デビアス ソ連の道連れに

デビアス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 03:06 UTC 版)

ソ連の道連れに

1980年代初頭、ザイールの指導者モブツ・セセ・セコが中央販売機構を拒絶したが、デビアスはザイール政府に買収される前に高値をつけて原石を買い占め、政権の競争力を殺いでカルテルに復帰させた(守)。オーストラリアキンバリー地域では1983年にコンジンク(Conzinc Riotinto of Australia)の参加するジョイント・ベンチャー(Ashton Joint Venture)が中央販売機構に参加した[5]。このジョイント・ベンチャーにアーガイル鉱山(Argyle diamond mine)が含まれていた。カルテルでアーガイルは生産量の1/4を独自に販売できるが、品質の良いものは全部を中央販売機構に売却しなければならなかった(守)。自社加工する時ですら一度カルテルを通さなくてはならなかったし、広告まで制限された。1984年アフリカの24カ国が飢饉に陥り、翌年スーダンウガンダナイジェリアでクーデタが起こった。1988年、ソ連で金属・宝石産業の国家独占企業が誕生し(Glavalmazzoloto)、ソ連崩壊まで中央販売機構に原石を供給した[注釈 8]。それが独立国家共同体となって、軍需物資として利用されてきた品質の悪いダイヤをだぶつかせて世界的な供給圧力となった(守)。そこで中央販売機構はソビエト連邦の崩壊後に結成された独立国家共同体(CIS)からの買い付けに差別価格を導入して、供給過剰な低品質の原石は価格を下げ、反対に高品質の価格を上げた(守)。1994年、工業用ダイヤモンドの価格カルテルをゼネラル・エレクトリックと結んだ。ゼネラル・エレクトリックはリークした。その同年から翌1995年にかけてロシアと中央販売機構は、各自で莫大な量の安い原石をインド市場に売りさばいた(守)。1996年6月、アーガイル鉱山が中央販売機構を脱退した(守)。この手続はデビアスが直接行い、親会社のアングロ・アメリカンは立ち会わなかった。1997年2月に中央販売機構と、ソ連のダイヤモンド鉱山を多くを引き継いだロシア連邦で若干の調整が行われた。1998年初め、中央販売機構はトロントに事務所を開設した。カナダ政府はダイヤモンドに対して原石ではなく生産に対して課税するようになり、中央販売機構の買い取りを助けた(守)。2000年7月14日、デビアスは公式にカルテルの終結を宣言し、中央販売機構は単なるDTC として販売を継続するとした[7]。2001年、アングロ・アメリカンがデビアスとの株式の持ち合いを解消、支配率を32%から45%に引き上げた[8]。2003年、プレミア鉱山はカリナン鉱山と名前を変えた。2004年にデビアスはゼネラル・エレクトリックとのカルテルを理由に米司法省から1千万ドルの罰金を課された。2006年2月、デビアスは欧州委員会と合意し法的に拘束され、2008年末から将来にわたりアルゾア(Alrosa)からの低品質原石を仕入れることができなくなった。2008年7月、カリナン鉱山をペトラ(Petra Diamonds)に売却した[注釈 9]


