デビアス 中央販売機構

デビアス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 03:06 UTC 版)

中央販売機構

1917年アングロ・アメリカンが南アフリカで創業。これに対抗して、デビアスはプレミア鉱山を傘下に収めてロンドン・ダイヤモンド・シンジケートを引き継いだ。1918年にノーベル工業とカイノック(Kynoch)は互いのアフリカ子会社を合併させた[6]。この新子会社は、1924年にデビアスと合併して爆薬部門となった[6]。1919年、アングロ・アメリカンは旧ドイツ領会社(German Diamond Regie, later Consolidated Diamond Mines of South West Africa Ltd. or CDM)を買収しデビアスを圧迫した[5]戦間期からデビアスはソ連との競争にさらされた。そしてオッペンハイマー家がデビアスの支配的株主となった。まずプレミアの上客アーネスト・オッペンハイマーが1925年にロンドン・ダイヤモンド・シンジケートを再編してしまい、翌1926年デビアスの重役に就任した[5][注釈 6]。そこから翌1927年にかけてリヒテンバーグ(Lichtenburg, North West)にダイヤモンド・ラッシュが起こり、暗黒の木曜日までにアーネストは現地の利権を握った。そして1929年12月にデビアス会長となった。1930年、世界恐慌への対応として新たな合弁会社を設立した(Diamond Corporation Ltd.)。その半分はデビアスとプレミアとCDMおよびその他大手生産者が出資した。残りは1925年に再編したシンジケートの持分となった[5]。ここでアングロ・アメリカンがCDMの支配権をデビアスに明け渡し、アーネストは合弁会社の会長となった。そしてベルギー人やポルトガル人と堅実に協定した(守誠)。1932年、キンバリーとプレミアを含む全所有鉱山が閉鎖した。戦略は生産カルテルから販売カルテルへ性質を変えていった。1934年、合弁会社の子会社(Diamond Trading Company)が設立されたのである。DTC は(参加者から原石を買占めた上で)世界中の加工センターから慎重に相手を選び、原石の品質を分類してカテゴリーごとに量を決めて原石を販売したが、その流通機構全体は中央販売機構(Central Selling Organization)として世に知られた[5]


注釈

  1. ^ 現在、デビアスは米国内の第一の小売拠点をニューヨークに、第二の小売拠点をロサンゼルスビバリーヒルズ区に置いている。
  2. ^ 2011年11月、オッペンハイマー家は保有するデビアス株40%をアングロ・アメリカンに51億ドルで売却した[2]
  3. ^ 19世紀後半に南アフリカは“鉱物革命”と呼ばれる迅速な産業化を経験し、金やダイヤ鉱山での労働者の需要が高まった。キンバリーでは、労働力の大部分はコイコイ人コサ人の季節労働者によって担われた。彼らは夏に賃金のためにダイヤ鉱山で働く若者である。しかし彼らは不安定な労働力であること、かつ会社が労働者のダイヤモンドの横領を常に警戒していたこともあり、デビアスは労働者の囲い込みを行った。契約期間中、坑夫は現地に滞在しなければならない契約をデビアスと結ばされた。白人労働者は街に住むことを認められていたが、黒人労働者は私製通貨が支給され、宿泊・食事・会社提供の安いモロコシビール等と交換しそれで生活することが要求された。黒人労働者は週末には街への外出が許可されていたが、それも1887年には月曜の朝に二日酔いで出てくる労働者をなくすため廃止された。
  4. ^ 対等か吸収か不明。デビアスのキンバリーに対する支配率は3/5であったが、それまで相手方の株式を互いに買い漁っていた(守誠)。
  5. ^ Wernher, Beit & Company, Barnato Brothers, Mosenthal Sons & Company, A. Dunkelsbuhler, Joseph Brothers, I. Cohen & Company, Martin Lilienfeld & Company, F. F. Gervers, S. Neumann, and Feldheimer & Company.
  6. ^ 彼の息子ハリー・オッペンハイマーと孫ニッキー・オッペンハイマーは二人とも後に会長となる。アレックス・オッペンハイマーおよびテーラー・プラント、両方の相続人および親類も参照
  7. ^ カルテル関係そのものは調整により2002年現在も断続的に存在している(守)。
  8. ^ 1989年2月、英独占合併委員会(Monopolies and Mergers Commission)は、アングロ・アメリカンの独占に関する調査は必ずしも責務でないとした(守)。
  9. ^ 2017年9月末現在、ファネック家(Van Eck)のミューチュアル・ファンドがペトラの筆頭株主である[9]。この家はシェル創業者を輩出している[10]。ファンドは1955年に設立された。
  10. ^ 1966年、住友商事とエンゲルハルト(Engelhard, 2006年からBASF)・ハノヴィア社の合弁会社として、オリエンタルダイヤモンド工業株式会社が設立された。1971年、デビアスがエンゲルハルト・ハノヴィアの所有株式を取得した。オリエンタルダイヤモンド自体は、2002年に住友商事完全子会社となったが、事業縮小及び親会社の事業見直しによりニッセングループ入りした。
  11. ^ 『婚約指輪は給料の3か月分』というキャッチコピーを劇場CMで流して定着させたのもデビアスである[13]。デビアスは1971年から2001年にかけて劇場CMを上映した[13]。なおデビアスはアメリカにおいても『婚約指輪は給料の2か月分』という同様のプロモーションを行った[14]。2000年代になると中国が日本に市場規模で肉薄するようになる。

