デビアス 社名の由来

デビアス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 03:06 UTC 版)

社名の由来

会社の名前は、アフリカーナー人農民ヨハネス・ニコラスとディーデリック・アーノルダスのデ=ビア兄弟(Johannes Nicholas de Beer, Diederik Arnoldus de Beer)の、現在の南アフリカ共和国にあった農場名に由来している。オレンジ川バール川が合流する、ヴールイトツィヒト(Vooruitzicht)と呼ばれる地点の付近でダイヤモンドが発見された。しかし兄弟は続いて起こるダイヤモンドのラッシュに農場を維持することができずに、6300フランで農地を売ることになった。兄弟は鉱山の所有者にはなれなかったが、これらの鉱山のうちの一つは、二人に由来して命名されている[11][12]

マーケティング

直営店の一つ。場所はビバリーヒルズロデオドライブ

デビアスは第二次世界大戦の直前から「ダイヤモンドは永遠と愛の象徴」として、婚約・結婚指輪の理想であると宣伝した[5]。以下によく知られた具体例を示す。

  • ロマンス映画中で結婚祝いとしてダイヤモンドを使う。
  • 有名人を使い、雑誌や新聞中にダイヤモンドのロマンチックな面を想起させるストーリーを掲載する。
  • ファッションデザイナーや流行仕掛け人を雇い、ラジオやテレビで流行を広める。
  • ダイヤモンドを広めるためにイギリス王室に献上する。

このデビアスのPR機関N.W.アイレ親子商会(N.W. Ayer & Son)によって立案されたキャンペーンは、人々にブランド名を植え付けることなく、ただダイヤモンドの理想的な永遠の価値を表現するという点で、後年長く模倣される新しい広告形式(イメージ広告)であった。日本でも黒バックに「ダイヤモンドは永遠の輝き De Beers」とだけ銀文字で大書されたテレビCMが知られる。このキャンペーンは成功し、アメリカのダイヤモンド市場を復活させた。それによって高価な贅沢品という印象が弱まったことによって、以前は存在しなかった販路を開拓することに成功した。

第二次世界大戦前の日本におけるダイヤモンドは、一部の上流階級のみが愛好するものであった。戦後に行ったキャンペーンにおいてダイヤモンドは「欧米風の生活におけるステータスシンボル」として扱われた。その結果、1960年代以降の高度経済成長とともにその販売数が増加し[注釈 10]、今日では世界で第2位のダイヤモンド小売市場となった[注釈 11]

また、アイレによって作成されたスローガン『A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)』は20世紀のマーケティングの歴史の中において最も成功したスローガンのひとつである[15](直訳では「ダイヤモンドは永遠に」。偶然なのか007シリーズにも全く同じタイトルの作品がある。原作小説が1956年、マーケティング戦略が1930年代なので間違いなくデビアスが先)。

なお、デビアスは1972年から2006年までキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス冠スポンサーであった。

長年にわたり宝飾用[16]合成ダイヤモンドに否定的であったが、2018年には「ライトボックス」の廉価ブランドで参入すると発表した[17]。その背景としては、中華人民共和国の合成ダイヤモンド生産量・技術が高まり、高価な天然物と市場を分ける狙いがあると分析されている[18]