注釈

  1. ^ 現在、デビアスは米国内の第一の小売拠点をニューヨークに、第二の小売拠点をロサンゼルスビバリーヒルズ区に置いている。
  2. ^ 2011年11月、オッペンハイマー家は保有するデビアス株40%をアングロ・アメリカンに51億ドルで売却した[2]
  3. ^ 19世紀後半に南アフリカは“鉱物革命”と呼ばれる迅速な産業化を経験し、金やダイヤ鉱山での労働者の需要が高まった。キンバリーでは、労働力の大部分はコイコイ人コサ人の季節労働者によって担われた。彼らは夏に賃金のためにダイヤ鉱山で働く若者である。しかし彼らは不安定な労働力であること、かつ会社が労働者のダイヤモンドの横領を常に警戒していたこともあり、デビアスは労働者の囲い込みを行った。契約期間中、坑夫は現地に滞在しなければならない契約をデビアスと結ばされた。白人労働者は街に住むことを認められていたが、黒人労働者は私製通貨が支給され、宿泊・食事・会社提供の安いモロコシビール等と交換しそれで生活することが要求された。黒人労働者は週末には街への外出が許可されていたが、それも1887年には月曜の朝に二日酔いで出てくる労働者をなくすため廃止された。
  4. ^ 対等か吸収か不明。デビアスのキンバリーに対する支配率は3/5であったが、それまで相手方の株式を互いに買い漁っていた(守誠)。
  5. ^ Wernher, Beit & Company, Barnato Brothers, Mosenthal Sons & Company, A. Dunkelsbuhler, Joseph Brothers, I. Cohen & Company, Martin Lilienfeld & Company, F. F. Gervers, S. Neumann, and Feldheimer & Company.
  6. ^ 彼の息子ハリー・オッペンハイマーと孫ニッキー・オッペンハイマーは二人とも後に会長となる。アレックス・オッペンハイマーおよびテーラー・プラント、両方の相続人および親類も参照
  7. ^ カルテル関係そのものは調整により2002年現在も断続的に存在している(守)。
  8. ^ 1989年2月、英独占合併委員会(Monopolies and Mergers Commission)は、アングロ・アメリカンの独占に関する調査は必ずしも責務でないとした(守)。
  9. ^ 2017年9月末現在、ファネック家(Van Eck)のミューチュアル・ファンドがペトラの筆頭株主である[9]。この家はシェル創業者を輩出している[10]。ファンドは1955年に設立された。
  10. ^ 1966年、住友商事とエンゲルハルト(Engelhard, 2006年からBASF)・ハノヴィア社の合弁会社として、オリエンタルダイヤモンド工業株式会社が設立された。1971年、デビアスがエンゲルハルト・ハノヴィアの所有株式を取得した。オリエンタルダイヤモンド自体は、2002年に住友商事完全子会社となったが、事業縮小及び親会社の事業見直しによりニッセングループ入りした。
  11. ^ 『婚約指輪は給料の3か月分』というキャッチコピーを劇場CMで流して定着させたのもデビアスである[13]。デビアスは1971年から2001年にかけて劇場CMを上映した[13]。なおデビアスはアメリカにおいても『婚約指輪は給料の2か月分』という同様のプロモーションを行った[14]。2000年代になると中国が日本に市場規模で肉薄するようになる。

出典

  1. ^ デビアスが売却目指すロンドン本社ビル、ダイヤの要塞の歴史物語るブルームバーグ(2017年3月24日)2018年10月7日閲覧。
  2. ^ AFP (2011年11月4日). “Oppenheimers leave the diamond race with $5bn sale”. Mail and Guardian. 2011年11月5日閲覧。
  3. ^ Michael Hitt、R. Duane Ireland、Robert Hoskisson, Strategic Management: Concepts and Cases, Cengage Learning, 2006, p.97.
  4. ^ Olga Levinson, Diamonds in the desert: the story of August Stauch and his times, Tafelberg, 1983, p.6.
  5. ^ a b c d e f g h i j k International Directory of Company Histories, vol.28.
  6. ^ a b 柏木肇訳『技術の歴史』第12巻 筑摩書房 1981年 p.362.
  7. ^ タイムズ 2000年7月15日
  8. ^ International Directory of Company Histories, vol.118, "Anglo American PLC"
  9. ^ Yahoo Finance, Top Mutual Fund Holders, Retrieved 2017/11/29
  10. ^ JOHN VAN ECK, MUTUAL FUND PIONEER, DIES AT 98, Retrieved 2017/11/29
  11. ^ Martin Meredith (2007). Diamonds Gold and War. New York: Simon & Schuster, Limited. ISBN 0-7432-8614-6. https://books.google.co.jp/books?id=4t6XGAAACAAJ&redir_esc=y&hl=ja 
  12. ^ John Hays Hammond (1974). The Autobiography of John Hays Hammond. Ayer Publishing. p. 205. ISBN 0-405-05913-2. https://books.google.co.jp/books?lr=&id=IdrVz9e9CzYC&redir_esc=y&hl=ja 
  13. ^ a b 男性にプレッシャーを与えた、あの名フレーズもシネアドから!?”. 第一エージェンシー (ADfeed) (2019年8月6日). 2019年11月6日閲覧。
  14. ^ a b 「ダイヤモンドは永遠の輝き」をもう一度-生産者が結束”. ブルームバーグ (2015年6月9日). 2019年11月6日閲覧。
  15. ^ 「ダイヤモンドは永遠の輝き」は、アメリカの広告業界誌アドバタイジング・エイジによって20世紀最高のスローガンに選ばれた[14]
  16. ^ 子会社であるエレメント・シックス社では産業用の合成ダイヤモンドを製造している。
  17. ^ CNN.co.jp : デビアス、人工ダイヤのブランドを発表 9月発売へ
  18. ^ ダイヤ最大手デ・ビアス 人工品参入に中国の影/技術進化、宝飾向け供給増/天然品と「市場分離」狙う『日本経済新聞』朝刊2018年8月2日(マーケット商品面)2018年10月7日閲覧。






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「デビアス」の関連用語

デビアスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



デビアスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのデビアス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS