ケプラーの法則 科学史における意義

ケプラーの法則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 09:10 UTC 版)

科学史における意義

ケプラーの法則は、天動説に対する地動説の優位を決定的なものにした。ニコラウス・コペルニクスによって地動説が唱えられて以降も、地動説に基づく惑星運動モデルは、従来の天動説モデルと比べ、実用上必ずしも優れたものではなかった。

しかしケプラーの法則の登場により、地動説モデルは天動説モデルよりも、はるかに正確に惑星の運動を記述することが可能になった。ケプラーの法則の発見は、地球含む惑星の軌道の形が真円ではないことを裏付けた。

また、惑星の軌道を楕円形であるとした第1法則は、天体は真円に基づく運動をするはずであるという、古代ギリシア以来の常識を打ち破るものでもあった。

江戸時代の日本の天文学者、麻田剛立は第3法則に類似した法則を独自に発見し、『五星距地之奇法』の中に記述を残している[6]

万有引力の法則との関係

アイザック・ニュートンは、自分が発見した運動の法則と、このケプラーの法則などを元に万有引力の法則を導き出した。一方、ケプラーの法則は万有引力の法則を、惑星ポテンシャルエネルギー運動エネルギーの和が負である(すなわち、惑星が無限遠まで飛んでいかない)という条件の下、太陽の質量に比べ惑星の質量が十分小さい(すなわち、太陽は静止していると見なせ、惑星間の相互作用は無視できる)という近似を行って解くことによって導くことができる。ケプラーが太陽系の惑星の運動について述べたことは、ある質点とその周囲を回るそれに比べて十分に質量の小さな質点という、2つの任意の質点間に対しても同様に成り立つことが分かる。

したがって、ケプラーの法則は、太陽と惑星の間だけでなく、惑星と衛星(あるいは人工衛星)などの間でも成立する。

なお、第2、第3法則は二つの質点の質量が同程度でも成立する。このことから、第3法則と万有引力の法則を利用して連星系の主星と伴星、太陽と惑星、二重惑星、惑星と衛星などの質量の和も求めることもできる。軌道長半径 (質量が同程度の場合は連星間距離)を a公転周期P、主星の質量を M、伴星の質量を m万有引力定数G とすれば、これらの関係は次のようになる。

脚注


  1. ^ 原康夫『物理学通論 I』 p107、学術図書出版、2004年
  2. ^ 松田哲『パリティ物理学コース 力学』 p86、丸善、2002年
  3. ^ 『数学と理科の法則・定理集』159頁。アントレックス(発行)図書印刷株式会社(印刷)
  4. ^ Astronomia Nova 『新天文学』岸本良彦訳(工作舎、2013年 ISBN 978-4-87502-453-8
  5. ^ Harmonice Mundi 『宇宙の調和』岸本良彦訳(工作舎、2009年 ISBN 978-4-87502-418-7
  6. ^ 鹿毛敏夫、『月のえくぼ(クレーター)を見た男 麻田剛立』P.194、くもん出版、2008年、ISBN 978-4-7743-1391-7


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