脚注


注釈

  1. ^ 現在、デビアスは米国内の第一の小売拠点をニューヨークに、第二の小売拠点をロサンゼルスビバリーヒルズ区に置いている。
  2. ^ 2011年11月、オッペンハイマー家は保有するデビアス株40%をアングロ・アメリカンに51億ドルで売却した[2]
  3. ^ 19世紀後半に南アフリカは“鉱物革命”と呼ばれる迅速な産業化を経験し、金やダイヤ鉱山での労働者の需要が高まった。キンバリーでは、労働力の大部分はコイコイ人コサ人の季節労働者によって担われた。彼らは夏に賃金のためにダイヤ鉱山で働く若者である。しかし彼らは不安定な労働力であること、かつ会社が労働者のダイヤモンドの横領を常に警戒していたこともあり、デビアスは労働者の囲い込みを行った。契約期間中、坑夫は現地に滞在しなければならない契約をデビアスと結ばされた。白人労働者は街に住むことを認められていたが、黒人労働者は私製通貨が支給され、宿泊・食事・会社提供の安いモロコシビール等と交換しそれで生活することが要求された。黒人労働者は週末には街への外出が許可されていたが、それも1887年には月曜の朝に二日酔いで出てくる労働者をなくすため廃止された。
  4. ^ 対等か吸収か不明。デビアスのキンバリーに対する支配率は3/5であったが、それまで相手方の株式を互いに買い漁っていた(守誠)。
  5. ^ Wernher, Beit & Company, Barnato Brothers, Mosenthal Sons & Company, A. Dunkelsbuhler, Joseph Brothers, I. Cohen & Company, Martin Lilienfeld & Company, F. F. Gervers, S. Neumann, and Feldheimer & Company.
  6. ^ 彼の息子ハリー・オッペンハイマーと孫ニッキー・オッペンハイマーは二人とも後に会長となる。アレックス・オッペンハイマーおよびテーラー・プラント、両方の相続人および親類も参照
  7. ^ カルテル関係そのものは調整により2002年現在も断続的に存在している(守)。
  8. ^ 1989年2月、英独占合併委員会(Monopolies and Mergers Commission)は、アングロ・アメリカンの独占に関する調査は必ずしも責務でないとした(守)。
  9. ^ 2017年9月末現在、ファネック家(Van Eck)のミューチュアル・ファンドがペトラの筆頭株主である[9]。この家はシェル創業者を輩出している[10]。ファンドは1955年に設立された。
  10. ^ 1966年、住友商事とエンゲルハルト(Engelhard, 2006年からBASF)・ハノヴィア社の合弁会社として、オリエンタルダイヤモンド工業株式会社が設立された。1971年、デビアスがエンゲルハルト・ハノヴィアの所有株式を取得した。オリエンタルダイヤモンド自体は、2002年に住友商事完全子会社となったが、事業縮小及び親会社の事業見直しによりニッセングループ入りした。
  11. ^ 『婚約指輪は給料の3か月分』というキャッチコピーを劇場CMで流して定着させたのもデビアスである[13]。デビアスは1971年から2001年にかけて劇場CMを上映した[13]。なおデビアスはアメリカにおいても『婚約指輪は給料の2か月分』という同様のプロモーションを行った[14]。2000年代になると中国が日本に市場規模で肉薄するようになる。

出典

  1. ^ デビアスが売却目指すロンドン本社ビル、ダイヤの要塞の歴史物語るブルームバーグ(2017年3月24日)2018年10月7日閲覧。
  2. ^ AFP (2011年11月4日). “Oppenheimers leave the diamond race with $5bn sale”. Mail and Guardian. 2011年11月5日閲覧。
  3. ^ Michael Hitt、R. Duane Ireland、Robert Hoskisson, Strategic Management: Concepts and Cases, Cengage Learning, 2006, p.97.
  4. ^ Olga Levinson, Diamonds in the desert: the story of August Stauch and his times, Tafelberg, 1983, p.6.
  5. ^ a b c d e f g h i j k International Directory of Company Histories, vol.28.
  6. ^ a b 柏木肇訳『技術の歴史』第12巻 筑摩書房 1981年 p.362.
  7. ^ タイムズ 2000年7月15日
  8. ^ International Directory of Company Histories, vol.118, "Anglo American PLC"
  9. ^ Yahoo Finance, Top Mutual Fund Holders, Retrieved 2017/11/29
  10. ^ JOHN VAN ECK, MUTUAL FUND PIONEER, DIES AT 98, Retrieved 2017/11/29
  11. ^ Martin Meredith (2007). Diamonds Gold and War. New York: Simon & Schuster, Limited. ISBN 0-7432-8614-6. https://books.google.co.jp/books?id=4t6XGAAACAAJ&redir_esc=y&hl=ja 
  12. ^ John Hays Hammond (1974). The Autobiography of John Hays Hammond. Ayer Publishing. p. 205. ISBN 0-405-05913-2. https://books.google.co.jp/books?lr=&id=IdrVz9e9CzYC&redir_esc=y&hl=ja 
  13. ^ a b 男性にプレッシャーを与えた、あの名フレーズもシネアドから!?”. 第一エージェンシー (ADfeed) (2019年8月6日). 2019年11月6日閲覧。
  14. ^ a b 「ダイヤモンドは永遠の輝き」をもう一度-生産者が結束”. ブルームバーグ (2015年6月9日). 2019年11月6日閲覧。
  15. ^ 「ダイヤモンドは永遠の輝き」は、アメリカの広告業界誌アドバタイジング・エイジによって20世紀最高のスローガンに選ばれた[14]
  16. ^ 子会社であるエレメント・シックス社では産業用の合成ダイヤモンドを製造している。
  17. ^ CNN.co.jp : デビアス、人工ダイヤのブランドを発表 9月発売へ
  18. ^ ダイヤ最大手デ・ビアス 人工品参入に中国の影/技術進化、宝飾向け供給増/天然品と「市場分離」狙う『日本経済新聞』朝刊2018年8月2日(マーケット商品面)2018年10月7日閲覧。






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