、裁判は行われない可能性が高まった。鑑定は2名の精神科医が、のべ36時間にわたり容疑者と面会を行い、容疑者は犯行時も現在も妄想の世界で生きていると判断され、責任能力がないと結論づけられた。この鑑定によってブレイビクが収監されず、精神病院で治療されるにとどまる可能性が大きくなったこと[55]を受け被害者の遺族が反発し、2012年1月に裁判所は再鑑定を命じた。鑑定が続く中、ブレイビクは3月7日にテロ及び殺人容疑で起訴され、4月16日に公判が開始されることとなった[56][57]。公判ではブレイビクの精神状態が最大の争点となり、検察側はブレイビクを精神病療養施設へ強制収容するよう主張したが、ブレイビクは精神病ではないと主張し続けた。2012年8月23日、オスロ司法裁判所は禁錮最低10年、最長21年の判決を言い渡した[58]。なお、禁錮刑が終わった後も被告の社会復帰が危険とみなされれば、刑期を無期限に延長することが可能である[59]。
2022年、刑期が10年過ぎたことからノルウェーの法律に基づき仮釈放の申請が可能となった。同年1月18日からブレイビクを法廷に招いて審理が行われた[60]。ノルウェーの裁判所は2月1日に受刑者の仮釈放申請を却下した[61]。
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