グスタフ・マーラー
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主要作品
交響曲・管弦楽曲
- 交響曲第1番ニ長調(1884-88) - ジャン・パウルの小説に由来する副題『巨人』は、最終的にマーラー自身により削除されている。
- 交響曲第2番ハ短調(1888-94) - 独唱(ソプラノ、アルト)と合唱を伴う。広く知られる副題『復活』は、マーラーによって付けられたものではない。
- 交響曲第3番ニ短調(1893-96) - 独唱(コントラルト)、合唱と少年合唱を伴う。
- 交響曲第4番ト長調(1899-1900) - 独唱(ソプラノ)付。独唱は終曲である第4楽章で歌われる。
- 交響曲第5番嬰ハ短調(1901-02) - マーラー絶頂期の作品。
- 交響曲第6番イ短調(1903-04) - 広く知られる副題『悲劇的』は、マーラーによって付けられたものか不明。中間楽章の配置(演奏順)には、今なお議論がある。
- 交響曲第7番ホ短調(1904-05) - 第2、第4楽章『夜曲(Nachtmusik)』に由来する『夜の歌(Lied der Nacht)』という通称は、後世のものであり、マーラーおよび作品には無関係である[48]。
- 交響曲第8番変ホ長調(1906) - 独唱(各8声部)、2群の合唱、少年合唱付と大オーケストラのための。『千人の交響曲』という名でも知られるが、これは初演時の興行主であるエミール・グートマンが話題づくりのために付けたものであり、マーラー自身はこの呼び名を認めていない[49]。
- 交響曲イ短調『大地の歌』(1908) - 独唱(テノール、コントラルトまたはバリトン)付、最後の歌曲としての分類もある。
- 交響曲第9番ニ長調(1909)
- 交響曲第10番嬰ヘ長調(1910) - 未完成。デリック・クックらによる補作(完成版)あり。
声楽曲
- カンタータ『嘆きの歌』(Das klagende Lied, 1878-80)
- 歌曲集『若き日の歌』(Lieder und Gesänge, 1880-91) - 全3集14曲
- 歌曲集『さすらう若者の歌』(Lieder eines fahrenden Gesellen, 1883-85) - 全4曲
- 歌曲集『少年の魔法の角笛』(Des Knaben Wunderhorn, 1892-98) - 全12曲
- リュッケルトの詩による5つの歌(Rückert-Lieder, 1901-03) - 全5曲
- 歌曲集『亡き子をしのぶ歌』(Kindertotenlieder, 1901-04) - 全5曲
その他の作品
- ピアノ四重奏曲断章 イ短調(1876) - ウィーン音楽院に在籍していた頃の室内楽曲。1973年に再発見されている。
- 交響的前奏曲ハ短調(1876頃) - 偽作とみなされることが多い。ブルックナーの管弦楽曲・吹奏楽曲も参照のこと。
- 交響詩『葬礼』(Todtenfeier, 1891) - 本来、交響曲第2番の第1楽章の初稿である。
- 花の章(Blumine, 1884-88) - 本来、交響曲第1番の第2楽章として作曲されたが、1896年の改訂で削除された。
オペラ
以下の3曲のオペラはいずれも完成されず、そのまま破棄(もしくは紛失)している。
- 『シュヴァーベン侯エルンスト』(Herzog Ernst von Schwaben, 1875-78)
- 『アルゴー船の人々』(Die Argonauten, 1878-80)
- 『リューベツァール』(Rübezahl, 1879-83)
編曲作品
- ウェーバー:オペラ『3人のピント』の補筆
- 原曲は1820年から21年にかけて作曲されたが未完成に終わったため、作曲者の孫にあたるカール・フォン・ウェーバーがマーラー(当時26歳)に補筆を依頼し、1887年に完成された。補筆版の初演は1888年にライプツィヒの市立歌劇場でマーラーの指揮により行われている。
- ブルックナー:交響曲第3番 ニ短調『ワーグナー』
- 1878年に原曲を4手ピアノ用に編曲したもの。
- 交響曲第9番の第1楽章にトロンボーンやチューバを取り入れている。
- ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番『セリオーソ』
- 原曲を弦楽合奏版にしたもの。
- シューベルト:交響曲第8番ハ長調『ザ・グレート』 D944
- シューベルト:弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』
- 原曲を弦楽合奏版にしたもの。
- シューマン:交響曲全曲
- 近年ではリッカルド・シャイーがこの編曲版を全曲録音している。
- 原曲の第2番と第3番のなかから5曲を選び、新しい組曲の形式へと編曲したもの。
注釈
- ^ イージドール、グスタフ、エルンスト、レオポルディーネ、カール、ルドルフ、アロイス、ユスティーネ、アルノルト、フリードリヒ、アルフレート、オットー、エマ、コンラート。
- ^ 当時のヨーロッパは乳幼児の死亡率が極めて高かった。
- ^ 曲はフランツ・リスト編曲『結婚行進曲と妖精の踊り』
- ^ “erl”は、南ドイツおよびオーストリア方言における指小辞の変種である。「モーツァルト」を愛称形にしている。