出典

  1. ^ デビアスが売却目指すロンドン本社ビル、ダイヤの要塞の歴史物語るブルームバーグ(2017年3月24日)2018年10月7日閲覧。
  2. ^ AFP (2011年11月4日). “Oppenheimers leave the diamond race with $5bn sale”. Mail and Guardian. 2011年11月5日閲覧。
  3. ^ Michael Hitt、R. Duane Ireland、Robert Hoskisson, Strategic Management: Concepts and Cases, Cengage Learning, 2006, p.97.
  4. ^ Olga Levinson, Diamonds in the desert: the story of August Stauch and his times, Tafelberg, 1983, p.6.
  5. ^ a b c d e f g h i j k International Directory of Company Histories, vol.28.
  6. ^ a b 柏木肇訳『技術の歴史』第12巻 筑摩書房 1981年 p.362.
  7. ^ タイムズ 2000年7月15日
  8. ^ International Directory of Company Histories, vol.118, "Anglo American PLC"
  9. ^ Yahoo Finance, Top Mutual Fund Holders, Retrieved 2017/11/29
  10. ^ JOHN VAN ECK, MUTUAL FUND PIONEER, DIES AT 98, Retrieved 2017/11/29
  11. ^ Martin Meredith (2007). Diamonds Gold and War. New York: Simon & Schuster, Limited. ISBN 0-7432-8614-6. https://books.google.co.jp/books?id=4t6XGAAACAAJ&redir_esc=y&hl=ja 
  12. ^ John Hays Hammond (1974). The Autobiography of John Hays Hammond. Ayer Publishing. p. 205. ISBN 0-405-05913-2. https://books.google.co.jp/books?lr=&id=IdrVz9e9CzYC&redir_esc=y&hl=ja 
  13. ^ a b 男性にプレッシャーを与えた、あの名フレーズもシネアドから!?”. 第一エージェンシー (ADfeed) (2019年8月6日). 2019年11月6日閲覧。
  14. ^ a b 「ダイヤモンドは永遠の輝き」をもう一度-生産者が結束”. ブルームバーグ (2015年6月9日). 2019年11月6日閲覧。
  15. ^ 「ダイヤモンドは永遠の輝き」は、アメリカの広告業界誌アドバタイジング・エイジによって20世紀最高のスローガンに選ばれた[14]
  16. ^ 子会社であるエレメント・シックス社では産業用の合成ダイヤモンドを製造している。
  17. ^ CNN.co.jp : デビアス、人工ダイヤのブランドを発表 9月発売へ
  18. ^ ダイヤ最大手デ・ビアス 人工品参入に中国の影/技術進化、宝飾向け供給増/天然品と「市場分離」狙う『日本経済新聞』朝刊2018年8月2日(マーケット商品面)2018年10月7日閲覧。






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