- ^ マーラーが生まれ育った時期は、長らくドイツ民族地域の盟主として君臨してきたオーストリアが普墺戦争で敗戦し、プロイセンによって統一ドイツから除外されるという激動の時代だった。さらにアウスグライヒでハンガリー人に内政面での大幅な譲歩を強いられ、チェコなど多数の非ドイツ人地域を持つ別国家として斜陽の道を歩み始めた頃でもあった。
- ^ マーラーの交響曲作品がウィーンで評価されるようになったのは晩年からである。それ以前は、マーラーの自作演奏についてウィーンのジャーナリズムなどから「自作の宣伝に憂き身をやつしてばかりいる」と中傷されることすらあった。
- ^ この「ボヘミアン」という表現には、「ボヘミア地方の出身者」という文字通りの意味のほかに、ヨーロッパでは「流浪者」「自由奔放の民」(ボヘミアニズム)を表す比喩でもあり、いささか侮蔑的ながらも特別な含意がある。実際にボヘミア地方の出身者であると同時に「定住の地・定職がないが自由な芸術家」という意味を掛けており、一種の自嘲あるいはユーモアを込めた回答であると解することもできる。
- ^ クレンペラーはこの件について、交響曲第8番になぞらえマーラーを「創造主なる精霊」(creator spiritus)であると賛美している。
- ^ 「ユダヤ人ではない」という意味。
- ^ これはマーラーとトスカニーニの指揮者としての姿勢の違いを考慮する必要がある。マーラーが活躍した時代、指揮者は「作曲者がいま生きていたらこうするはず」と、楽器や演奏技術の進歩を念頭に置いた「主観的修正」をし演奏することが作法であり教養だった。当然、その姿勢は(マーラーとは6年半しか年齢差がないとはいえ)「新しい指揮者」であるトスカニーニとは全く違う。
- ^ 小柄なマーラーに対し、モルは大男だった。
出典
- ^ 船山 1987, p. 10.
- ^ アルマ 1987, p. 18.
- ^ a b c 船山 1987, p. 12.
- ^ 船山隆 『グスタフ・マーラー カラー版作曲家の生涯』 11頁より。
- ^ アルマ 1987, p. 16.
- ^ 船山 1987, p. 17.
- ^ a b 村井 2004, p. 5.
- ^ アルマ 1987, p. 17-18.
- ^ 村井 2004, p. 36.
- ^ 文藝別冊 2011, p. 190.
- ^ 村井 2004, p. 41.
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- ^ 村井 2004, p. 6.
- ^ 船山隆 『グスタフ・マーラー カラー版作曲家の生涯』 125頁より。
- ^ 村井 2004, p. 166.
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- ^ a b 船山 1987, p. 19.
- ^ Mathis-Rosenzweig, Alfred. Gustav Mahler: New Insights into His Life, Times and Work 14頁より。
- ^ アルマ 1987, p. 101.
- ^ a b 船山 1987, p. 154.
- ^ a b シュトンポア 1998, p. 112.
- ^ ルーペルト・シェトレ 『指揮台の神々 世紀の大指揮者列伝』 喜多尾道冬訳 191頁より。
- ^ シュトンポア 1998, p. 123.
- ^ a b 船山 1987, p. 184.
- ^ アルマ 1987, p. 32.
- ^ シュトンポア 1998, p. 119.
- ^ 『マーラー 音楽の手帖』「立ったまま夢見る男」(辻井喬)14頁より。
- ^ アルマ 1987, p. 259.
- ^ a b 船山 1987, p. 54.
- ^ Taubman, Howard (1977). The Maestro: The Life of Arturo Toscanini. 119頁より。
- ^ アルマ 1987, p. 100.
- ^ 船山 1987, p. 99.
- ^ 船山 1987, p. 26-27.
- ^ 船山隆 『グスタフ・マーラー カラー版作曲家の生涯』 27頁より。
- ^ アルマ・マーラー 『グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想』 石井宏訳 194頁より
- ^ a b 土田英三郎 『ブルックナー カラー版作曲家の生涯』 155頁より。
- ^ アルマ 1987, p. 200.
- ^ a b 村井 2004, p. 130.
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- ^ アルマ 1987, p. 428.
- ^ 船山 1987, p. 148.
- ^ 村井 2004, p. 231.
- ^ 長木誠司 『クラシック音楽の20世紀 第2巻』 234頁より。
- ^ 長木誠司 『クラシック音楽の20世紀 第2巻』 113頁より。
- ^ ゲオルク・ショルティ 『ショルティ自伝』 255、256頁より。
- ^ 前島良雄 『マーラーを識る』 144頁から。
- ^ 前島良雄 『マーラーを識る』 174頁から。
- ^ “(4406) Mahler = 1933 HF = 1978 GA5 = 1978 JJ3 = 1979 OD4 = 1983 CS5 = 1987 YD1 = 1989 FN”. MPC. 2021年10月8日閲覧。
固有名詞の分類
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